まるで年輪?廃校になった校舎跡に建てられた幼稚園「Kindergarten in Guastalla」
地震国日本から見ると、欧州はあまり大地震が起こるイメージがないのではないだろうか。しかし2012年5月、イタリア北部はマグニチュード6.0の大地震に見舞われた。そのせいで多くの歴史的建造物が損壊の被害にあったという。
そしてもちろん、被害にあったのは一般の建物も同じ。グァスタラ地区にある二つの小学校は、地震で校舎が崩れ廃校となってしまった。けれど、その3年後である2015年、その学校は全く新しく生まれ変わった。
幾層にも年輪のように重なって見えるウッドフレーム、そして楽しそうに遊ぶ幼児たち。そう、廃校は建築デザイン会社Mario Cucinella Architectsの手によって全く新しいデザインの幼稚園として再スタートしたのだ。
ウッドフレームは実は重なってはおらず、等間隔に設置されている。横から見るのと前から見るのでは、全く印象が異なるが、1400㎡もある広い敷地の外と中、校舎と校舎を自然にひとつにする心理効果がある。
そしてこのウッドフレームの木材もリサイクル材を利用したりと環境負荷を低くしているが、建築家によると建物の暖房効率を上げる効果があるのだとか。さらに恵まれた日差しを利用してソーラーパネルから電気を作り、雨水を屋上ガーデンや水洗トイレに活用したりと、エコ仕様になっている。エネルギーや物資の循環を幼児のうちから学べる理想的な環境だ。
そればかりではなく、教育学や子供の成長に関する研究を反映させ、採光や色、音響などは幼児の五感の成長を促す構造が心掛けられているという。言われてみれば、ふんだんに取り入れられる光や思わず触りたくなる木のカーブは、子供の感覚を大いに刺激しそうだ。
現在は0歳から3歳までの120人の子供たちが在籍しているという。彼らにとってこの幼稚園は、幸福な幼年期のシンボルとして記憶に残るのではないだろうか。
(文=倉田直子)