【特集コラム】第3回:アップサイクル最前線!廃棄物処理会社ナカダイの取り組み

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廃棄物を再利用してより良いものに生まれ変わらせ、新しい価値と循環を生む考え方として注目されている「アップサイクル」。

連載第2回でご紹介したように、日本にもさまざまなアップサイクルプロダクトが生まれています。それらのクオリティの高さを支えているのは、つくる側のデザインと技術はもちろんのこと、その元となる廃材の魅力も大きいのです。

第3回となる今回は、リサイクル率99%を誇り、「捨てる」と「つくる」を繋ぐさまざまな事業を展開している産業廃棄物の中間処理業者、株式会社ナカダイの取り組みに焦点をあて、モノとヒトをアップサイクルの循環に巻き込む最前線の動きについて探りたいと思います。

廃材への認識を変えるナカダイの実践

モノ:ファクトリー

群馬県に拠点を置くナカダイは2011年に「モノ:ファクトリー」を設立し、一般の人向けに工場見学や廃棄されたパソコンなどを解体するワークショップを行っています。小さい子どもでも立ち入りが制限されることはなく、工場のダイナミックな空間を体験しながら、モノが捨てられた後にどうなるかを学ぶことができます。

ナカダイ群馬工場 ©NAKADAI Co. Ltd.
ナカダイ前橋工場 ©NAKADAI Co. Ltd.

ナカダイ群馬工場 ©NAKADAI Co. Ltd.
ナカダイ前橋工場 ©NAKADAI Co. Ltd.

ナカダイ群馬工場 ©NAKADAI Co. Ltd.
ナカダイ前橋工場 ©NAKADAI Co. Ltd.

また、100種類を越えるさまざまな廃材(マテリアル)を「マテリアルライブラリー」にて公開し、小売りしています。魅力的な素材ばかりで、どのようなストーリーを持ったモノかを知ったり再利用の方法を考えたりするだけで、宝探しをするようなワクワクした気持ちになります。連載第2回で紹介した吉祥寺の飲食店「てっちゃん」「ニワトリ」のインテリアに使われた繊維状のLANケーブルやアクリルだんごなども、ここで手に入れることができます。

普段、「廃材を利用してつくりました」というモノを目にしても、再利用されなかった場合にその廃材がどうなるのかまで想像することは少ないと思います。この工場に来ると、そうした廃材の山を目にすることになり、モノの見方が変わるのではないでしょうか。

マテリアルライブラリー ©NAKADAI Co. Ltd.
マテリアルライブラリー ©NAKADAI Co. Ltd.

マテリアルライブラリー ©NAKADAI Co. Ltd.
マテリアルライブラリー ©NAKADAI Co. Ltd.

パソコン解体ワークショップ ©NAKADAI Co. Ltd.
パソコン解体ワークショップ ©NAKADAI Co. Ltd.

品川ショールーム

群馬の工場を拠点に活動しているナカダイですが、活動が注目されるにつれて需要も高まり、2013年に東京都内の拠点第1号として、「品川ショールーム」がオープンしました。内装設計は建築設計事務所irotoridori(イロトリドリ)。
たくさんの木製の桝が並べられ、マテリアルがぎっしり詰められています。予約制ですが、ここでもマテリアルを少量から買うことができます。

品川ショールーム
品川ショールーム

品川ショールーム
品川ショールーム

捨て方をデザインする

さらにナカダイでは、「リマーケティングビジネス」として、廃棄物の新たな使い方を創造し、捨て方をデザインするコンサルタント的な業務も進めています。捨てられたモノだけを見て再利用の方法を考えるだけでなく、やむを得ず捨てるモノが出てきた時に、その捨て方を変えること、つまり次に繋がるようなアイデアと共に新しい価値を生み出そうという取り組みです。

産廃サミット

そのひとつに、オフィス家具やステーショナリーを扱うPLUSと共同で開催している「産廃サミット」という展覧会イベントがあります。ナカダイのマテリアルを素材に、プロ・アマ問わずさまざまなジャンルのクリエイターが制作したプロダクトやアート作品が展示されます。

第4回産廃サミット会場風景 ©NAKADAI Co. Ltd. 
第4回産廃サミット会場風景 ©NAKADAI Co. Ltd.

