エアコンなしで夏も快適、フィンランドの渡り廊下キャビン「Villa Kallioniemi」
オーナー夫妻は二人の子供とヘルシンキに住んでいる。夏用のコテージを探していて、子供のころの夏の休暇の楽しさを思い出させてくれるところとしてこのLepainen島を選んだそうだ。
敷地は島の東側で、岩がちで傾斜もあり、家を建てることができる平らなところはごくわずかしかなかった。裏手には木々が生い茂り、わずかに開けた家の正面からすぐ海が見える。家を建てるのが難しいが、その代わりに四季を通じて空、海、森の木々などの絶景が楽しめる。
家は渡り廊下を挟んで部屋が配置してある。これはDogtrot houseといって19世紀から20世紀初めにかけてアメリカ南部でみられた建築方法である。エアコンが無かった当時、建物の中を涼しい風を通し、室温を調節するためのデザインであった。フィンランドでは冬の風、雪嵐から家を守る役目を担う。
建築会社K2S Architectsによると、建物のデザインはシンプルさにこだわったそうだ。木材は土地のものを利用し、木目を生かし、すっきりとしたラインはフィンランドの建築にインスパイアされたものだという。
渡り廊下の部分には半アウトドアのクッキングスペースと小さなシンクも付いているので夏には活躍するだろう。リビングダイニングは3面がガラス張りで明るいつくりだ。
主なベッドルームは南側の端に配置され、リビングキッチンの隣にある。渡り廊下を挟んで二人の子供部屋がある。この子供部屋は壁で仕切られているが、壁を取ると一つの部屋としても使えて、将来を見通した設計になっている。
この家は主に夏利用を目的に建てられたが、写真を見てもわかるようにログストーブもあるし、ラジエーターでベッドルームを暖めるので冬にも利用できる。
夏に来て緑を思う存分楽しんでもいいし、真っ白に凍りついた冬の厳しさを体感するのもいい経験になるだろう。
子供たちは大人になった時、自然の中で過ごした思い出をたどり、次の世代にその経験を受け継いでゆくのだろう。彼らの親がしてくれたのと同じように。
フィンランドの自然の中、思い出のリレーはこうして続いていく。
(文=加藤聖子)