八丈島~陸上の自然と住まいの話

今回は、八丈島のお話です。

1回目の今回は、陸上の自然と住まいの話、2回目は海中の自然と海を取り巻く暮らしの話。いずれも、たくさんの自然の写真と海の中の動画や写真なども織り交ぜて、楽しく書いていきたいと思っています。お付き合い下さいね。

 

八丈島ってどんな島?


ダイビングとリフレッシュを兼ねて、個人的には初めて訪れた島でした。あまり観光化されていないので、お店や観光地の充実は乏しく、自然と海だけっていうダイバーにはもってこいの離島です。最近は世界遺産になった小笠原諸島に近い島として注目されつつありますが、夏以外の閑散期に訪れる人は、ダイバーか釣り人くらいのものです。

11月でも、日中の気温は20度近くまであって、半袖で過ごせました。沖縄と変わらない感じでしたね。ただ、日が落ちると急激に冷え込むので、寒暖の差はありましたけど。冬のダイビングをしていて、いつも思う事は、太陽が顔を出すと途端に身体が温まる事。太陽の力は絶大!と、仲間といつも話しています。

八丈島は、地図を見ると、真ん中が凹んだひょうたんのような形をしていて、2つの海底火山から成る島です。

IMG_0746
八丈富士

西方には、「八丈富士」。伊豆諸島では最高峰の山で、名前の通り裾野が綺麗に広がった富士山を思わせる外観の山です。写真は近すぎて折角の裾野が見えませんが。個人的には、昼間よりも夕方にシルエットだけ見るのがおすすめ。理由は、山の中腹に牧場があって、部分的に緑が刈り取られていて、あまり綺麗な感じではないから。

東方には「三原山」。今回は、東側には足を踏み入れなかったので、写真等の情報はありませんが、八丈富士同様、海底火山であり、噴火を繰り返して、海上に頭を出して島を作り、現在の八丈島の基盤を形成したと言われています。

つい最近も、小笠原諸島の一部で、海底火山が新しい島を作って話題になりましたが、八丈島も、あのようにして誕生した島なのです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
八丈小島

更に、八丈島の対岸には「八丈小島」という小さな島があります。昔は人が住んでいたようですが、現在は無人島です。しかも、島周辺の波が高い為に、救助が入れない地域として、島内の宿泊や滞在は禁じられているようです。写真を見てもらうとわかりますが、小さいと言っても八丈側から見てかなり近くにある為、存在感抜群です。この島を眺めながら、海へ入って行く時の気分と言ったら!夕日がかかるダイアモンド八丈小島は、絶景でした。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ダイアモンド八丈小島

 

八丈島の住まいって?


OLYMPUS DIGITAL CAMERA

写真を見てもらうとわかりますが、一般の民家は非常に簡素な、もっと言うとプレハブに近い平屋造りの家屋が多いのが印象的でした。台風などの強風対策なのか、半地下のような低めの家が圧倒的に多く、丸石が積まれた塀に囲まれていたり、背の高い木に囲まれていたり。ちょっと沖縄を思い出させるような光景が目に付きました。やはり台風で破損すること、リノベすることを前提にしているんでしょうかね。マンションやアパート、別荘らしき豪邸などは、1軒も遭遇しませんでした。

島では数少ないホテルなども、外壁が剥がれて、一瞬、廃墟?と思うほど古びた建物が多かった。特に外壁を塗り替えるでもなく、窓をピカピカにしてる様子も無く、ホテルだと言われなければわからないほどの建物でした。

島全体の雰囲気から、住居にあまり比重を置いていないのかな?と。目で見た印象で感じただけなので、実際に島民にインタビューすれば、違う答えが返ってくるかも知れませんが。

IMG_0764

でも本来の住居って、このくらいで充分なのかも。基本は、食料を作って食べて、団欒して、お風呂に入って、ゆっくり眠れたら、それでOKなんですよね。いつの間にか忘れてしまっているけど、暮らしはシンプルなほど、満たされるものが多いはず。

