大きな三角屋根が暮らしを豊かにしてくれる。フランスで見つけたユニークな家
ここはフランスの美しいアルザス地帯にある、ズーゼンドルフという小さな村。歴史ある古い面影が残る村で、この村自体が非常にミニマルだ。この村には、外観も全体的に木製作りのいかにも「昔ながらの家」という家がある。もっとも特筆すべきは、下の部分に比べて非常に不釣り合いでアンバランスなこの非常に大きな三角形の屋根だ。屋根のタイルも全て現地で作られたものを使用しているそうだ。
「liberale d’architeture」のスタジオ「gens」の建築家ギヨーム・エクラーによって建築されたこの家は、総面積は114スクエアメートルほど。現実と虚構が入り混じっているという理由で“ディズニーランド”と名づけられているのだそう。しかし、ファンシーなだけでなく、非常に生活しやすい家になっている。
屋根にすっぽりと隠れている部分が1階部分。南側の庭に向けた壁は全てガラスでできており、外をよく見渡せるだけでなく、外との境目を感じさせない作りとなっている。庭の芝生の上に家から裸足で飛び出したとしても、きれいにデザインされた足洗い場があるため安心して芝生と戯れることができる。
外見は非常に伝統的な家に見えるが、一度中に入れば非常にモダンで快適なライフスタイルが広がっている。ガラスの扉から1階スペースに入ってみると、むき出しの柱や梁には自然の木の幹、木のフレームで構成されている家の構図がよく分かる。
特に大きな屋根の骨格は特徴的。ここまでむき出しの状態で見えるのは普通ならよしとはしないが、建築家が「木の巣」と名付けたこの部分は、幾何学的に入り組んだアートのようだ。
骨格だけの吹き抜けになっているため部屋が広く感じる。
上の三角部分の屋根についている大きな木の扉を開けば、日光をいっぱいに部屋の中に取り込めるため、日中は暖かく、部屋の中が十分に明るくなるのだ。
下の床は、表面を白い漆喰でコートしたツルッとしたコンクリートとブロックセメントを混ぜて仕上げている。薪ストーブを燃やした際に、床全体が温められ熱が家全体に行き渡るようになっている。
室内からガラスを通して外を見れば、屋根の部分が影になっていることもあり、外の緑が非常に鮮やかに目に映る。
普通なら、この大きな屋根の部分を有効活用し、部屋数を少しでも多くするため大部分を2階、もしくは屋根裏部屋として使うことを考えるだろう。しかし、使えるスペースとしては人一人が寝れるほどの小さいロフトのみ。スペースを有効活用するというよりも、スペースをゆったりと使いたいというフランス的なセンスかもしれない。
狭いスペースで機能的に暮らしたいと考えるミニマルハウスとは少し異なるかもしれないが、人生を豊かにするためには、こういった発想や遊び心を取り入れることも必要なのかもしれない。