展示フロアを浸食するアート、木の根に諸行無常を見る「Transarquitetonica」
ブラジル出身のアーティストHenrique oliveira は、今年(2014年)サンパウロで、それはそれは巨大な作品を作り上げた。作品名は「Transarquitetonica」、普段は地中にあって見えない、木の根っこを丸ごと地上に持ってきたような外見だ。長さはなんと73mもあり、おとぎ話に登場する蛇のような巨大な怪物にさえ見えてくる。
フロアに展示してあるというよりも、建物が「侵食されている」といった表現の方が妥当だろう。床から天井にのびる真っ白な柱にこの怪物のような作品が絡み付いている。絵画や彫刻を吟味する気分で見に入ったら間違いなく面食らうほどの存在感を持っている。
この作品の注目すべき点は、アートの世界に誰もが浸れることだ。気持ち的に浸れるのではなく、読んで字のごとく本当に浸れるのだ。実際に中に入って鑑賞をすることが可能だ。中に入ると景色は一変し、洞窟を探検しているような気分になる。音・香り・壁面の肌触り、感覚器官をフルに使った体験型のアートだ。
実はこの作品、木材を再利用してつくられている。骨組みに貼付けてあるのはただの木の板だ。木の板の一枚一枚が、肌のようになっている。
造形的でかつ、会場全体を巻き込んだ絵画のようでもあり、さらに文字通り「浸る」こともできる。そして再利用品でつくられている。ただの木の板が怪物のような造形に姿を変えているのだ。
見方によっていろいろな解釈ができるこの作品からは、「常に同じ状態であるというのは不自然なのかもしれない」というメッセージを感じる。