大自然に「間借りする」、自然とつながるミニマルな家「Gulf Islands Cabin」

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Via: olsonkundig.com

うず高く積まれた薪の山が美しいアートに昇華しているのは、背景がとてもシンプルな家だからこそ。自然を感じることを主眼に建てられたカナダの小さな隠れ家は、外から見た印象そのままに、室内もミニマリズムの精神に貫かれています。

カナダのガルフ諸島の一つ、ソルトスプリング島の鬱蒼とした木々の間に、一軒の小さなキャビンが建てられました。設計はシアトルを拠点に活動するOlson Kundig。自然の体感が第一義のこの家では、生活のための設備は最小限に抑えられています。

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正面の扉を開けると、およそ18㎡のコンパクトな空間に、スリムな薪ストーブ、簡素なキッチン、扉のないオープンなトイレが収められています。外の景色を一望できる窓辺の特等席には、寝心地のよさそうな大きめのベッド。ぎりぎりまで無駄をそぎ落とした居住空間ながら、ストイックな息苦しさや寒々しさは感じられません。

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内装には、壊れてしまった地元の橋や敷地内に転がっていた杉の丸太を再利用。木質感にあふれた室内は、大きく開いた窓を介して、外に自生する木々と呼応しているかのようです。外の景色とのつながりが、小さな家をのびやかな空間に見せる秘訣なのでしょう。

この家の中で自然との結び付きを最も感じられる場所は、玄関先に設けられたアウトドアシャワー。周りの目を気にせず大自然の中で浴びるシャワーは解放感たっぷり。しかし、さすがにこのままでは抵抗が……という場合も、無塗装の軟鋼パネルをシャワー側へスライドして、正面からの視線を遮ることができます。俗世間のしがらみを洗い流し、日常と非日常を切り替える象徴としての意味合いが、外に置かれたシャワーに込められているのかもしれません。

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緑豊かな環境に人工物を築く場合は周囲への影響を最小限にとどめたいもの。この家はかつてあった小屋の跡地に建てられ、家の背後を守る擁壁には地元の練り土を採用しました。家の外観が素晴らしい風景を乱してしまわないように、外壁に使われた軟鋼パネルはあえて無塗装のままに。素地のパネルは年月を経るごとに徐々に色あせ、近くの岩や枝葉と同化していくことでしょう。

そこにあることを忘れさせるほど周囲になじんだ外観。外と内の区別のあいまいさ。積まれた薪が素敵なオブジェに見えるほど無駄をそぎ落としたデザイン。この小さな隠れ家には、大自然に「間借りさせて頂く」謙虚な気持ちが感じられます。建築がもたらす自然界への影響と、自然の中に暮らしたい人間の利害の一致はとても難しいこと。理想的な落とし所があるとすれば、それはこのような家の形なのではないでしょうか。

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