カメラの中を覗いてみたら? 逆さまの風景が映る家「EYE POD」
「小人になって、カメラの中に入ってみたらどんな風景が見えるのだろう」そう思ったことはないだろうか。EYE PODという名のこのコンテナハウスには、そんな思いを実現する秘密が詰まっている。
EYE PODの外観は単なる四角い箱のように見えるが、側面に小さな穴が開いている。この小さな穴が、カメラのレンズ部分の役割を果たし、EYE PODという名のコンテナハウスを、大きなカメラに変身させているのだ。
仕組みはこうだ。
外から入ってきた光が、建物の側面に空けられた小さな穴を通って部屋の中にある壁一面に貼られたガラスに映し出される。ガラスはカメラでいうフィルムの役割を果たしていて、映し出された風景は部屋の中で逆さまに見えるようになっている。この仕組みによって、建物の中に入った人は、まるでカメラの中の世界にいるような体験をすることができるのだ。
「建物をまるごとカメラにしてしまおう!」こんな奇抜なアイデアはどのようにして考えられたのだろう?
実は、この建物は、ミネソタにあるランドスケープ樹木園が実施したコンテストの応募作品として出品されたものだった。
ランドスケープ樹木園といえば、445ヘクタール(東京ドーム約95個分!)もの敷地面積を持つ広大な植物公園で、敷地内にはさまざまなスタイルの庭園や滝、ビジターセンター、ギフトショップ、レストラン、図書館、大学、学習センターといった建物が併設されている。近隣の都会に住む人々にとって、四季の自然を感じ、日常を忘れて安らげる場所になっているという。
建物の共同考案者であるフレリックス設計事務所では、この緑豊かな場所に展示する作品に「1本も植物を使わない」という選択肢を選んだ。建物を緑で飾るのではなく、カメラのレンズを通して、変化のある植物公園の自然の景色を建物の中に直接入れてしまおう、というアイデアだ。
緑豊かな植物公園に展示する作品として選ばれたのは、1つの窓もない建物「EYE POD」だった。「周りの緑を楽しむなら、窓が大きな家」という考え方も変わるだろうか?