団欒のタイムカプセル・軽井沢町・土地490坪
東京オリンピックを2年後に控え、日本は好景気に沸き、人々は来るべき豊かで明るい未来に向かって意気揚々と進んでいた。時は1962年。当時の空気感を反映してかしないか、軽井沢のこの別荘にも、おおらかさや遊び心といった、「大人の余裕」が随所に感じられる。
エリア:長野県北佐久郡軽井沢町大字追分字五郎田 価格:2,200万円
建物面積:22.65坪 敷地面積:490.35坪
間取り:3LDK
コの字型間取りで昭和の団欒を取り戻そう
こちらの別荘、間取り図を見て頂くとよくわかるのだが、中心になる8畳の和室を各個室がぐるりと囲むように配置されている。8畳の和室の北側は土間になっており、低めの応接セットやダイニングテーブルを置いてもまだ空間に余裕があるほどだ。土間と和室で1つの空間として考えると広く感じられるだろう。
土間の反対側は板張りの廊下に続いて、6畳の和室が1つと襖で間仕切りされた4.5畳の和室が二間。それぞれ正面の襖を開ければリビング代わりの和室とつながり、建物全体が1つの大きな空間に変わる。各自が思い思いの場所でくつろぎながら、ごはんや酒宴の際には掘りごたつのある真ん中の和室に自然と集合する。自然にして周到な「団欒」への動線がこの間取りに潜んでいるように思う。
朝のひと時、外を眺めながらコーヒーを味わう土間のテーブル。午後のおだやかなひと時、土間に足を下ろしておしゃべりの花を咲かせる和室の縁。お手伝いも、つまみ食いも、誰でもウエルカムな回遊できる台所。板戸を開け放てば縁側のように使えるウッドデッキとつながった奥の和室、そして巨大な磁石のように、皆を引き寄せる8畳の和室。
ひとり静かに過ごす別荘、ではないかもしれない。そこにいる者たちと交わずにいられない、メンドくさいんだけど、どこかほっとする。そんなノスタルジックな「昭和の団欒」風景を再現する別荘と言えるかもしれない。
今見ても新鮮、デザインのデティールへのこだわり
人を孤独にさせない空間のデザインもさることながら、この別荘には現代の私たちが見ても斬新に感じられる実験的デティールが満載だ。ほぼ正方形の家の形に対して斜めに張り出した大屋根や、丸石のタイルのように土間の床に埋め込まれた切り株、ちょっとレトロフューチャーなセンスも感じられる大理石風の丸い風呂。
デザイン性だけを重視した建築は月日の経過とともに陳腐化していくのがオチだが、この別荘に関しては築後50年以上経った今でも十分にカッコよく、ゾクゾクさせてくれる。相当の時代を経ても良いと感じられるものは、できればこれからも長く残っていて欲しい。残すべきビンテージ別荘として、末永く慈しんでくれるオーナーに渡ってくれればいいなと思う。
場所は軽井沢町の追分エリア。最寄りのしなの鉄道線信濃追分駅から車で2.1km、最寄りの小学校や保育所も1.2kmと、車があれば普段の生活に必要な施設へのアクセスは十分だ。約490坪の広い敷地でのびのびと子育てする家、仲間とのシェア別荘、古民家カフェなど、あなたのアイディアでさらに魅力ある場所へと変えていって欲しい。