おすわりをする犬?のような、ミニマルな休暇小屋「Weekend House in Vallemaggia」
平地に置いてあれば、なんてことはない四角い家だけれど、この家には足のような柱がある。その姿は、主人を待つ忠犬のように見えないだろうか?
スイスの牧草地を見下ろす場所に建てられたこの家は、スイスで生まれた建築家、roberto briccolaが1998年に手がけたプロジェクトだ。
1959年に生まれたロベルトが手がける建築は、この建物のようにミニマルでスクエアなデザインを持つ。
建材にはコンクリートの打ちっぱなしやガラスを多用し、すっきりとした見た目が美しい。これは、ガラスや鉄筋、コンクリートを使い、「ミニマルな建築」という概念を作り出した建築の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエ直系の思想だ。
この家は、週末を過ごす休暇小屋として建てられた。1階はキッチン、リビング、ダイニングエリアで、2階は寝室とシャワーとトイレがある。家はほぼ直線で構成されており、玄関は金属の枠や、ダイニングエリアのスクエアな窓は、ミニマル建築の基本的な要素だ。
1920年代に始まったとされるミニマルデザインの建築物は、無駄がなく、すっきりとしていて心地よいが、人を寄せ付けない冷たさを感じる。そこにコンクリート製の円柱の柱を付けたのは、建築家の遊び心だろう。たったこれだけのことで、家は人を寄せ付ける愛嬌を得たのだ。
古来から人は自然を加工して生きてきた、ミニマリズムは有機的な要素を極限まで排除し、人工の美を突き詰めようとした。
それは実験としては良かったのかもしれない、と筆者は思う。「水清ければ魚棲まず」ということわざがあるように、人の手が入りすぎると、どこか窮屈で居心地が悪くなる。
この家が持つ、もみの木を使った外壁や、足のように見える柱は、ミニマリズムに「遊び心」や「余白」を加えた実験だったのではないか。
(文=スズキガク)