重力を無視するキューブ、斬新な見た目の機能的な別荘「VALLEY HOUSE」

VALLEY_HOUSE_01
Via:planbureau.info

かつて海外営業として働いていた筆者のお得意さんに、ミラノ在住のイタリア人がいた。彼は休暇があるとミラノから車で三時間半ほど北東に行ったところにあるドロミーティ山に出かけると言っていた。ドロミテとも呼ばれるそこはイタリア北東部にある山地で、東アルプス山脈の一部だ。この街にはヨーロッパ中から多くの人が訪れる有名な観光地で、スポーツ、スパ、美術館などが楽しめる。

今回ご紹介するのが、このドロミーティ山に建てられたスモールハウス「The Valley House」だ。

ウクライナ人建築家コスティアンティン・クビカの手掛けた総床面積117㎡のこの家は、周りの景観をある意味裏切る、伝統とは無縁の斬新な見た目だ。この家の建つ山あいの風景にインスパイアされたクビカのアイデアが、二つの山が並んだような形の屋根を持つ、木とガラスでできた彫刻のような作品だった。クビカは、持続可能な構造と、熱的特性を持つ美しい仕上がりのため、主要な構成材料としてパイン材を選択した。斬新な見た目のわりに、辺りの景観になじんでいるのは、木材の持つ温かで柔らかい質感によるものだろう。

VALLEY_HOUSE_02
Via:planbureau.info

立方体を二つXのように交差させたような独特な外観。正方形の木材とガラスのパネルが組み込まれ、外光を採りつつも、木材パネルで絶妙にプライバシーを確保している。
この家の形にしても、窓ガラスの場所にしても、型にはまらないのが、建築家のこだわりだろうか。特に印象的なのが、上部が重い、頭でっかちなデザインだ。山が並んだような二つのダイヤ型が三角形のベース上に積層されており、傾斜壁が地面に向かってそびえ立ち、角度のついた窓ガラスを持っている。この独特な家の形状のおかげで様々な角度に設けられた窓からは周囲の自然や山並みを異なる視点で見ることができる。

VALLEY_HOUSE_03
Via:planbureau.info

外観からだと家の中がどうなっているのか、わかりずらい。2階建てのこの家は、1階がキッチンとダイニングとリビングスペースの共有スペースだ。2階部分がベッドルームとバスルームのプライベートスペースとなる。家の側面から伸びた木製の階段が入り口のようだ。残念ながら内装の写真が少ないので言葉を尽くしてイメージしてみたいと思う。

1階部分は地面からかなり上がった場所にある。外から木造で柔らかい印象の階段を上ると大きな白木でできた扉がある。玄関をくぐると玄関ホールとすぐ左側に広いキッチンがある。大勢で宿泊しても十分対応可能そうなスペースだ。玄関からそのまままっすぐ歩いていくと左側に上る小さな階段がある。そこを上り、半階上がった場所にダイニングエリアや暖炉、その隣にリビングルームがある。

VALLEY_HOUSE_10
Via:planbureau.info

また2階に行くには玄関の脇の階段を上るとホールがあり、一番手前にある部屋がセカンドベッドルーム。奥にメインベッドルームがある。その間にバスルームとトイレが別々に設けられている。欧州ではバスとトイレは同室が多いが、この点では日本人にも好ましいデザインではないだろうか。メインベッドルームにはソファーなども置かれており、広々としている。

VALLEY_HOUSE_09
Via:planbureau.info
VALLEY_HOUSE_05
Via:planbureau.info

建築家のクビカはこう語る。「建物は大きくありませんが、機能的に作りました。家族連れのための快適な休日の家としてや、登山や小さな観光グループための別荘として使っても、使い心地の良いものでしょう。」

見た目の斬新さのわりに、実に機能的で、なおかつ居心地の良さそうな家だ。それぞれの部屋には窓があり、そこからはアルプス山脈を望むことができる。静かで穏やかな休暇にピッタリの家ではないだろうか。

VALLEY_HOUSE_04
Via:planbureau.info
VALLEY_HOUSE_06
Via:planbureau.info
VALLEY_HOUSE_07
Via:planbureau.info
VALLEY_HOUSE_08
Via:planbureau.info

Via:
dezeen.com
planbureau.info
designboom.com
fubiz.net
trendhunter.com
mymodernmet.com
wikipedia.org
visitdolomites.com