創る基地
未来住まい方って何だろう?
今回の連載では、“今”を活きる『人』に焦点を当て、“未来”の豊かな暮らしをほんの少し、考えています。
つどい・つながり・つくる
「ここは、まだまだ未完成。みんなで創っていければと良いと思うんです」
穏やかに、しかし力強く話してくれたのは『KANAYA BASE(カナヤベース)』の副代表、金子 愛さんだ。
アトリエ・オフィスのメンバー、入居している会社、地元の方々、訪れる客人…と、彼女は常に多くの人々と会話をしている。金子さんは極めて優秀なHub(ハブ)(※)なのだ。
ここは、時代の新たな潮流を創る道具も環境も揃っている。集う人々と金子さん達スタッフが活発に繋がり、課題や目標をそれぞれが見定め、コンセプトである“つどい・つながり・つくる”を実践している。
町の中心に10年間放置されていた旧ホテル&フラワーハウスを、活動の場を求めているアーティストや、二拠点生活を試みたいクリエイターたちのシェアアトリエ&coworkingスペースに生まれ変わらせ、“まちおこしの拠点”にしよう。地元の方々の意向、若者たちの取り組み、様々な縁から『KANAYA BASE』は2012年に設立された。
アーティストやクリエーターだけでなく、老若男女関係なく、金谷に住む人、訪れる全ての人が“つどい、つながり、つくる”ことを通して、“人”がもつ知恵や技術が継承され、循環していく持続可能なコミュニティを目指し、現在、様々な取り組みを行っている。
『KANAYA BASE』がある千葉県富津市金谷は、海と山に囲まれ、南房総の玄関口に位置している。温暖な気候と豊かな海、切り立った石壁が印象的な山々、東京湾に臨む富士山など、沢山の魅力を持った町だ。また、金谷が位置する南房総地区は、自然、豊かな景色、食、高い技術を持った中小企業や商店など、素晴らしい資源が豊富にある地域でもある。(『KANAYA BASE』Webページより一部引用)
「結局は人だと思うんです」
金子さん達は将来、『KANAYA BASE』を地元に還したいと考えているようだ。
現在、施設は金子さん達スタッフやボランティアの手で運営されている。“まちおこし”は、地元の人々に施設やその活動が適合し、根付く事で初めて完了するという。
地元に活動が適合し根付くには、まずそこに人が居なければ始まらない。人がそこで暮らすには、仕事がなければ生活できない。では、まず仕事を地元に取り戻す事から始めよう。
地元で出来る仕事が、人ともに都市に流出しているのではないか?
仕事の地産地消、地域で雇用を創出し、地域の若者を呼び戻す。そんなプロジェクトが動き出している。
デザイナー・クリエイター × 企業・地方自治体で、
地域の仕事を地域でまかなう仕組みづくり。
ここから。彼女達から。地方の改革が始まるのを感じた。
“まちおこし”と「YADOKARI的住まい方」
“まちおこし”で最も難関になるのは、地元の方々といかに交流し、理解を深め、ニーズを探る事が出来るか、ではないだろうか?
金子さんのお話から、YADOKARI的な発想を紡いでみる。
町の小さなコンテナに集う活力。
狭いながらも楽しい輪が家。
同じ釜の飯を食い、酒を酌み交わせば、老若男女、地の人、旅の人、客人も皆兄弟。
つどう・憩う・つながる
『KANAYA DINING』
もっと自由に
もっとつながる
そんな未来の住まい方があっても、良いのかもしれない。
※[Hub(ハブ)]車輪の中心部。中心。中核。コンピューターシステムで、複数の端末を集めて連結する中継器。減衰した電気信号を復元する機能などをもつ。集線装置。
【協力】
KANAYA BASE(カナヤベース)
文:きむら かずたか