気付けばみんなのサードプレイス・700万・鳴沢村
とっておきの隠れ家なのに、気付けばみんなのサードプレイス。居心地いいって、恐ろしい。
エリア:山梨県南都留郡鳴沢村字富士山 価格:700万円
建物面積:17.78坪 敷地面積:141.87坪
間取り:2LDK
ダイニングキッチンが主役の外に開かれた家
三方を道路で囲まれた58㎡の小さなコテージ。富士山麓北側に位置する緑深い別荘地の一角だ。敷地の木々とシルバーグレーの建物は年月を経て一体化し、遠目にはそこにコテージがあるとは気が付かないだろう。
気配を消したかのような静かな佇まいとは裏腹に、ここには自然と人が集まり、離れがたく感じるような、不思議な吸引力が秘められているのだ。
たとえば玄関よりも手前に位置する半階下がったダイニングキッチン。ここを素通りして玄関に向かう人などいないに違いない。壁の二面が掃き出し窓になっていて、中にいても誰が来たのか一目瞭然だ。訪れる方も玄関みたいにかしこまらずに、気軽に立ち話をはじめてしまう。
ちょっと立ち寄ったつもりが「メシ食ってく?」になり、何故か最後は「泊まってく?」になる。結果、隠れ家のつもりが週末はいつも誰かいて…。そんな光景がリアルに思い浮かぶなら、最初っから仲間内でシェアの提案をしてしまおう。
少しづつずれてつながる小さな居場所
ダイニングキッチンは玄関のある10畳の洋室と階段でつながっている。その洋室からさらに半階上がった2階にバストイレなどの水回り、造り付けの本棚のある6畳の洋室と8畳の和室が続く。部屋同士がゆるくつながるスキップフロアの家である。
つながっているのは部屋だけでない。なんと2階の和室からも外のテラスに直接出られるのだ。天気のいい日はおのずと外に行きたくなる、用意周到なテラス誘導動線に舌を巻く。
適度にかまわれて、適度に放置される理想的空間
夏場の人気はもちろん広めのテラス。パラソルの下はいつだって争奪戦だ。夜はそのままこのテラスがバーベキュー会場になり、仕込みを終えた材料の山がキッチンから次々に運び込まれていく。
和室のデッキで談笑する人あり、テラスの手すりにもたれながら話し込む人あり。キッチンでは仕込みが終わって一息ついた仲間の乾杯がはじまる…。
この家の魅力はゲストひとりひとりが自分の心地いい居場所を見つけられること。適度にかまわれて、適度に放置されるような、いつものカフェに似た心地よい空間。その魅力を知ってしまったら、しばらくここから離れられそうにない。
誰かを呼んで、食べて、飲んで、語るにふさわしいコテージ。唯一の懸念材料は、大人に魅力的な空間は子どもにとっても魅力的ということ。スキップフロアとテラスのつながりは、鬼ごっこの無限ループ空間でもある。