第4回産廃サミット会場風景 ©NAKADAI Co. Ltd.
第4回産廃サミット会場風景 ©NAKADAI Co. Ltd.

第4回産廃サミット会場風景 ©NAKADAI Co. Ltd.
第4回産廃サミット会場風景 ©NAKADAI Co. Ltd.

連載第2回で紹介した「NEWSED UPCYCLE DESIGN AWARD」と異なる点は、商品化を前提とせず、使用可能素材を限定していないこと。着想から成果物に至るまで、自由な発想からこれまでになかったアップサイクルのアイデアが生まれることが期待されています。

2014年9月に赤坂のPLUSショールームで開催された第4回産廃サミットでは、電子機器メーカーから廃棄されたリン青銅という素材を使用してライトにした作品が最優秀に輝きました。素材の魅力を最大限に活かしたシンプルで美しいデザインです。

最優秀賞 柏田大貴©Yatsuda,Yoshiyuki
第4回産廃サミット最優秀賞受賞作品 ©Yatsuda,Yoshiyuki

また優秀賞には、織物の産地として有名な群馬県桐生市のシルクに、ナカダイのマテリアルの形状を熱転写した作品が選ばれました。廃材そのものではなく形状を活かすことで、廃材の記憶を繋いでいくという発想が面白いですね。

優秀賞のもうひとつは、作者が集めた廃材でつくり込まれた屋台のような作品です。「延命」という考え方で廃材の寿命を延ばしていく思いが込められています。
2月20日より、第5回産廃サミットの募集が始まっています。ご興味を持たれた方は参加してみてはいかがでしょうか?

優秀賞©Yatsuda,Yoshiyuki
第4回産廃サミット優秀賞受賞作品 ©Yatsuda,Yoshiyuki

持続可能なアップサイクルのために

「モノ:ファクトリー」代表の中台澄之さんは、「廃棄することが悪いことで、それらを再利用するのが素晴らしいこと、という短絡的な見方ではなく、つくる人も、買う人も、使う人も、捨てる人も、皆が一緒になってモノの循環を見直すことが求められていると思います。
そもそもリサイクルだ、アップサイクルだというではなく、廃棄物を立派な素材として使う世の中になることで、一人一人が資源の循環を生み出せる社会になると思います」とおっしゃっています。

また、「誰もが気軽に立ち寄ってご当地の物産を購入できる『道の駅』のように、その土地ごとに排出される廃材について学び、実際に手にできるマテリアルライブラリーが全国各地にできると、アップサイクルへの意識が定着し、この運動が持続する可能性が広がると考えています。」と中台さん。現在ナカダイのような取り組みをしている廃棄物処理業者はまだ出てきていませんが、地域ごとの資源循環を生み出していくためには全国の廃棄物処理業者と協同する必要があります。

「全国的にこういう活動が広がれば、モノの捨て方が変わるし、モノの流れも変わります。人が要らなくなったモノを、最も環境負荷が少なく最も価値の高い状態でもう一度循環させる。それが産業廃棄物処理業の役割だと考えています。ナカダイがこれまで蓄積してきたノウハウを同業者に積極的に共有して、社会全体で動き出していきたいですね」。
そう話す中台さんの表情には、使命感とも言うべき決意が感じられました。今後ますます発展していくと予感させるナカダイの活動から目が離せません。

モノ:ファクトリー代表 中台澄之さん
モノ:ファクトリー代表 中台澄之さん

最終回となる次回は、この特集コラムを読んで「何かアクションを起こしたい!」「アップサイクルに関わりたい!」と思った方のために、一般の人が参加できるアップサイクルプログラムやワークショップの紹介、また家庭でできるアップサイクルについて探っていきたいと思います。
Via: 株式会社 ナカダイ

【特集コラム】第1回:アップサイクルとは? モノ・コトの循環を生み出すムーブメントの広がり
【特集コラム】第2回:プロダクトからお店まで、アップサイクルから生まれるモノと空間