絶景を見ながら湯船につかる、空中露天風呂があるツリーハウス「Tree Bach in New Zealand」
小学校の低学年くらいに、あなたもきっと描いたことがあるだろう。「住みたいいえ」というふんわりしたタイトルのもとに、戸建てなのに10階建てでエスカレータがついていたり、屋上でクジラが泳いでいたり、リビングに射的場があったりするエッジーな意匠の家を。
エンジニア兼グラフィックデザイナーであるJono Williamsが仲間と手作りしたツリーハウスは、子供時代に誰でも1度は夢想したに違いない、トンデモハウスに通じる世界観を感じさせるものだ。しかし、それは子供の空想よりも幾分現実寄りになって、かつて子供だった男たちの手により現実世界に産み落とされた。
場所はニュージーランド北島のパーマストンノース。いかにもニュージーランドらしい牧草地を見下ろす斜面の一角に、Jonoが仲間たちと建てた12㎡のツリーハウスがある。
このツリーハウスの目玉は、目の前の絶景を眺められる空中露天風呂と、自動で伸縮する橋が装備されているところにある。
玄関につながる橋は、ゲートの開閉装置をアップサイクル(廃棄物に新しい活用法を見出すこと)して作られており、実際に動く様子は下の動画で確認することができる。
露天風呂の位置は下から仰ぎ見ると血の気が引きそうになるし、橋だって別にハシゴや板を渡せば事足りるだろう。だが、これはツリーハウスなのだ。子供の頃に思い描いたような、ありえない設定の仕掛けがすんなり馴染んでいるのは、ツリーハウスが現実のものでありながら、貴重な夢の実験場だからであろうか。
Jonoのツリーハウスの建材の多くは、Facebookを通じて友人たちから譲ってもらった廃材や建築現場で拾った資材で出来ている。そのためかかった費用はたったの1,500ドル。もちろん、破格の費用でこれだけの規模のツリーハウスを建てることができたのも、仕事が終わってから現場に駆け付け、作業を手伝ってくれた仲間たちの存在や、プロのビルダーであるJonoの兄弟のバックアップがあってこそ。
ツリーハウスの室内は外観から想像するより洗練された雰囲気で、目立つ家具といえばクイーンサイズのソファーベッドと小さな洗面キャビネットのみ。照明はLEDで、音響にもこだわった。
横長の窓に切り取られた夕暮れの景色を眺めながら、お気に入りの音楽をかけ、大切な人たちと過ごす時間。きっとどんな贅沢よりも、そこにいる者たちを満ち足りた気分にさせてくれることだろう。露天風呂につかりながら夕日が沈むのを見届けたり、朝は少し早起きをして、あたたかいコーヒーをすすりながら外のテラスで朝日が昇るのを心待ちにしたり……。
あなたが子供の頃に描いた夢の家の続きは、ありえない、とか面倒くさい、などといった気持ちを捨てた時に、現実の物となってひょっこりとその姿を現すのかもしれない。