まるで一つのアートのような、三角形の家「Slice」
ノルウェーの街のとある野原に、一軒の家が建っています。三角の形をしたその家は、切り取られたテラス部分の白と外壁の黒のコントラストが目を惹く、まるで1つのアート作品のような建物です。
この家をデザインしたのは、ノルウェーの建築事務所であるSaunders Architecture。コンセプチュアルで不思議な形をした建物をいくつも発表している建築事務所で、以前この未来住まい方会議で他の作品をご紹介したこともあります。彼らの作品は、いつもそれ1つでアート作品として完結し得るような、素晴らしい作品ばかりです。
この家に対するクライアントからの依頼は、「小さい家を作ってほしい」の1点のみ。写真をご覧になるとわかるように広い土地での計画でしたので、家を極限まで小さくするとなると、家と周りの庭のバランスもとても重要です。それを解決した今回の鍵が、三角の立体を切り欠いたような形の広いテラスでした。
このテラスを設けることで、家は庭に対するフレームとなり、庭を家の一部として、つまりは外部を内部の一部として捉えることが可能になりました。外部を家の中部として使えるようにするこのテラスは、クライアントの生活をぐっと豊かにします。家の内部は極限までミニマル。機能としては、ダイニングとベッドルーム、それから水回りの必要最低限なもののみ。それでも狭さや不便さを感じさせません。内装は、木を生かして白を基調とした、モノトーンのシンプルな色使いです。
内部の白に対して、外壁は黒く塗られています。しかし、よく見ると、テラス部分だけは外部であっても白く塗られています。この黒の中に出現する白の部分が、外部を内部に引き込む役割を果たしているようです。色の境界やコントラストははっきりしていますが、それにより、外と内の境界は曖昧になっています。
家としてはシンプルで最小限の大きさで作られた、この三角の家。15㎡の床面積とは思えないくらい、うまく外部を取り込んでいるこの形は、これからの家の新しい形になっていくのかもしれません。