3階建ての家に生まれ変わった、ロンドンの小さな作業小屋「WINKLEY WORKSHOP」

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もともと作業小屋として使われていた家が建っているBethnal Greenは、東ロンドンに位置している。実はここは第2次世界大戦の時には爆撃を受けた地域であるため、当時の面影を残す建物は保護管理地区として保存されている。
この家も保護管理地区内であるのと、運河に近いために建築基準が厳しく、建物の高さにも規制があった。おまけにわずか3.7m×12mの敷地面積である。

この家のオーナーであり建築事務所KIRKWOOD MCCARTHYの建築家でもあるFiona Kirkwoodは、厳しい条件下でも妥協できない点として「ベッドルームとバスルームは2つあること」とし、建築プランを練った。そうしてできたのが、地下と中二階がある3階建ての家WINKLEY WORKSHOPである。

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Fionaは、地下室の持つ暗いイメージを取り払う様々な工夫を凝らした。コンセプトはIN and OUTである。内装と外装に統一感を持たせる手法で、オーストラリアでよく取り入れられているが、Fionaはオーストラリアで建築を学んだため、この手法を取ったと考えられる。地下室の床も外壁と同じ赤レンガを採用した。これによって中と外が統一感を持ったのである。
ドアを開けるとすぐに地下へとつながる階段があるが、ベンチとして使えるように、座るのに適した高さに計算して作られた。多い時はなんと20人もの友人が腰かけて楽しいひと時を過ごしたこともあるそうだ。

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階段と地下室を隔てるドアはガラス張りで、光を奥まで届け、室内を明るく照らしてくれる。外壁には作り付けのプランターがかかり、観葉植物、花やハーブが植えられている。
家の奥に備え付けられたキッチンはスペースの無駄を省くためあつらえたもの。棚もスペースを無駄なく使えるよう階段を利用して作られている。1階への階段はクルミ材とスチールでできていて光を通せるように工夫してある。

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中2階はスタディルーム、ゲストルームとしても使えるようにバスルームと机が置かれている。あえて壁を作らず、カーテンで仕切られるのでオープンな空間に仕上がっている。
最上階のメインベッドルームは、バスタブとトイレとの境の一部をカーテンで仕切ることにより、ホテルのような空間が実現した。追加で電気の設置がいらないというメリットもある。作り付けの棚も圧迫感を感じないように低く作られている。また、小さなバルコニーがあり、プライベートな空間も楽しめる。

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インテリアの色は白と黒で、赤レンガとクルミ材の色のみだ。これはオーナーのお気に入りのアフリカのアーティストの作品のコレクションを生かすためだそうだ。
家の裏手の壁は黒く塗られていて、これは黒ペンキで塗りつぶされた改築前の建物の思い出を残すためである。

新しく生まれ変わったこの家は、もはや「小さな作業小屋」ではなく「小さくても大きな家」である。
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(文=加藤聖子)

Via:
houzz.co.uk
kirkwoodmccarthy.com