【書評】3万円でつくる、家の概念を変える家「モバイルハウス 3万円で家をつくる」|YADOKARIの本棚

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先日ご紹介した「月3万円ビジネス」は、月に3万円稼ぐビジネスを、複数営んで生計を立てるヒントが満載の本だった。
月に3万円あればできることは色々あるが、今回ご紹介するものは読者の皆さんにとって予想外だと思う。「モバイルハウス 三万円で家をつくる (集英社新書)」では、なんと3万円で出来る家作りを紹介しているのだ。いったいどんな家が作られたのだろうか。


本書の著者、坂口恭平氏の名前は読者の皆さんならば、一度は聞いたことがあるのではないだろうか?坂口氏は、作家・建築家・絵描き・踊り手・歌い手と多くの肩書を持ち、様々な実験的な暮らし方を実践している。多彩な坂口氏が作り上げたのはモバイルハウス。未来住まい方会議の読者にはお馴染みの、移動できる家だ。
こちらの特集のように、未来住まい方会議で取り上げたモバイルハウスの多くは、車を活用したものだった。

しかし、坂口氏は一から自力でモバイルハウス(車輪付きの家)を作ったのだ。
きっかけは、路上生活をしている男性と出会ったこと。この男性の暮らしている家は自ら作った3畳ほどの空間で、坂口氏はその空間が想像以上に広く感じられたと言う。もしこの空間が撤去されたら、リヤカーの上に家を作ってどこでも移動できるようにする。という男性の話から、坂口氏はモバイルハウスのアイデアをひらめいたのだ。

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家の材料はすべてホームセンターで買い揃えた。モバイルハウス作り経験者のアドバイスをもらいながら、作業時間約24時間でモバイルハウスが完成した。モバイルハウスのライフライン(電気・水・トイレ等)はアイデアで解決。完成したモバイルハウスは月2万3千円で借りた駐車場に置き、坂口氏の実験は進んでいく。

この広さのモバイルハウスでは、もちろん生活の全てが完結するわけではない。
『住宅システムを解体するのではなく、家という概念を広げるのである』
※「モバイルハウス 三万円で家をつくる」より引用
本を読み進めると坂口氏の言う、この言葉の意味がすっと入ってくるようになる。

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不便だと思われていることは、果たして本当に不便なのか、それとも私達の感覚が便利さで麻痺しているのか。最低限必要なものと空間で生活してみると、自分の生き方を見直すことができるのではないだろうか。
坂口氏の実験的な生活を綴った本書から、暮らしについて考え直すヒントを受け取って欲しい。