第2回:賃貸トレーラーハウスで、小さく暮らす。|フリーランスエディターのDIY的八ヶ岳暮らし

現在住んでいるトレーラーハウスの外観。増築されているため、一般的なトレーラーハウスよりも若干広め
現在住んでいるトレーラーハウスの外観。増築されているため、一般的なトレーラーハウスよりも若干広め

こんにちは。フリーランスエディターの増村江利子です。
前回の記事では、東京・神楽坂という都心に暮らしていた私が、なぜ長野県諏訪郡富士見町に移住したのかを書きました。
今回は、長野県諏訪郡富士見町で私がどんな暮らしをしているか、お話したいと思います。

都心とは違う、家賃の考え方

トレーラーハウスの先端部分。下の木は朽ちていますがそのままにしています
トレーラーハウスの先端部分。下の木は朽ちていますがそのままにしています

住む家を探すとき、インターネットで家賃相場を見つつ空き物件を検索したり、住みたいエリアが具体的であれば、駅前の不動産をのぞいてみたりするのが一般的だと思います。

そうすると、仲介料や手数料が初期費用に乗ってしまう…というのが世の常というもの。一覧で物件を見て、比較しながら選ぶのはラクなのですが、いわゆる田舎が都心と異なるのは、すぐに住むことができる、つまり一覧に乗るような物件は少なくて、水道管が凍結したため壊れているとか、屋根が崩れ掛かっているとか、すぐに住むのは難しそう……という空き家がたくさんあることです。

そうした空き家は、住むことができる状態に手直しする必要があることと、持ち主が積極的に貸すことを考えていないため、いわゆる市場に出回っていなかったりします。

「あの家は誰も住んでいないな」というのは、ほぼ一目瞭然で分かります。そんな空き家を見つけたら、どのくらい手を入れればよさそうか検討をつけた上で、ご近所の方はもちろん、とにかく知人に聞いてまわるのです。

そうしているうちに、その空き家の情報を知っている人に巡り会って、家の持ち主や状態、ともすれば他の空き家などを教えてくれたりして、簡単に空き物件に出会うことができます。

しかも、手を入れないと住むことができないので、自分で修繕してくれるなら家賃は安くていいよという考えで、家賃相場の半額くらいになることも。
ちなみに今住んでいる賃貸トレーラーハウスは、家賃1万円。内装など、好みでない部分は、すべて自分たちで直せばいい。

都心では成立しにくいけど田舎でできることは、サービスに頼らず仲間や地域の人を頼る、つまり、人に助けてもらえる関係をつくるということのような気がするのです。

家が傾いていたので、先日の記事でも紹介した、グランドラインのみんなにジャッキアップを手伝ってもらいました。写真は、彼らの倉庫である旧牛舎にて
家が傾いていたので、先日の記事でも紹介した、グランドラインのみんなにジャッキアップを手伝ってもらいました。写真は、彼らの倉庫である旧牛舎にて
ジャッキアップの様子。まるで車みたい。必要な道具類は大家さんに借りました(大家さん、頼もしい…)
ジャッキアップの様子。まるで車みたい。必要な道具類は大家さんに借りました(大家さん、頼もしい…)
トレーラーハウスの床下部分。大人がぎりぎり入れるくらいの高さがあります
トレーラーハウスの床下部分。大人がぎりぎり入れるくらいの高さがあります

既製品は使わない、新品より中古品。手を掛けて暮らす

賃貸のトレーラーハウスに暮らし始めて、まずはジャッキアップをして家の傾きを直したのですが、次にやったのは、これは要らないかも、と思うパーツを外したり剥がしたりすることでした。

カーテンレールを外しているところ。外したり剥がしたり。解体という作業は不思議と無心になります
カーテンレールを外しているところ。外したり剥がしたり。解体という作業は不思議と無心になります

例えば蛍光灯や階段の手すり(お子さんのいるご家庭のかたは真似しないでください!)、カーテンレール。あれこれ外して、そのついでに壁の一部や天井まで剥がしちゃいました。海外製と思われる天井材は、薪ストーブでよく燃えました。壁材の木は丸ノコでカットして、やはり薪ストーブ用に。そして洗面台上のプラスチック製のキャビネットを解体して、必要な鏡だけ残して、その辺にある木材で台をつくりました。

