植物と共にあちこちへ、移動する温室「Cucumis mobile」
「育てている植物が枯れないか心配で、出かけることができない。」こんな悩みは、植物を育てたことがある人には思い当たることかもしれない。植物は土に根ざすもので、持ち運びは難しい、では土や温室ごと移動できるようにしたらどうだろう?
「Cucumis mobile」は、ポーランドのデザインフェスタ「LODZ Design Festival」に展示された移動可能な温室だ。
デザインやコンセプトはMALAFORデザインスタジオのワークショップに参加した若いデザイナー達が担当し、「都市の中で様々な人が関わって植物を栽培するための温室」を実現させた。
移動可能にした理由は、街の中で移動できれば、様々な場所に住まう人々のもとに移動できると考えたためだろう。下にキャスターが付いたこの温室は、実際に「LODZ Design Festival」の会期中、カフェやビルの前など、街のいたるところに出没したようだ。
温室の中で栽培されているのはキュウリ(英語で「cucumber」)で、これは温室の名前の由来になっている。とはいえ、温室の中ではキュウリだけでなく他の作物や花なども栽培できるので、ご安心を。
この温室の屋根は、谷のように傾いているのが分かるだろうか?これは雨水を集め、作物の栽培に使うための簡易灌漑設備で、集めた雨はそのままタンクに貯められ、植物を育てる水として利用することができる。小さくて見えづらいかもしれないが、外側には蛇口が付いていて、これは貯めた水をじょうろなどに移し、植物に水をやるために使用する。
コニュニティガーデンのように、決まった場所にみんなで集まり植物を育てるのも楽しそうだけれど、この温室を半分ほどの大きさにスケールダウンすれば、次は私、その次はあなた、と温室をバトンのように受け渡しながら植物を育てることもできそうだ。
「お世話になってます〜、ちょっと温室預かってくれませんか?」とお隣さんに話す未来が、もしかしたらやってくる、かもしれない。
(文=スズキガク)