【インタビュー】”面白い方に行けばいい” 長野に移住したフリーランスエディター・ライター増村さんの暮らしと働き方|日本でも始まっている小さな住みかた。アイム・ミニマリスト

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多拠点居住、ミニマルライフやコミュニティビルドなど、未来住まい方会議でご紹介している、新しい豊かな暮らし。これらの暮らしはまだまだ実践者も少なく、始めてみたいけど少し不安という方も多いのではないでしょうか?この連載では、日本国内の新しい暮らしの実践者にお話をお聞きして、新しい暮らしを始めるヒントをお伝えしたいと思います。

※この記事は、2015年11月27日(金)に三栄書房から発行された「アイム・ミニマリスト」から内容を抜粋しています。

東京の仕事を地方でこなす、移住先での暮らし仕事

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連載第5回目ご紹介する増村 江利子さんは、東京から長野県諏訪郡富士見町に移住したフリーランスエディター・ライターの女性です。増村さんが住む富士見町は、八ヶ岳とアルプスの山々の景色のなかに棚田が広がる、のどかな土地。増村さんはパートナーとお子さん、犬1匹と猫2匹とともに暮らしています。

長野県に移住した増村さんですが、東京で請けていた仕事を移住先でも続けています。
週3日ほどは編集とライター業務を行い、週2日は大工仕事。働く時間は平日9時から18時まで、その合間に気が向いたら自宅をDIYで改修したり、庭仕事をしているそうです。

増村 江利子さん(以下、増村)「基本的には、移住前の仕事をそのまま持ち込んでいます。月に2〜3回のペースで東京へ出張し、あとはskypeなどを利用してオンライン上で会議をしています。ブレストなどは出張時に、進捗の報告はオンライン会議で十分です。」

地方に移住すると仕事の収入は下がりそうですが、その点は変わりないのでしょうか?

増村「報酬は、東京への交通費と時間を担保するため、下げないよう努力しています。職種などによっても異なると思いますが、私の場合は、移住したから収入が減ったということはありません。仕事をする時間も減って、生産性は倍以上になっていると思います。」

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移住をすることで、収入はそのまま、仕事をする時間は減ったという増村さん。ご自身の仕事の立ち位置にもプラスの影響が生まれたそうです。

増村「地方に移住するというと、都落ちのイメージがあるかもしれませんが、私はむしろ逆だととらえているくらいです。編集という仕事で半歩先、一歩先の実践者を追いかけてきたわけですが、自分自身も実践者側に立つことができている。そのお陰で、仕事の幅と質も変化があると感じています。」

仕事の時間も減り、編集者としても幅が広がったという増村さん。移住したことにより支出面でもメリットがあったそうです。

増村「東京と長野の暮らしで一番異なるのは、暮らすためにかかる費用です。移住前の東京・神楽坂の賃貸マンションの家賃相場は2LDKで20万円くらい、現在のトレーラーハウスの家賃は1万円。さらに、家電製品は照明と洗濯機くらいしか持っていなので、月の光熱費は5000円台に抑えられています。もちろん収入がないと生きてはいけませんが、そんなに稼がなくても『何とかなる』と思えるようになって、ずいぶん楽になりましたね。」

都市部を離れれば、1万円の家賃は決して珍しいことではありません。
暮らすために働く、生きるために稼ぐ、という価値観から離れ、「稼がなくても何とかなる」と思えれば、新しい挑戦もしやすくなるのではないでしょうか。

ひとりの母として、移住先での子育て

エディター・ライターの増村さんは、一児の母としての顔も持ちます。増村さんは長野に移住して子育てが楽になったそうです。

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増村「私には4歳の娘がいるのですが、移住して、遊びかたが変わってきたんです。私が草刈りをしていると、木の棒を持って来て、草を刈る真似をして遊んだり、丸ノコで木を切っていると、じーっと見ていて、切れ端を運んでくれたり。」

増村さんのお子さんの通う保育園には、広い園庭のほか、大きな畑もあるそう。みんなで収穫をして、その野菜がその日のお昼ご飯に。自然が舞台なので、時にはどろんこになって、虫取りやどんぐりを拾ったりと、のびのびと遊んでいるようです。

また週末には、集落のみんなで集まって道路端の草刈りをしたり、お米の収穫時には、作業を手伝うとお米を現物支給でもらったりと、地域のなかで生きている実感を感じているそうです。