つくりもの感が溢れていたプラスチック製のキャビネットを、鏡と台のみに。キャビネットを解体してみると、蛍光灯の電源コードがセロテープで留められているなど、意外と雑なつくりでした
つくりもの感が溢れていたプラスチック製のキャビネットを、鏡と台のみに。キャビネットを解体してみると、蛍光灯の電源コードがセロテープで留められているなど、意外と雑なつくりでした

気がついたことは、クロスは壁を美しくみせるために張るためのものなのに、経年変化で少しでも端が剥がれてきたり浮いてきたりすると、むしろ剥がしちゃったほうがキレイに見えるということ。それに、剥がしてみないと、どこにビスが打ってあるのかが分からず、それ以上手を入れることができないのです。

壁のクロスを剥がしてみたら、窓の上にEXITと書かれていることを発見!
壁のクロスを剥がしてみたら、窓の上にEXITと書かれていることを発見!

クロスの内側、つまりもとの壁の模様は決して好みではないものの、それでもこのほうがいい。洗面台上の収納も、収納スペースが減って不便だし、出来は荒いけど、いわゆる既製品を外して自分でつくったもののほうが、断然落ち着く気がするのです。

端材は、薪ストーブ用に。小さくサイズを揃えたら、家の前に娘が積んでくれます
端材は、薪ストーブ用に。小さくサイズを揃えたら、家の前に娘が積んでくれます
階段下の収納を解体して、ついでに階段もあたらしく。骨組みはそのままに、段の部分を新調しました
階段下の収納を解体して、ついでに階段もあたらしく。骨組みはそのままに、段の部分を新調しました

暮らしのなかで、もうひとつ、大切にしたいこと。それは、できる限りあるもので暮らすということでした。

いただきもののタンス。古いため棚の開け閉めがスムーズではないのですが、まだまだ使えます
いただきもののタンス。古いため棚の開け閉めがスムーズではないのですが、まだまだ使えます

例えば、上の写真のタンスは、タダで譲り受けたもの。きれいに掃除をして、古くて木が痛んでいたり、ビスが緩んでいたりする箇所を修理しました。ピカピカの新品よりも、使い古された中古品のほうが美しい。大げさかもしれませんが、もう買うものなんてないな、と思ったくらいでした。

非電化生活で、暮らしを取り戻す

そして、移住して一番驚いたことは、冬の電気料金でした。住み始めるまでに薪ストーブを設置したり、穴の空いている箇所を塞いだり…と準備のために知人宅に居候していたのですが、住んでいない間の電気料金が月4千円台。何も使っていないのに4千円……!?ということで調べてみたら、凍結防止のために水道管にヒーターが巻かれていて、寒くなると起動するという仕組みでした。

凍結すると水が出ないだけでなく、蛇口などが破裂して壊れてしまうため、ひとまず凍結防止用のヒーターは仕方なくそのままにしていますが、生活家電を見直して、冷蔵庫を使うのをやめてみることにしました。

もともと電化製品がすきになれず、家電の少ない家ではありましたが、これで家の中の生活家電は洗濯機のみに。掃除は、箒と雑巾で。食品は買いだめせず、食べる分だけを都度購入。ビールなどの冷たい飲み物は、飲みたい人に持ってきてもらう(笑)。冷蔵庫のない暮らしを始めて数ヶ月が過ぎますが、特に困ったこともありません。

写真は、娘用の箒とちりとり。お手伝いが、そのまま遊びです
写真は、娘用の箒とちりとり。お手伝いが、そのまま遊びです

洗濯機も手回し式や足踏み式などを検討しましたが、大きなシーツ類を脱水するのはやや難しそう……ということで、非電化生活の最後の砦は、洗濯機だったのでした。

まだまだお伝えしきれていませんが、一貫して言えることは、消費するのではなく、つくるということ。もちろん節約にもなるのですが、決して節約をするためではありません。
せっかくトレーラーハウスというタイニーハウスに出会えたのだから、もっと暮らしを小さく、シンプルにしたい。単純にモノの量を減らすというだけでなく、消費するエネルギー量も減らして、はじめて「小さな暮らし」と言えるのだと思うのです。

次回は、私が移住するひとつのきっかけとなった「パン職人のための小屋」についてお話しようと思います。