第5回:アパートから庭のある平屋への引越し|葉山暮らし
のんびりとひとり暮らしをしていると色々な出来事もあるもので、2005年7月に葉山町に移住してから3年半後、僕も結婚をして家に妻を迎え入れるという出来事がありました。
その頃はもう我が家(アパート)の家具もだいたい揃っていたため、引越してくる妻に家財道具の荷物は少なかったのですが、バッグの製作を仕事にしている妻にはミシン4台という強烈な仕事道具があり、その設置のために寝室が半分埋まるという状況が生まれました…。
しかもアパートは2階だったので、音や振動も気になるところ。
また、その頃の僕は、「第3回:週末の過ごし方(1)植物のある生活との出会い」で書いた頃に増して、さらに植物に熱が入っていた頃だったので、気兼ねなくホースで庭に水を撒きたいという思いが強くなっていて、そんな家族の色々な要素が重なり合って、「庭のある戸建て」に引っ越してみるのはどうだろうか?という家族会議が行われました。
できれば平屋、庭付き。
それ以後、葉山や逗子の不動産屋さんに出向き、条件をお伝えして、物件探しが始まります。
賃貸物件検索サイトで条件を絞った検索結果をブックマークし毎日の更新をチェックしたり、地元不動産屋のオフィシャルサイトの物件情報やブログを毎日くまなく見ます。
町を散歩している最中、雰囲気のよい物件があったら、住所を控えて「あの家は空いてるんですか?」と不動産屋さんに調べてもらうことも度々。(あの家は今空いているのだけど、前の住人さんとのトラブルで大家さんが賃貸をしたくないんだよ、という話を聞いて、惜しいなぁと思ったり)
物件のサイズを体感したいので、ある程度条件がマッチしたら物件の中に入れてもらうことを繰り返しました。(いいなと思う物件があったら、何もないリビングで、置く予定のソファの高さに腰をかがめて、その空間で生活を送るイメトレを繰り返してました)
そんなことを続けていると、地元の不動産屋さんも僕の好みをわかってくれて、ちらほら掲載前の物件を教えてくれることが多くなりました。
そんな中で、ある日夫婦ふたり暮らしの我が家にちょうどよいサイズの平屋の一戸建てが不動産屋さんからFAXで送られてきます。
および腰の妻。乗り気の夫。
平屋情報のFAXをもらった次の日に、実際に物件を見に行きました。
入り口のエントランスは細く、庭は腰まで草がボーボーで、室内も古い畳敷き、すこしどんよりした雰囲気に妻はかなりのおよび腰でしたが、僕にとっては逆に、簡単には人が入ってこないエントランスで安全だし、庭はゼロから作りがいがあるし、室内はいじりようできっと素敵になるという思いが強く、ここでいいんじゃないか、という考えになっていました。
縁側の先に6畳のプレハブの”はなれ”があったり、キッチンの横にはサンルームらしきものがあったりと、今までの住人や大家さんの創意工夫が込められた作りにもわくわくしていました。
▼プレハブの”はなれ”へと続く現在の縁側はなれが今の僕の仕事場です。縁側の柱などは白いペンキで塗りなおしています。
▼温室として大活躍の現在のサンルームここはもともと南縁側だったらしいのですが、猫のたまり場になったのでポリカ波板で壁を作ったそうです。おかげでサンルームが手に入りラッキー。
大家さんとの約束。
最初に見た物件のイメージに戸惑っていた妻をなんとか説得し、2010年10月に引越しすることが決まります。
引越しにともない、大家さんに対して、庭は土をすべて入れ替えるところから自由に作らせてもらいたい旨や、家の内装について変更したい箇所を事細かに説明し、双方気持よく進められるように契約書を結びました。(今では大家さんとはとても仲が良く、なんでも自由にやらせて頂いているのですが、その当時は僕も色々と不安だったのでしょうね)
引越し前の1ヶ月で、家財が入る前にやっておくと楽な床や建具(※)などのベースとなる部分を入替え、ちょっと別荘チックないい雰囲気に仕上がった新居を見て、どんより雰囲気に渋っていた妻も「うん、いい家だ」と言ってくれてほっとしたのを覚えています。(もともといい家なのに印象とは不思議なもので…笑)
(※)葉山には「桜花園」さんという古建具が1000本以上も置いてあるお店があって、古いお家に住む際には、引き戸の寸法を測ってお店に建具を探しに行けば近いサイズの建具を探すことができ、高さが足りなければゲタをはかせてくれるなど対応も親切です。下の写真のガラス戸も、もともとは白いふすまだったのを入替えました。(ガラス戸の下3cmくらいに木の切り替えがありますが、その付け足し部分を「ゲタ」といいます)
▼玄関から見た今の我が家
住めば都というのは本当で、今は我が家が一番落ち着きます。
庭づくり、浴槽の取り替え
▼当時の裏庭構想。ほぼほぼこの通りになりました。
引越し後、前の住人のおばあちゃんがなかなか手を付けられず腰丈まで生えていた草を刈り取り、裏山が竹やぶのために固く締まった粘土質の土を土壌改良するのに時間を費やしました。
たくさんの枕木や、デッキ・砂利を適所に敷いて、やっと植物をレイアウトできるベースができあがりました。あれから数年、ほとんどを多年草で構成した庭は、ほったらかしでも毎年雰囲気よく茂ってくれる気持ちのいい庭になりました。
おもしろいことに、大家さんの息子さんが生まれた年に植え、何十年も実をつけなかったという表庭の梅の木も、引越し後に庭の土壌を整えた3年後には大量の実がたくさん収穫できるようになりました。手を入れたご褒美かな?なんて大家さんと縁側で話ができるのもいいところです。
▼梅を収穫する妻
また、引っ越してからずっと気になっていた、僕の身体には小さすぎる浴槽も、大家さんと相談することで取り替えることができました。
賃貸で浴槽を取替えさせてくれるという頭がなかったので、これは嬉しかったです。昔バランス釜だった箇所が檜で覆われていたのですが、これを取り払い、その分僕の身体がすっぽり入るサイズの浴槽を選ばせて頂き、バスタイムが楽しくなりました。
▼(左)旧浴槽/(右)新浴槽
いまでも、お金が余っていれば借りたいなぁと思うくらい素敵だった前のアパートのことを思い出します。
また、現在住んでいるお家とはまた別の魅力がたくさんつまったこの町の様々なお家に、たくさんの知り合いが暮らしていて、訪問するたびにアイデアと発見があります。
愛着を持って暮らすことで、住まいはとても居心地のよい空間に変わっていくので、何度かの引越と改造を経験して、どんな家でも努力と大家さんとのコミュニケーション次第で素敵にできるものだなぁと思っている昨今です。