子育てには近所に住む人の協力が欠かせません。大都市とは違い、ご近所の方に見守られながらならば安心して子育てもできそうです。

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働き詰めの20代と暮らしの変化

増村さんの暮らしや働きかたはとても自然体で、バランスが取れているように感じますが、過去には働き詰めの時期もあったそうです。

増村「Web制作会社で働いていた20代は、毎日家に帰るのは深夜3時や4時が当たり前。会社の椅子を並べて眠るときもありましたし、家に少しだけ戻って、仮眠をとってまた会社に戻る日々。土日も出社していたし、食事はほとんど外食。仕事はやりがいがあったものの、どこか気持ちが満たされず、次第に、暮らしを立て直さないといけない、と考えるようになりました。」

28歳の時、増村さんは「暮らしを思い切って変えよう」と思い、新築マンションを購入しました。仕事は変わらず激務でしたが、マンションの購入を機に、「ご飯をちゃんとつくろう」「着ない服、いらないモノは捨てよう」と、少しずつ暮らしを変化させていきます。

増村「モノの整理していくうちに、モノを持たない暮らしが楽しくなって。持っていると気がつかないけど、なかったら、あるもので工夫するようになるんです。最終的には、例えば洋服だと下着は2セット、シャツも2枚、半袖のTシャツも2枚、靴は、長靴や冠婚葬祭用の靴も入れて4足というところまで、徹底してモノを選びました。」

移住後も増村さんは同じような生活を続けているそうです。28歳のマンション購入を契機に生活を変化させていった増村さん。2014年に移住を決めた背景には、ある空間制作ユニットとの出会いがありました。

空間制作ユニット「グランドライン」との出会い

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その後、転職や出産などを経験した増村さんは、東京でフリーランスエディター、ライターの仕事を始めます。移住をしたのは2014年末。移住するきっかけになったのが、空間制作ユニット「グランドライン」との出会いでした。

長野県諏訪郡富士見町に拠点を構えるグランドラインが建築に使う資材は、住宅や納屋、工場などに使われていた古材。彼らはその資材の風合いを活かし、空間や家具をつくります。

編集の仕事を通して彼らと知り合った増村さんは、グランドラインの仕事に、大量生産、大量消費の社会に対するカウンターカルチャーとしての『生きるためのリテラシー』を感じ取ったと言います。

増村「編集者としても個人としても、ほしい未来を自分たちでつくっていくためのヒントはどこにあるんだろうと探していました。それはパーマカルチャーにあるのか?それとも自家発電などのオフグリッドな暮らしにあるのか?家を小さくしてモノを持たない暮らしにあるのか?もちろんひとつではありませんが、そうしたいろんな方向性を探っていた時に、グランドラインのつくり出す世界に出会って、これだと感じたんです。」

グランドラインとの出会いが決定打になり、増村さんは長野県に移住を決めました。
20代の頃の仕事に追われる毎日。出産と転職。様々な経験を経て、増村さんは自分の望む生き方をつくりあげています。

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移住を選択した今、住む場所の持つ意味を聞いてみると、増村さんはこう言いました。

増村「私は移住を選択しましたが、必ずしも移住しなくてもいいと思うんです。自分にとってのローカルというか、故郷というか、そういう場所はいくつもあってもいい。例えば、地方に、もしくは都市部に暮らすのは夏の間だけでもいいし、何年だけと限定してもいいし、1年おきに生活の拠点を変えてもいい。自分にとってここはローカルだと思える場所がいくつかあるって、楽しいと思うんですよね。その分、人とのいいつながりが増えるということですから。」

移住したらその土地に骨を埋めなければいけない、と考えている人は多いのではないでしょうか?しかし、その土地に住む人とつながりを作る、その延長線上に移住がある、と考えれば気軽に別の土地に住むこともできそうです。

最後に、理想の暮らしを手に入れるコツを増村さんに聞いてみましょう。

増村「実験的な暮らしをしやすい社会になってきていると思うので、本当に大切にしたいことを、大切にすればいいだけだと思うんです。そしてもっと冒険しないと。こっちのほうが面白いと思ったら、面白いほうに行ったらいいじゃないですか。自分の気持ちに正直になって、一歩目を踏み出したら、もう目の前に理想の暮らしがあるはずです。」

理想とする暮らしは誰かが教えてくれるものではありません。それを教えてくれるのは他ならぬ自分なのです。

写真提供:増村 江利子

続きはYADOKARI 編集の本「アイム・ミニマリスト」で

増村さんのより詳しい暮らし方は2015年11月27日(金)に三栄書房から発行された「アイム・ミニマリスト」の中で紹介しています。
今回ご紹介した増村さんは、この書籍の中で取材させていただいた方のひとり。「アイム・ミニマリスト」は、YADOKARI が日本各地を取材し、編集を務めた書籍で、greenz.jp編集長・鈴木菜央さんのロングインタビューや、YADOKARI 発のタイニーハウスINSPIRATIONができるまで、など日本各地で始まっている小さな暮らし方をご紹介しています。
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