写真家がとらえた静寂の海水浴場「Leisure」
ドイツの海は夏でも冷たい。それでも休暇には海へ行く。短い夏を謳歌するのだ。
ドイツ北部、ザンクトペーターオルディングのビーチで写真を撮り続けている写真家がいる。「Leisure」と名前のつけられた一連の写真は、ハンガリーの写真家 Ákos Major の作品だ。
海水浴場の光景なのに、そこにはなぜか静けさが漂う。2012年から2014年にかけて写された物なのに、過去の写真を見ているような。
海に立ち並ぶ謎のボックスたちは、Strandkorb(シュトゥラントコルプ)というバスケットタイプのビーチチェアだ。1882年に発明されてから、風が強いドイツの海水浴場では定番となっていて、管理所で使用料を払うと格子を外してもらえる。
下部についている引き出しをひっぱり出すと、脚を伸ばしてくつろげるようにクッションが出てくる仕組み。リゾートらしく、鮮やかな黄色や爽やかなストライプに塗られている。番号が記され、あちこちを向いて砂浜に並んでいる姿は、ロボットの群れのようでユーモラスだ。
電話ボックスのような青い箱はお店だろうか? それにしてもこんな場所に無人で、ぽつんと?
ザンクトペーターオルディングのビーチはとても広い。距離は12km、幅だけでも1kmある。広い砂浜では、シュトゥラントコルプを借りるのもいいけれど、自慢のキャンピングカーでくつろぐのもまた良い。おや、あのソーラーパネルをたくさん乗せた海の家は、もしかして船なのだろうか。
ちいさな浜に海の家が肩を寄せ合うにぎやかな日本の海水浴場とは違う、ドイツの海。休暇に訪れた人々の小さな「居場所」が、写真家によって静寂の中に収められた。