一生の稼ぎを注ぎ込んで、新築分譲高層マンションを競り落としても、満たされないものが沢山あるから、癒しだったり、形すらない何かを求めて彷徨う現代人が絶えない世の中。でもここでは、そんな殺伐とした空気は微塵も感じなかった。むしろ自然に包まれる安堵感と空気の美味しさと、匂いと、人の温かさが際立っていた。だからこそ、何かを求める必要もないのかなと。それが暮らしに現れているだけなのかも知れない。

IMG_0760

 

DIYなんて比じゃない


私たちが宿泊した所は、ダイバー専用の宿でしたが、そこのダイビング用器材干場の屋根が、前回の台風で吹き飛んでしまったらしく、屋根の無いコンクリートで囲まれた箱状態になっていたんです。でも、宿の人が上によじ登って手馴れた感じでさっさと屋根を建てていた。手造りなんですか??と聞けば、「どうせまた飛んじゃうから、簡単にね。」と。まるでご飯の支度でもするかのように、1人で淡々と作業を進めていくその様は、DIYなどと呼ぶにはおこがましいような、本能的な作業に見えた。設計図なんてものは存在せず、メジャーも使わず、感覚で木を切って合わせていく様子が、本来の物造りに通じているような、そんな気がした。

IMG_0754
屋根が台風で飛んでしまった器材干場
IMG_0755
手造り感たっぷりの中の様子

大工さんでも何でもないのに、屋根を造るって凄い!と単純に思いました。きっと他の島民の方々も、自分の家が台風で破損した時には、このように慣れた手付きで建て直してしまうのかも知れません。そう思えば、先ほどご紹介した簡素な家屋の意味が少しだけわかるような気がします。あくまで想像の域ですが。

人は皆、大昔は自分の住む家は自分で建てていたのですよね。それが当たり前の事だったのですから。私達の遺伝子の中には、きっとそういう才能が眠っているんですよ。全員に。

 

住まいの原点


話はちょっとそれますが、この間テレビで、山奥に「竪穴式住居」を全財産をかけて建てた、都内に住むサラリーマンの脱サラ人生が紹介されていました。山奥にも関わらず、しかも何の宣伝もしていないのに「見学させて下さい」と色々な所から口コミで人が集まるようになり、自然の流れでカフェを始めたという素敵な話だった。内装も外装も個性的にアレンジされていて、新しい住居としてアリな一例でした。

コンクリートジャングルに疲れ、土の匂いや自然の雰囲気に引き込まれる現代人が増えているのかなと感じた。これからは箱だけじゃなく、東北の「かまくら」のような雪の家や、山の中に洞窟のような家なども、注目されるようになるかも知れない。箱自体も、自然の器になっていくのかも知れない。もしくは、竪穴式住居のような半地下構造の藁葺き屋根の家とか、昔ながらの手法で建てられた家こそ注目されていくような気がする。実際に、そんなお店があったら是非行ってみたいし、自分でも住んでみたいと思う人間がここに1人いるわけで。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

山奥の土地は、利便性が悪くて買い手がいない、なんて今までの概念は、今後吹き飛んでしまうでしょうね。本当に必要とされるものって、どんな悪条件の元にあっても、人が集まるものだと思うから。逆にカリスマ性を帯びるというか。だからこそ古い概念を捨てていけば、今の時代に本当に必要とされるものが浮かび上がってくるような気がします。

DIYもリノベーションも、実は初めからあったもの。というか、原点。

そう考えると、欧米文化を必死に追って来た日本人が、本来の日本の良さに気が付いて、自国の文化を見つめ直して来ているのか、もしくは本能で原点に戻ろうとしているのか。

都心に意味の無い複合施設ビルが何件も建つのに比例して、郊外には昔ながらの家が空き家となり、土地が余っている今、人が本当に必要としているものが都心にあるのかどうか疑問である。

一つ何かに気が付けば、オセロのように次々と状況が一変するような、そんな岐路に立たされている気がしてならない。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

☆次回は、八丈島続編〜海中の自然と海を取り巻く暮らし