オンラインから飛び出そう!テック界の成功者がDIYで広げる森のコミュニティー「Beaver Brook」

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2004年、You Tubeに先んじて動画共有サービスをローンチし、一躍テック界の寵児となったネット起業家のザック・クレイン。後にvimeoを売却し、経済的にも成功者の仲間入りを果たす。オンラインコミュニティーをいくつも構築した後で、次はオフラインに自分の欲しい居場所を作る番だった。

好きな仲間と好きな物を作って遊ぶ居場所が欲しい

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82年生まれのデジタルネイティブは、その実ボーイスカウト最高ランクのイーグルの称号を持つタフガイだ。夢は自然の中に手作りの小屋が立ち並ぶコミュニティーを作ること。最適な土地を求めて、ニューヨーク郊外へと足を延ばす日々が続いた。

運命の土地は東京ドーム4個分
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ある日友人とアッパーデラウェアを訪れたザックは、溺れるほどに豊かな緑とデラウェア川をたゆたう霧の風景に出会う。美しく、時にワイルドな表情を見せる理想のロケーションに、彼の心はいつになく高鳴った。

調べてみるとそう遠くはないユランという町で、50エーカー(東京ドーム約4個分)もの広大な森が売りに出されているという。それはとても素敵なセレンディピティだった。かくてザックと20数名の仲間たちは、ニューヨークから2時間ほど離れたホワイトパインの森にいた。

人生で最高にハッピーな日々の始まり

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以前のオーナーが残した愛すべきスコット・キャビンを拠点に、まずは点在する離れを掃除し、木製の露天風呂を組み立て、薪用に木を切った。洗い物に使う水を汲むために、小屋と小川の通り道も整備した。キャビンには水も電気も電波も届かない。やらなければならないことは山ほどあった。

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Clearing from Zach Klein on Vimeo.

ハードな労働の後はラム肉を煮込んだシチューが待っている。いい匂いが漂いはじめる頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。ウィークデーはそれぞれの世界で輝いている大人たちが、ここではヘッドライトの明かりを頼りに食事を楽しんでいる。マンハッタンでは決して見られない光景だろう。

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夜は川辺で露天風呂に浸かり、18㎡の小さなキャビンで皆一緒に暖かい毛布にくるまって眠った。ここでは誰がミュージシャンで、誰がアプリのデザイナーかなんてどうでもいいことだ。仲間の寝息を聞きながら、ザックは満ち足りた気分で眠りについた。

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1万ドルの予算で作った斜面から飛び出す小屋

敷地を流れる小川から「ビーバー・ブルック」と名付けられたコミュニティーに、ひと際目を引くモダンな小屋がある。ザックの元ルームメイトのブライアンとその妻のグレイスが、自分たちと仲間の力で完成させたクールな隠れ家だ。

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最初に考えたキューブ型は斜面では擁壁が必要になり、予算も技術も2人の手にあまる。ブライアンが建築家の兄弟に相談したところ、周囲の木を支柱に使い、斜面から6mも突き出たドラマティックな形の小屋を提案された。

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応援に来た彼らの友人は、小屋のスケッチと説明だけでは何がここで起こっているのか見当もつかなかった。しかし作業を数回繰り返すうちに、突然視界が開けるような瞬間があるという。それはビーバー・ブルックを訪れる者にとって共通の感覚だった。

自然の恵みがもたらす豊かな遊びの時間

確かに自分の手で何かを生み出すことは楽しい。しかし週末ごとに遠く離れた森の奥まで仲間が集う原動力は何だろう?それはビーバー・ブルックのもたらす遊びの豊かさに他ならない。

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夏の昼下がりは小川の岩場で子どものようにはしゃぐ。川べりの露天風呂はとっておきの贅沢だ。ハイキングに出かけて自分だけのお気に入りのスポットを見つける楽しみもある。新人を待ち受けるサウナの後の雪中ダイブは、ザックお気に入りの大みそかの恒例行事となった。

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そこに愛がなければ良い物は作れない

2010年にビーバー・ブルックが始動して以来、コミュニティービルドによってさまざまな作品が生み出されてきた。その中でも絶好の撮影スポットである吊り橋は、皆に愛され、ここでの暮らしになくてはならないものになっている。初めて橋を渡る人々の喜びや驚きは、今も作り手たちを幸福な気分にさせてくれる。

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成功の裏には手痛い失敗もあった。デザインソフトを駆使して建てた大きなバンク・ハウスに、ザックは周囲との違和感を感じ取った。机上のデザインだけでは真の建築は作れない。土地に深くコミットし、解決すべき問題が作り手の間で共有されたとき、その場に最もふさわしい形が見えてくることをザックは吊り橋から学んだ。

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シェアコミュニティー維持の秘訣

当初限られた仲間内のユートピアだったビーバー・ブルックは、日本や北欧の木骨造に造詣が深いトム・ボナミチを迎え、アーティストのレジデンスやフォークスクールの役割を担うようにもなっている。毎年開催予定の小屋のワークショップには、遠くヘルシンキから足を運ぶ生徒もいるそうだ。

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ビーバー・ブルックにかかる保険や税金は、所有者であるザックと妻のコートニーが支払っている。しかし年に100人以上ものゲストやメンバーが訪れるようになり、コミュニティーの維持のためにも月単位の使用料とルールを決めることにした。

もちろん宿泊料は快適なバンク・ハウスで150ドル、敷地内のキャンプならどこでも75ドルという良心的なものだ。彼らはここで商売をしたい訳ではない。コミュニティーのマネタイズには賛否両論あるだろうが、適正な収入によって活動が永続的になり、より多くの人々にビーバー・ブルックでの体験を伝えることができる。それはむしろ歓迎すべき変革なのかもしれない。

取り返しのつかないことでないならやってみよう
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ビーバー・ブルックで何か新しい事を始める時、守るべきモットーはたった1つ。
「やりたいことが取り返しのつかないことでないならやってみよう」。

このシンプルなルールの下、週末にシェフ見習いのメンバーがパン焼き窯のDIYプロジェクトを取り仕切る。バンク・ハウスのリネンにメンバー1人ひとりのイニシャルを刺繍するボランティアもいる。参加者がコミュニティーの運営を自分事としてとらえることで、彼らのユートピアは進化を続けていく。

デジタルネイティブ世代のコミュニティーとは?

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「みんなを説得して、何か大きなことをやってやろうって気にさせるのが彼の特別なスキルなの」とは件のグレースの言葉だ。ブライアンとグレースに小屋をDIYすることを勧めたのもザックだった。イーグル仕込みのリーダーシップは仲間の心に火を点ける。

ザックが仕事の都合でサンフランシスコに拠点を移した今も、他のメンバーはそれぞれのペースでビーバー・ブルックに集い、ネットにアップされた彼らの楽しそうな画像を見て、ザックの方が羨ましくなっている程だ。

ビーバー・ブルックには、かつてのヒッピーコミューンのように強い連帯感や帰属意識はない。平日は皆それぞれの場所で暮らし、次は蜂を飼ってハチミツを作ろうなんてワクワクする計画がオンラインで飛び交う。週末や長期の休暇になったらおもむろに現地に顔を出し、自分たちの好きなことを好きなようにやる。そんなゆるい2拠点暮らしのようなスタイルが、今の空気にしっくり来るコミュニティーの姿なのだろう。

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