コンクリートが織り成すパッチワーク模様、元製材所の「SawMill House」
オーストラリアに建っているこちらの家は、巨大なコンクリートの壁がパッチワーク模様をつくり、なかなかの存在感を放っている。この家は、もとは鉱石などの発掘所で、その後木材切り出し用の作業場として使われていたが、谷を見下ろす景観に魅せられた彫刻家のBenjaminと建築家であるChrisの兄弟が、子育てのできる温かな家として製材所を生まれ変わらせた。
正面の壁面を構成するコンクリートの塊は、ひとつの重さが1tにもなり、廃棄されたものをリサイクルした。270個の巨塊が使われており、もともとあった場所や用途の違いで、ひとつひとつの色や質感が異なり、独特な味となっている。
内装に使われている木材は全て地元の木材を使用。ベンチとしてもテーブルとしても使えるシンプルな家具や棚もすべて建築家チームの手がけたオリジナルで、統一感があり美しい。
当初は単身者向けの家になるはずだった家だが、事情は変わり、パートナーと産まれてくる子供の3人で暮らす家づくりが必要になった。小さい子供がいると間取りやつくりの安全性にも気を配る必要がある。寝室横の芝生は壁に守られていて、赤ちゃんが日向ぼっこをしても安全だ。
開放感がある縁側のようなデッキは、一枚の大きなガラスで室内と区切られている。そのため、視界を遮ることなく、広々とした印象だ。小さな庭は、砂と石が多く使われていて和風な雰囲気が漂い、親近感が持てる。
無機質で冷たい印象を与えるコンクリート。色や質感の違いを生かして組み合わせることで、温かみのある表情を生み出した。開放的でありながら、プライバシーも保たれ、安全・チャイルドフレンドリーな家である。
(文=加藤聖子)