コルク製の庭先作業部屋「London Couple’s Backyard Studio」

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ここはイギリスの首都ロンドンの、とある家の庭先。
イギリスはもともと「庭文化」が豊かな国だ。世界的大都市ロンドンには、数多くの公共公園が点在しており、そこに皆が集うという文化が根付いている。これは個人レベルでもいうことができ、各家庭に小さな庭が付いているのが普通で、それぞれが毎日庭の手入れを楽しむという文化があるのだ。

現在のミニマリズムにおける「スモールハウス」のような言葉ができる前から、イギリスでは「Shed」という「庭にある小屋」という英単語があった。では、実際にそのようなスモールハウスを立てることができるのかどうかと問われれば、それはまた別の話だ。
無論、世界の三本指に入るような大都市の家の庭先に、建てることのできるスモールハウスのスペースは限られている。

そんな状況の中、Surman Weston(サーマン・ウェストン)というロンドンにベースを置く建築スタジオが、音楽家と裁縫師のカップルのために、お互い共有できるワークスペースを庭先に作った。仕事部屋でありながら遊び心に溢れるという、二つの異なる概念を見事に組み合わせることに成功した。

緑に囲まれる自然豊かな環境で、デザインにおけるクリエイティブなアイデアが浮かびそうだ。

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遠くから見ると一見石でできているようにも見える壁、実は使っている素材はコルクだ。
わざわざコルクを使う理由の一つとして挙げられるのが、まずは即断熱材として機能する点だ。もう一つの理由は、もともとコルクが何に使われていたのかを考えれば、自ずと答えが見えてくる。

コルクといえば、真っ先に思いつくのがワインの栓だ。温度ももちろんだが、ワインの風味を保つため、ボトル内の空気を外気と遮断するために使われているコルクは、すなわちどんな天候に対しても耐性を示してくれるのだ。

コルク自体、昔からある素材でアンティークな風合いがあるだけでなく、オーガニックな素材であるため、周りの自然ともぴったりと調和する。もちろん、この素材自体を使うことにより「エコ」というメッセージを発することができるだろう。

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大きな横開きのドアも、オークを使って自然の温かみを感じることができる。完全に開いてしまえば、庭の自然とのつながりを保つことも可能だ。

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中に入ってみても、シンプルでセンスの溢れた作りになっている。内装の壁はカバ材の合板で貼られている。机や棚も含め全てこの素材で統一されており、壁に直接取り付けられる形で設置されている。簡素さの印象の中にスタイリッシュさが見える。

左にはミシン、右にはキーボードやアンプとそれぞれの仕事道具がおいてある。このようなシンプルな作りであるからこそ、置くものによってダイレクトに部屋に彩りや個性を宿すことができるのだ。

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上を見上げれば、非常に大きな天井窓から緩やかで優しい光が差し込む。この自然光だけで、室内は十分に明るく、暖かい。

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二人の机の間にも小さな窓が取り付けられており、仕事の合間の一休みに、周りの庭の様子を見渡し気分転換することができる。

コルクという素材は、普段捨ててしまうような廃材であるが、このように利用していくことで、機能的にも、視覚的にも好影響を持たらすことができる。エコの概念にも合致しており、このような独特なテクスチャが身近にあることで、芸術家のインスピレーションを掻き立たせることもできるのだ。
二人の作業テーブルが、分離されているのではなく、境目なく並んでいるということにも注目したい。

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作業部屋といえば黙々と作業するイメージがあるかもしれない。しかし、クリエイティブな作業においては、オープンなスペースでコミュニケーションを取ることで意外なアイデアが浮かび、より創造的に取りかかれるだろう。

 

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