仕事を辞めて友と行く、ボロバン改造車の旅「Vandog Traveller」
「バンに暮らして旅をしたい」。学生の頃からの夢に突き動かされ、イギリスの青年がそれまでの安定した職と引き換えに手に入れた物は、ボロボロな10年落ちのLDV社のパネルバン。詩人・小説家であるジャック・ケルアックの著書「路上」を地で行くような男同士の車上の旅も、イマドキはオフグリッドでミニマル志向と、時代の流れを感じさせます。
北海のガス施設のシステムエンジニアだったMike Hudsonさんは、気の向くまま車で旅を続けてみたいという夢を持っていました。2013年の秋、その想いを叶えるべく思い切って仕事を辞め、バッグ一つ分の荷物を残して家財を処分すると、実家に戻ってそれまでに貯めたお金で手に入れた車の改造に昼も夜もなく没頭します。
Mikeさんが旅のお供に購入したのはオークションで2500ポンド、およそ43万円(※2015年2月初旬現在)だったというイギリスLDV社の中古バン。ところがこの車、傷みが想像以上にひどく、Mikeさんも届いて数日は手を付ける気にならなかった程でした。
(Before)
仕事柄、電気の知識は豊富でしたが、DIYは子ども時代に妹と秘密基地を作った程度の経験(!)しかなかったMikeさん。旅に出発するまでの約五ヵ月間、元エンジニアらしい几帳面さで一日12時間の作業に打ち込みました。その甲斐あって、目も当てられないほど悲惨な状態だった車内は、パイン材のあたたかみに満ちた癒しの空間へと見事生まれ変わりました。
(After)
ホームセンターで手に入る身近な材料で作られた床や壁などの内装、キッチンキャビネット、ソファーと兼用の折りたたみベッド、食器棚などの家具は、ほぼ全てがMikeさんの手によるもの。温水の出るシャワーやキッチンの水道、コンロや暖房のガス、温水器、カセットトイレなどの機器の設置や何よりも優先度が高いという音響システムの取り付けもMikeさんが一人でこなしました。
このバンの改造後Mikeさんの手元に残った貯金は4500ポンド。できるだけ長く旅を続けるためにも日々の節約はかかせません。
今のところ車体屋根の100Vのソーラーパネル二枚と大きめのバッテリーのおかげで、冷蔵庫、ラップトップ、携帯電話、換気扇、水道ポンプ、照明、音響システムの電源すべてをまかなうことができているそうです。
出費の中でも大きな割合を占める食費は、廃棄寸前の食べ物を市場で譲ってもらったり、なるべく自炊するなど健康にも気を使いながら節約を続けています(Mikeさんと友人のFinnさんによるおバカな手作りジャムのレクチャーは絶対に電車の中では見ないで下さいね、噴き出しちゃいますから…)。
2014年の3月にチャンネル諸島を横断し、晴れてヨーロッパに上陸したMikeさん。入れ替わり合流する友人たちとポルトガルの海岸で波乗りを楽しんだり、ルーマニアの山地でクマに遭遇したり、ハンガリーの野外フェスで設営の手伝いをしたり、ギリシャで大道芸を習って日銭稼ぎをしたりと彼らの毎日はとても楽しそう。行く先々で起こる様々なハプニングを面白がり、この旅を通して数多くの素晴らしい人たちとの出会いに恵まれます。
人の一生のうち、先の未来を信じて意気揚々と進んでいける時期には限りがあります。彼らの放つ20代の一瞬のきらめきは、だからこそ眩しく、尊い物として見る人の心を揺さぶります。ブログやfacebookを通して日々更新される旅の道程は、大人の冒険心を覚醒させ、今すぐにでも旅に出たいとあなたを駆り立てることでしょう。
(文=伊藤愛)
Via:
vandogtraveller.com
theguardian.com
treehugger.com
thesewalkingblues.com