繋がる家
未来住まい方って何だろう?
今回の連載では、“今”を活きる『人』に焦点を当て、“未来”の豊かな暮らしをほんの少し、考えています。
あなたのもう一つの我が家づくり
「みんなが、自分の家のように安心できる場所、創りたいって思う」
真っすぐに目を見て話してくれたのは、『僕らの家』代表、中島昭聡さんだ。
いつもみんなの輪の中にいて、時に笑い、時に穏やかに、うんうんと相づち。ついつい自分の事、辛い事や楽しい事、悩みも夢も、普段の生活も、しまっていた想いを彼に話してしまう。中島さんは、人と人をつなぐ場づくりの専門家だ。そんな中島さんの人柄に魅かれ、肩書きも年齢も越え、多くの人が集まり、繋がっていく。
“自然体験があなの明日の力になる” “あなたのもう一つの我が家づくり” をコンセプトに、大人向けのキャンプやトレッキングを企画・運営する『僕らの家』は、2011年に旗揚げしたばかりの今までにないスタイルの会社だ。
参加者達は、様々な趣向の自然体験を通し、日常から解放され、ひと時、童心に帰り、悩みや夢を語りあう。皆、いつの間にか兄弟姉妹のようになっている。その為、参加者は複数のプログラムに渡りリピーターとなり『僕らの家』を中心に大きな人の繋がりが形成されている。
『僕らの家』のプログラムは、人と人を繋く事に特化している点で、他と大きく異なる。プログラムの核となっているのが“アイスブレイク”(※)といわれる手法だ。簡単なゲームやグループワークを通し初対面の人達もみるみる打ち解けていく。彼らは既存の手法に独自の要素を加え、今や自然体験に留まらず、チームビルディング(※)形成の企業研修プログラムも手掛けている。
「いつかそれが大きな渦になって、日本全体が元気になればいいなって思う」
中島さんは、『僕らの家』を通して“これから”を創ろうと考えている。
現在、千葉県勝浦市に、再生させた古民家と里山を借り、そこを活動拠点の一つとしている。今後、参加者達の繋がりを、そうした農村との繋がりに拡げ、地域活性にも取り組みたいと考えているようだ。また、カフェ・ゲストハウス施設を東京都内に造り、身近に自然や里山・農村と繋がれるイベントなどを展開する構想も持っている様子。
『僕らの家』に参加してくれた人が元気になり…その周りの大切な人も元気になっていく。
いつかそれが大きな渦となり…日本全体を元気にさせていく。
きっと何かが起ころうとしている。『僕らの家』から。
自然体験と「YADOKARI的住まい方」
人と人との繋がりが希薄になりがちな現代。ネットワーク上の繋がりばかりが重視され、あげく目の前にいる人とさえ、メールで会話をする。その先に“絆”はあるのだろうか?
中島さんのお話から、YADOKARI的な発想を紡いでみる。
コンテナを極限まで開放的に改造、限りなく屋外に近い屋内。小さな空間に遊び心を目一杯詰め込んだ、自然の中の秘密基地。
人が、自然の中で、自然に繋がる家。
『繋がる家』
もっと自然に
もっと身近に
そんな未来の住まい方があっても、良いのかもしれない。
※[アイスブレイク]緊張をほぐす2人以上で行うグループワークの総称のこと。参加者の不安や緊張を氷にたとえ、その「硬い氷をこわす、溶かす」という意味を持っている。
※[チームビルディング]ひとつの目標に向かい、複数のメンバーが一人ひとりの能力を最大限に発揮できるようチーム形成し、まとめる手法。
【協力】
イラスト:宮本厚樹
文:きむら かずたか