茶室にインスパイアされた、ヘリで運べるミニマルハウス「M-ch 016」
M-chはMicro Compact Homeの略である。最新の№16はスイスのマッジョーレ湖の上をヘリコプターで届けられた。軽々と運ばれている様子は圧巻である。
デザインは英国の建築家 Richard Horden。彼はドイツのミュンヘン工科大学にて、建築とプロダクトデザインの教鞭をとっていた。「M-ch」は当初は学生に向けての課題プロジェクトだったものが進化して現在に至っている。またこのプロジェクトは初期には日本の東京工業大学と共同で遂行された。家のデザインは日本の茶室にインスパイアされている。日本のプレハブの技術と伝統的な茶室、ヨーロッパの技術と感覚が見事に一体となっている。
わずか2.6m四方のキューブの中には、わたしたちにとっての「快適さ」が可能な限り追及されている。
すっきりと真っ白な箱型。内装はアレンジがききそうだ。壁面を有効利用した棚、折り畳み式のダブルベッドは余裕たっぷり。下の壁にスライド式に収容される、8人用ダイニングテーブル。シャワーとトイレ、キッチンには電子レンジ、冷蔵庫、冷凍庫が備え付けられている。さらにエアコンもついている。明りは省エネルギーのLEDライトが備えられている。ソーラーパワーパネル発電も可能である。
アルミニウムを素材とし軽量なのでトレーラーやクレーンで運ぶのも容易だ。トレーラーが入れないような山肌などには、ヘリコプターでのデリバリーも可能である。
環境に配慮し、4か所の小さな基盤の上に設置される。上下水道や配線など事前に必要な工事が済んだところに、組み立てられた家が届くので設置に必要な時間はわずか4~5 分ほど。驚きのはやさである。
オーナー夫妻は1ベッドルームのファームハウスに住んでいて、家族や友人をもてなすためのゲストハウスとして「M-ch」をオーダーした。今回はオーナーの希望によりWifiサウンドスピーカーとネスプレッソコーヒーメーカーも備え付けられた。
スイスの山肌とマッチするようにその土地のドライストーンを使用した壁を背に、湖を見下ろせる絶景の場所に建てられた。
この景色こそが最高の「おもてなし」ともいえるだろう。
現在の個人利用だけでなく、いくつかを横に組み合わせたスキービレッジと名付けられたデザインや上に積み上げたツリービレッジというデザインも発表されている。これらのデザインはあらゆる環境に適応できるこの家の可能性をよく表している。
学生の課題プロジェクトから始まり、現在では、ヨーロッパ、アメリカなど世界中に建っている16のマイクロコンパクトハウス、今後も増え続けていくことだろう。
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