低予算でもここまでできる、コンテナをパーテーションに使ったオフィス「Pallotta TeamWorks」

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今まではスモールハウスに特化してご紹介してきた当コラムだが、多くの人々が家よりも長く過ごすであろうオフィスにも注目していくことになった。そこで今回取り上げたのが、チャリティー専門のイベント会社パロッタ・チームワークスのオフィスだ。

パロッタ・チームワークスはアメリカのカリフォルニアを拠点にしたチャリティー専門のイベント会社だ。彼らは費用が1000ドル(日本円にして12万円以上 2015年9月現在)の複数日参加型チャリティーイベントの仕掛け人である。同社はAIDSライド、AIDSワクチンライド、アフリカのAIDSトレッキング、乳がんのための3日間ウォーク、や自殺防止イベント「Out of the Darkness (暗闇を越えて)」などのイベントをこれまで手掛けてきた。これらのイベントでこれまで9年間で556万ドルを募り、経費を差し引いた305万ドルを募金している。

パロッタ・チームワークスは、同社が2002年ハーバードビジネススクールのケーススタディの対象となった2002年のピーク時、全国16拠点で約400のフルタイム従業員を抱えていた。パロッタ・チームワークスのアイデアや手法は米国、英国、カナダなどの団体や企業によって採用され、各地域で多額の募金集めに役立っている。

彼らは増加し続ける従業員全員を一か所に集合させ、よりクリエイティブで想像力をかきたてるようなオフィスで働いてもらうために、新たに47,000㎡の広さの倉庫を見つけた。そこで相談したのが、倉庫にクリエイティブなオフィスを手掛けた経験のあるクライブ・ウィルキントン・アーキテクツだった。
カリフォルニアを拠点として活躍するこの建築事務所はGoogle、ノキア、BMWなど数多くの企業のオフィス建築を手掛けてきた。

あいにく今回の施主はその業務の性質上、あまりオフィスにお金をかけることはできない。彼らが提示した予算は一平米あたり40ドル(約4800円)だ。この限られた予算で何ができるかが大きなチャレンジだった。
そこでこの巨大な倉庫にコンテナで縦横にスペースを区切る立体パーティションを考え付いた。またある程度快適なスペースを実現しつつ、冷暖房や照明の費用を削減する方法を模索するため機械、電気、および配管部品が再検討されることになった。

施主との緊密な話し合いで、企業として求める理想や持続可能な戦略などを良く理解したうえで彼らは建築案を検討した。
さて、一体どんなオフィスになったのだろうか?

巨大な印刷された日よけのスクリーンを抜けて倉庫内に入ると、レセプション(受付)のアイランドデスクがみえる。デスク上には発明家バックミンスター・フラーのダイマキシオンの世界地図がカラー印刷されていて目を引く。これは国境などが描かれない、大きく連なる土と緑に覆われた大きな塊の地球の姿だ。この企業の意識を反映しているともいえる。

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この受付から濃いブルーのコンテナ群がこの倉庫のメインストリートにあたる中央部に一列に並んでいるのが見える。コンテナの上には白いテントの屋根。更にその奥には四角い広場があり、そこには3階建の9つの黄色いコンテナが連なったタワーがあるのが見える。これがエグゼクティブタワーと呼ばれているオフィス群で、横から眺めると蟻の巣のようにも見える。中で蟻のごとく身を粉にして働いているエグゼクティブの姿が見える。エグゼクティブタワーの麓には人口の池を設け、働く人々の目を和ませる。

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広場の裏側には広場を囲むように2階建ての木造の建物が建てられている。ここはミーティングルーム、オーディオ&ビデオ用のレコーディングスタジオやアシスタントスタッフたちの作業場として使われている。

快適性や有用性だけではなく、エコフレンドリーで効率の良さを目指したこのオフィス。
南カリフォルニアの温暖で湿度の低い気候はどの温度でも一定の快適さを与えてくれる。屋根全体に断熱材を施し、カリフォルニアの強い日差しが室内に与える影響を和らげた。また蛍光灯のため、光源からの発熱も抑えられている。日中は、天窓を通して日光が差し込むため、不必要に電気を消耗することもない。

そして「呼吸ができるアイランド」のコンセプトが作られた。
エアコンはスタッフが多くの時間を過ごす場所だけに限られた、それ以外の外部の通路などにはあえてエアコンなどは設けなかった。その代わりに空気の流れを利用した。

コンテナ以外に使われたのが、クライアントのイベントで使用した大型テントだ。天井から吊り下げ、支柱で支えてある。この巨大テントには換気用の巨大なパイプが通され、空気の流れを作っている。

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他にも仕事に疲れて一服するコーヒータイムを楽しめるバースタイルの休憩所も作られている。この広いオフィスを散歩するだけでいい気分転換になりそうだし、新しい企画のアイデアも浮かんできそうではないか。

日本のオフィスはどうも堅苦しいと思っている経営者の方は、世界各国の新しいオフィスからアイデアをもらってみてはいかがだろうか。拾ったオフィスのアイデアを将来のオフィスづくりに役立てていただければ、日本で働く人々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)も大きく変わっていくのではないだろうか。

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