第24回:ILAND identityが出来るまで(後編)女子的リアル離島暮らし
『未来住まい方会議 by YADOKARI』をご覧の皆さん、こんにちは。小説家の三谷晶子です。
さて、先日、第23回で私が2015年11月に立ち上げた加計呂麻島をテーマにしたアパレルブランドILAND identityについてをお伝えしました。
今回は、ILAND identityのWebカタログを作った理由をお伝えしたいと思います。
島で暮らす女性を、その女性が住む集落で撮影
モデルとして登場した私を含めた6人の女性たちは、全員、加計呂麻島在住の移住者。カメラマン、webデザイナー、スタイリストもこの仕事をお願いする前に加計呂麻島を訪れてくれた友人たちです。
従来のアパレルのカタログは商品を見せることがメインの目的となるものが多いと思います。しかし、わたしの目的は、実際に、島で暮らす女性たちのそれぞれの思いや、まるごとの空気感を表すことでした。
島出身の旦那さんと結婚した人もいれば、カップルで移り住んだ女性も独身者もいますが、全員、現在、島に住み、それぞれの形で島をいいところだと思っていることは同じ。
私は、それを、まずは、表現したいな、と思ったのです。
授乳しながらの撮影、ビーチでのランチ
モデルを引き受けてくれた皆さんは、小さいお子さまのお母さん。撮影時には、旦那さんやモデルの女性のお父さま、お母さまもいらしてくださり、撮影中にお子さまの面倒を見てくださいました。
撮影がひと段落したところで授乳タイムを設け、お昼時にはスタイリストを担当してくれたスタッフのシェフでもある旦那さんが作る食事をビーチで囲みました。
小さなお子さまがいる中、個人カットと集合写真の撮影で各日約数時間、拘束されるのは、なかなか大変なことです。
けれど、快く引き受けてくれたモデルさんたちと、そのご家族、また、撮影を許してくださった各集落の区長さんにも心から感謝しています。
船を出さないと行けないビーチや、ヨットでの撮影もあり、その際は、漁師の方、またヨットでガイドをしているBLUE WATER ADVENTURE’Sさんにも大変お世話になりました。
私もこうした撮影は初めての経験で、至らない点が数多くありましたが、皆さまのお力を借りて、何とか形にすることができました。
Webがオープンして、いくつか、ご感想をいただきました。
「みんな、潔くて、幸せそうで、とっても美しい」「涙がでた」「島の感じそのままにドラマチック」
こちらは島を訪れてくれた東京の友人たちの言葉。
「大阪の島に戻ってきたいけどできない友人に見せたい」「みんな、本当にきれい。モデルとして自分も出たい」「移住者が何かを始めるといろいろ言われるところもあるけれど、作品を見てわかった。愛がある」
こちらは、島に住んでいる人たちの言葉。
もちろん良い意見だけではなく、これからの課題はまだまだたくさんあるのですが、頂いて嬉しかったご感想を掲載させていただきます。
島だからこそ、できること
私は今まで、主に東京の取引先を中心に、文章を書いて島で暮らしてきました。その私がいきなり、島でアパレルブランドを立ち上げる、というと、傍から見ると、何を始めたのかさっぱりわからなかったと思います。
しかし、こうして、島在住の女性たちと一緒にものを作ることで、「遠い」「不便」「何もない」「お洒落もできない」「面白そうな仕事もない」という従来の離島のイメージを、少しでも変えられたらと思ったのです。
加計呂麻島は小さな商店と少々の飲食店以外、何もない島で、私はそのままで、むしろそれこそがいいと思っています。
けれど、離島ゆえに洋服を手に取って買うことができない女の子や、かわいらしいものに興味がある女の子に、「島にいても、いや、島だからこそ、作れるしできる」ということを感じてくれたらいいな、と思いました。
昔はできなかったことが、今はできる。
変わりゆくことは、時に切なさや軋轢も生むけれど、それでも、止められない流れなら、夢や可能性を信じてその波に乗りたい、と私は思います。
商品は完全受注生産のブレスレット以外はWebショップのほか、加計呂麻島のいっちゃむん市場というお土産や生鮮食料品を買える場所、また、加計呂麻島展示体験交流館という加計呂麻島のお祭り、諸鈍シバヤについての展示や、貝殻細工体験などを行い、加計呂麻島の名産品を販売している施設に置かれています。
商品を手に取って見たい、と思う方はぜひ、そちらにいらして、私の商品だけではなく、加計呂麻島のさまざまな名産品やグッズをご覧になってみてください。
未来の正しさは、いつでも、今はわからないものだと思います。
そもそも、何が正しいのかも、私にはわかりません。きっと、それぞれに、それぞれの立場で正しさがあるのではないでしょうか。
正しさを握り締めて振りかざすのではなく、いろいろあっても「一緒にやっていこう」という姿勢。
ブランド名であるILAND identityという言葉には、「私の島」「私の世界」、「同一性」「個性」「国、民族、ある特定集団の帰属意識」「特定のある人そのものであること」「あるものがそれとして存在すること」
という意味を持たせました。
私は、「私の島」「私の世界」も、「個性」も「同一性」も「帰属意識」も「存在すること」も、全てがひとつであり、全てが一緒だと思っています。
隔て、対立を生むのではなく、「一緒にやろうよ」と手を取り合う。
この島に住みながら、さまざまな形で、私はそれを続けていけたらと思っています。