コミュニティに“あえて”溶け込まない家。胡同の住宅密集地に建つスモールハウス

via: http://www.catalogodiseno.com/

ここは中国北京の郊外、胡同。経済活動が好調でまだまだ開発がどんどんと進む北京とはうって変わりここらは昔ながらの中国の住処がまだまだたくさん残る歴史ある区画だ。

大都市を見ると明らかだが、資本経済が進むなかで、仕事中心となってしまえば、人々の生活は分断され、個人個人の生活となってしまう。積極的にコミュニティに参加しようと努力しなければ、完全に孤立してしまう。

中国では、昔から住処とコミュニティが一体化し、そのなかで暮らしていくという文化があった。しかし、コミュニティで生きることになったとしても、自分自身のスタイルや理想をあきらめる必要はないはずだ。ファンさん一家はそれを実践している家族だ。ファンさん一家が住む、people’s architecture office (PAO)が提供した「プラグインハウス」は、周りと比べて完全に「浮いている」と言える。周りに全く溶け込んでいないのだ。

via: http://www.designboom.com/

歴史ある家々の中にポツンと白いデコボコした物体が、こじんまりと「置いてある」という印象を受ける。しかしそれは悪い意味ではなく、胡同という場所に身を置きつつも、自分たちのスタイルを確立するという意思の表れでもある。

via: http://www.designboom.com/

胡同の大半の家には、個人のトイレや風呂場がない。コミュニティ文化の必然として、それらは全て共同利用なのだ。
「だけど新しく作る家につけたら?」と思われるかもしれないが、この地域は下水システムが全く発達しておらず、そのための工事もかなりハードルが高い。現地に住む人たちにとってはこれは普通のことだが、これは現代的な生活を営むものに取ってはかなりのストレスだ。
ファンさん一家は個人のコンポジットトイレを作るという選択肢を選んだ。これならプライベートも確保でき、環境にも優しい。

via: http://www.designboom.com/

ここに住むことの利点はコスト面にもあるという。高騰してしまった北京の土地に家を建てるより1/30のコストで済むそうだ。この家がプレハブ形式というのも大きなポイント。板と板を組み合わせるだけなので、コスト面だけでなくカスタマイズ性にも貢献している。この家は24時間ほどで建設できるそうだ。

via: http://www.designboom.com/

ファンさん一家の場合は天井を2倍の高さにして「吹き抜け」仕様にした。複雑な幾何学構造をした「吹き抜け」の屋根部分に窓を設置。そこから空の青い光が入り込み室内を明るく照らす。

via: http://www.designboom.com/

室内に入ると、外見同様白々とした壁で清潔感を漂わせる内装だ。スペースは実際かなり限られたものであると言えるだろう。しかし全く「狭さ」を感じさせない。

via: http://www.designboom.com/

家の背後に室内の階段からアクセスできるテラスもあり。プライベートのソーシャルスペースにできる。
胡同は家同士が非常に密集しているため、このスペースは気分転換や息抜きをするのに非常に効果的な場所となっている。このテラスの存在も家の実質的な狭さをカバーしている要素の一つと言えるだろう。

via: http://www.designboom.com/

最近「コミュニティへの回帰」というキーワードや概念が盛んに叫ばれている。それ自体には賛成だが、そのためにはある程度の「自己犠牲」も必要なときもある。そのリスクを最大限抑えるためには、自分のライフスタイルの確立というものが必要だ。今回のファンさん一家のような、カスタマイズ可能なスモールハウスはその手段の一つと言えるかもしれない。

via:
http://www.designboom.com