ツリーハウスで過ごすような贅沢なひとときを、オフグリッドハウスに変身を遂げた1950年代の別荘「TRANSFORMATIE BOSHUIS」
オランダ東部の町・ヘンゲロー。森の中にたたずむこの別荘が最初に建てられたのは、1950年代に遡る。この別荘の現在のオーナーは、もともと小さな古い別荘だったこの建物を全面的にリノベーションし、モダンなオフグリッドハウスに変身させた。当初の構造を生かしつつ、新たに二階部分を増築することで、この別荘は見違えるように蘇ったのである。
このプロジェクトは、地元の建築家であるBloot Architecture が手がけたものだ。当初建築された骨組みをベースに、新たに大きな窓を備えた二階部分を増築した。別荘に一歩足を踏み入れると、周囲にあふれる自然をダイレクトに感じることができる。また、リノベーションによって、大きな窓から広がるダイナミックな空と森の眺めを手に入れた。この建物を手がけた建築家は、生い茂る木々に囲まれたこの建物に入ると、「あたかもツリーハウスに滞在しているかのようなんだ」と話す。
建物の高さと屋根の傾斜については、地元の自治体の細かい条例に合致するように、厳密にデザインされている。なお一新されたのは、増築された二階部分だけではない。この別荘は、いかに環境に配慮した建物とするかに着目し、設備を含め全面的にリノベーションされているのだ。例えば、この建物は最新のオフグリッド・ソーラーパネルシステムによって電力をまかなっている。また暖房には薪ストーブを使用しており、生活排水は塩生植物のフィルターで浄化される。
さて、建物の内部を見てみよう。壁、天井、さらに増築した二階部分の床は、薄いベニヤ板で覆われている。こうすることで、ますますツリーハウスに滞在しているかのような雰囲気が醸しだされている。主寝室には、1枚のガラスで作られた大きな窓が備え付けられており、この別荘の一番の魅力となっている。言うまでもなく、ここからは周囲の森の景色を存分に楽しむことができ、贅沢なひとときを過ごすことができる。なお、この部屋の装飾は必要最低限だ。周囲の自然が、どんな装飾にも負けない魅力を有しているからだ。ライトは剥き出しのランプのみで、シェードはついていない。ベッドはシンプルなマットレスが備え付けられているのみだ。
シンクと収納棚は、全て造り付けとなっている。不要な家具を持ち込む必要がないように、配慮されているのだ。増築された2階部分へ行くための階段も、シンプルでスタイリッシュなものとなっている。もしあなたも、森の中にたたずむ古い別荘を手に入れたのなら、こんなリノベーションをしてみてはどうだろうか。誰にも邪魔されない森の中の静寂に身を置き、地球にも優しい建物で過ごす時間は、今後の新しい暮らし方となるかもしれない。
(文=佐藤香織)