【未来を感じる住まい方】vol.3 Chako Amano さん「エコビレッジは、未来の暮らし方のモデル」
この連載では、YADOKARIファミリーや、今話題の方々にとっての「未来の住まい方」を連載でお届けしています。今回アンサーしてくれたのは、ニュージーランド(以下NZ)在住のChako Amanoさん。「エコビレッジ」というコミュニティの在り方に、理想の未来を見出したようです。
【答える人】
Chako Amanoさん 「未来住まい方会議」ライター
東京都出身。1990年、NZオークランドに移住。以後、オークランド大学で日本語教育に携わる。日本語教師のキャリアと並行しながら、ホリスティック教育を実践・研究し造詣を深めている。
Chako Amanoさんが執筆した主な記事
オーストラリアの草原に佇む週末の家。完全オフグリッドの「Pump House」
森の中で、瞑想にふける。ヨガの先生がDIYした「Keva Tiny House」
価値観を共有する人々が、助け合いながら暮らす
Q:あなたの住まいについて教えてください。
NZ・オークランド市のティティランギという場所にある、一戸建ての家に住んでいます。
Q:今の住まいを選んだ理由を教えてください
既に独立している娘2人が、まだ子どもだったときに通っていたシュタイナー学校が近かったために購入しました。彼女たちが卒業後も引っ越さなかったのは、私の職場がある街の中心まで車で30分という利便性と、海と山に近く空気がきれいだという快適な環境がそろっていたからです。
NZでは住居のほとんどが一戸建てなので、あえて一戸建てを選んだという意識はありませんでした。でも、庭のある生活ができているので、購入する機会に恵まれて幸せです。
Q:住まいについてのこだわりについて教えてください
自然への負荷が少ない住まい方をしたいと考えています。我が家は一世代前に、地元の木をふんだんに使って建てられた家なのですが、丁寧に修繕しながら住んでいます。多少費用がかかっても、天然の質が良い材料を選ぶようにしています。土壁、純毛のじゅうたん、綿100%のブラインド生地などこだわって選びました。
家具はあまり持っていませんが、職人さんが丁寧に作ったものを中古で買うことが多いですね。また、最近はこの国でもエアコンの暖房が普及してきましたが、私は薪ストーブのある暮らしが大好きです。
Q:現代の「住まいの常識」で変わってほしいと思うことがあれば教えてください
変わって欲しい常識、たくさんありますよ。例えば、オール電化のように便利であればあるほど優れているという常識。古いものより新しいものの方が上という考え方や、家を20年や30年で建て替えなくてはいけないという固定観念。土のような自然の素材よりも、コンクリートや腐らない素材の方がいいという思い込み。塀で囲んで、外から見えない方が安全だとする認識。土地や家を個人で所有する方が、みんなと共有するよりいいということなど、挙げていけばキリがありません。
Q:あなたが思う「未来の住まい」について教えてください
まず現代の都市に集中している人々が、地方に散らばり、皆が土に触れた生活ができるようになること。そこでは、身の丈サイズのシンプルだけど素材も造りもいい家を、丁寧に修繕しながら長年住めるのが理想的ですよね。持ち物も必要最小限に留めて。けれど庭には果物の木があり、簡単な野菜やハーブは畑で作る自給自足の生活ができるような。
そして家には縁側があって、近所の人たちが自由に出入りできるように塀も無いほうがいいですね。そうすれば子どもも、近所の大人たちに見守られながら、自由に外遊びができるでしょう。そういう子どもたちの姿を見たら、一人暮らしのお年寄りも寂しくないと思います。
さらに村やコミュニティの中心には、地域住人なら誰でも利用できるコモンハウスがあったりとか。時には住民同士で持ち寄りの食事をしたり、節水のために洗濯機を共同で使ったり。
価値観を共有する人々が、お互い助け合い、学び合いながら暮らす。そういうスタイルが「未来の住まい」だと考えています。
Q:あなたが「未来の住まい」を感じさせる場所やアイテムがあれば教えてください
うちの近くにある「Earth Song」というエコビレッジは、未来の暮らし方のモデルになるのではと思います。
日本にエコビレッジがあったら、縁側や畳の部屋があるような、より開けたものになるでしょう。それでも、NZの人々のオープンで率直な人づき合いや、透明で公平な運営などからは、学ぶことが多いと思います。
シンプルでサステナブルな生き方ができるエコビレッジ
「エコビレッジ」という言葉は、日本ではまだなじみの薄いかもしれませんが、サステナビリティ(自然環境などの持続可能性)を大事にした生活を目標として、それを実践するコミュニティのことを主に意味しています。
ムーブメントの前身は1960年代頃には既に始まっていましたが、現代のカタチに近づいてきたのは1980年代後半から90年代にかけて。コミュニティ内では住民が協力しあいながら有機農業を行い、風力発電や太陽光発電などの自然エネルギーを活用しているところが多いようです。
そして調理にかけるエネルギー消費を少なくするために、コミュニティ全体で一緒に調理し、食事を共にするビレッジもあるのだとか。
通常のご近所づきあいよりも関係性が深そうですが、「サステナブルな生活を心がける」という共通の理念があるので、お互いへの理解も深まりそうですね。自然保護の観点のみならず、現代社会ががんじがらめになっている「常識」を脱ぎ去りゆるやかなコミュニティを築けるエコビレッジは、確かにAmanoさんが語る「未来の住まい」に近いかもしれません。
自分が目指すライフスタイルと同じ方向を見ている人々とコミュニティを築けるエコビレッジ。もしみなさんが新しくビレッジを作り上げるとしたら、どのようなビレッジを作りますか? 住民同士の交流の場は設けますか?家は長屋のようにするか、それとも独立した家を何棟か建築しますか? 日本各地に、個性的なビレッジがいくつも誕生したら素敵ですね。この記事が、そんなビレッジ誕生のきっかけになれば幸いです。