露天風呂にスケートパークも!吊り橋でつながった二つのツリーハウス「The Cinder Cone」
3年間の車上生活を経て、生まれ育った家にほど近い丘の上に元デザイナーがツリーハウスを建てた。「The Cinder Cone(噴石丘)」と名付けたその場所は、露天風呂やスリリングな吊り橋でつながった二つのツリーハウスに、スケボー用のスケートパークまである大人たちの桃源郷になった。
大学を卒業後、ラルフローレンのメンズ担当デザイナーとしてキャリアをスタートしたフォスター・ハンティントン氏。有名メゾンのデザイナーとは誰もがうらやむステイタスだが、仕事を始めて1年半が過ぎた頃、彼は服に対してそれほど興味を持てない自分に気が付いた。
中古のバンを買えるまで金を貯めたら仕事を辞めよう、そう思っていた矢先、自身のブログを書籍化する話が出版社から急浮上。運よく旅の軍資金を手にしたフォスターは、87年式のワーゲンのバナゴンをお供に、三年に及ぶ長いロードトリップへと旅立つ。
それからの彼はウエストコーストのビーチやキャンプ場を気ままに渡り歩き、何にも縛られない自由な生活を謳歌した。当時23歳の若者にとって、旅先で過ごす日々は理想の暮らしそのものだった。しかしノマドなライフスタイルをネットで発信し、100万人近くのフォロワーを抱える身には、屋外の気まぐれなネット環境は悩みの種でもあった。外で食べるメキシコ料理にも飽きてきた頃、フォスターはツリーハウスに暮らす夢を友人の一人と真剣に語り合っていた。
夢を語る人間は多いが、フォスターはいつも本気だ。ラッキーなことに、景勝地として有名なコロンビア川渓谷近く、フォスターが育った家から数マイル離れた丘の一部を両親が数年前に購入していたのだ(そこはハンティントン家お気に入りのキャンプ地だった)。ツリーハウスを建てるには願ってもないロケーションを手に入れた彼は、2014年の6月、大勢の友人たちを巻き込んで、夢のようなツリーハウスの建築計画を始動した。
気の置けない友人たちとのツリーハウス作り。もちろん楽しいことばかりではなかったろうが、大工仕事の合間にはアーチェリーやスケボーではしゃぎ、近くの川で泳いだり魚釣りを楽しんだ。夜には酒盛りをし、バーベキューに舌鼓を打つ。楽しむことに貪欲な”元”子供たちがワイワイやっているうちに、季節は巡って9カ月が経ち、フォスターと仲間たちの「The Cinder Cone」は完成した。
二つのツリーハウスの下段に位置する「The Studio」は、フォスターの仕事場兼ゲストルームになっている。レッドシダー製のキャビンは3本の大木に支えられ、宙に浮かんだような格好だ。
そこから弓なりになったはしごを上り、中継点から伸びるスリリングな吊り橋を渡りきると、「The Octagon」からの壮大な眺めを我が物にできる。地上約10mの高さから、夜はかすかにポートランドの街のあかりが見えるという。怖いものなしの勇者が八角形のベッドルームで見る夢は、どんな壮大な物語なのだろう?
「The Cinder Cone」のスケールは大きいがツリーハウスは小さい。だが家が窮屈で煮詰まっても、外には自慢のスケートパークと露天風呂がある。時間を気にせずスケボーに興じ、夕暮れの草原をバックに湯けむりの中で次のプロジェクトに想いをはせる。誰にせかされることもないスローで贅沢な時間。やりたいことを貪欲に追い求めたフォスターに、仲間も同じ夢を見て、素晴らしい世界を実現させた。夢を語った後で、どれだけ本気で行動できるのか。彼のツリーハウスはその結果を雄弁に物語っている。