インド伝統建築Kerala(ケララ)でモダンな暮らし「Attic Lab」
ここはヒンドゥー教の聖地、インド。その人口の多さは有名だが、国土面積も3.287.263平方キロメートルと日本の約8.7倍の広さを誇り、非常に広大だ。
インドといったらどのような気候を想像するだろうか?
アラブに近いこともあり、砂漠のような乾いた気候をイメージしやすいかもしれないが、ここはその逆で緑が豊かな森の中。豊かな養分を含んだ土壌はしっかりと湿っている。
建築スタジオのAttic Lab(アティックラボ)が制作したこの施設の総面積は46.0平方メートル。音楽やダンスを練習したり、討論の場として、またはワークスペースとして使われることを目的として建てられた。
さて、インドには伝統建築でKerala(ケララ)というものがあり、このプロジェクトではその構造を有効活用している。
このケララの大きな特徴としてまずあげられるのが、傾斜が急な屋根のフォルムだ。これはもともと、インド海から発生する厳しい「モンスーン」から家を守るために考案されたものだ。さらに、熱帯気候に属するこの地域の強く、暑い日差しを防ぐための断熱材としての役割もある。電気的に温度を変えるのではなく、物理的にゆっくりと温度を調整して、暖かな空気が地面から立ち上ったとしても、この特徴的な屋根で軽減されるのだ。
また、熱帯気候の湿気や虫から守るため、まず台座を作り、そこから壁を作り支柱を立てるという仕組みになっている。
屋根の途中に切妻窓があり、上下の両方から「パカッ」と開くようになっている。
世界のバックパッカーの間でも「世界一物価が安い」ともっぱらの噂のインドでは、プロジェクトに使える予算も限られている。そこで、予算を抑えるために、短期間で完成するよう事前によく計画して建築にとりかかり、建築期間は約2ヶ月ほど。素材としてはベニア板を中心とした簡素な作りを採用した。通常のケララは硬い木材を用いて屋根のフレームを作り、その屋根の斜面にタイルを敷き詰めるようにしてつくられるが、今回はそういう理由から他の素材を使っている。
二次使用のラテライトやリサイクルの鉄、テラコッタ、掲示板、MDF、ベニア板、ガラスやGIシートなどの素材も使用している。作りを簡単にしたことからメンテナンス性も上がり、持続可能性も向上している。
こう聞くと、非常にごちゃごちゃとした内装をイメージするかもしれないが、写真の通り、内装はスタイリッシュで洗練されている。この写真を見ただけでも、いますぐ仕事に取り掛かりたくなるような雰囲気を感じ取れる。
室内から見渡せる緑あふれる風景は、ラグジュアリー感あふれるリゾートを彷彿とさせ、素材の安っぽさは微塵もない。
この建物内の全てのスペースは、1階と屋根裏スペースの2層に分かれている。このような作りのおかげで、例えば、ワークスペースやレジャースペースなどと分けることができる。
ここが「屋根裏部屋」に発想を得たスペースだ。
上で述べたような機能の他に、この三角の屋根は視覚的にも非常に優れたものになる。屋根を支えるたる木がむき出しとなり、傾斜の激しい屋根はシンプルに美しく圧巻の存在感。
屋根の三角形がそのまま壁となっているので、壁の部分の素材の節約になる。重い素材を使う必要もないので、コストも削減できる。
このケララは北と南に向くように建てられている。南側には木が植えられており、強い日差しをブロックしてくれる。北側はリラックス部屋となっており、穏やかな風が吹き込み、柔らかな光が差し込む。
今回の例では、インドの伝統建築ケララを現代風にアレンジしたものと言える。このような昔からの知恵を建築に取り入れれば、たとえ安価でもそれ以上の価値を持つものを建築することができるのだ。
日本ではおそらく、まだあまり知られていなかったであろうこの「ケララ」から、何か学ぶことができるかもしれない。