【書評】住まいの原型は小屋にある「中村好文 小屋から家へ」|YADOKARIの本棚

thumb_DSC_0989_1024「小屋」という言葉に心が動いてしまうのはなぜだろう。
自分の意識が届く範囲の空間を小屋というのなら、子供の頃に誰もが憧れた秘密基地や隠れ家も小屋と言えるだろう。「人の住まいの原型は小屋にある」という自論を持つ建築家、中村好文氏の「中村好文 小屋から家へ」を紹介する。

この本は中村好文氏の著書「中村好文 普通の住宅、普通の別荘」の続編として、「中村好文展 小屋においでよ!」の展覧会図録という側面も併せ持ち出版された。
本書は、中村氏が惚れ込んでいる古今東西の小屋7つの紹介と、中村氏がデザインした12の小屋、そしてファッションデザイナーの皆川明氏との小屋をめぐる対談で構成されている。

2005年頃から、仕事の合間に長野県でエネルギーの自給自足をしながら小屋暮らしを楽しんでいるという中村氏。

体験を伴った言葉は強く心に訴えかける。本書に掲載されている言葉や小屋からは、中村氏が五感を使って感じ取ったであろう、小屋の魅力がにじみ出ている。

好きなものを語る人の言葉も、また魅力的なものだ。
小さな暮らしを愛する建築家が選んだ、小屋の写真や設計図、手書きのラフ図を見ると、読者もまた、その暮らしに引き込まれてしまうかもしれない。

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この本は、気軽にページをめくりながら楽しめる「間口の広さ」と、思わず暮らしと住まいについて考えはじめてしまう「深み」を併せ持った本だと言える、あなたならどう読み解くだろうか?