トルコとギリシャの国境沿いにあるプレハブハウス 「cabin on the border」
ここは東洋と西洋が切り替わり、そして交わる場所、トルコのイスタンブール。
そこから160kmほどの場所に位置するエディルネという町。ヨーロッパの一国、ギリシャとの国境沿いでもある。そのような場所がら、この建築物の名前は ‘cabin on the border’(キャビン・オン・ザ・ボーダー)と名付けられた。そのまま「国境沿いのキャビン」という意味だ。
建物の総面積は18スクエアメートル、SOアーキテクチャ&アイデアという建築会社が建築した。「明白に自然と接点を持つ」ということが元となるアイデアだ。そこから「不便さ」といった感情をもつことなく、心が豊かになるような生活を送ることができるのだ。
隣近所には家は全く見当たらない。回りに広がる黄色い菜の花、隣に望むのは木々が生い茂る山。あるのはただ美しい田舎の風景のみ。
これはこのキャビンの理念によるもので、自然とのコミュニケーションをとるために作られたからだ。そのため、この美しい谷の周りには、本当になにもない。ガスラインや電気など、便利なインフラストラクチャを犠牲にしている。
ただし、もちろんそのまま不便さに苛むわけではなく、このキャビンはオフグリットハウスとして機能している。
雨水を貯めたり、太陽光や風を利用するために、この建築物を設置する場所にはこだわっている。
中に入れば、小さくまとまったキッチンもあり、しっかりとここで調理して生活をしていくことができる。キッチンの収納棚の上には、よく見ると寝室スペースが。
小さな、薪暖炉もあり、寒い環境でも快適に過ごすことができる。
キャビンの上を見渡せば、小さな屋根裏部屋、と言うよりロフトがあり、誰か訪問者が来たり、友人を招いた時なども寝る場所には困らない。
太陽が光る中、優しく雨が降る不思議な天候でも、ポリカーボネートの窓がそれを防いでくれる。
ベニア板のファサードはパカッと開くことが可能で、それを地面につければそのままテラスになる。このようにすることで限られたスペースを外へと拡張することができ、室内の狭さというものを感じさせなくなる。また、テラスとして完全なオープンスペースとなるため、当初の目的であった「自然とのつながり」というものを最大限に享受することができる。
またこのテラスになるファサードのすぐ内側がベッドとなっており、天気のいい日は窓やファッサードを全開にして日向ぼっこを楽しむことができる。ベットの下にはしっかりと収納場所もあり、狭いスペースを有効活用している。
もし嵐の夜が来たとしても、窓とファサードの両方を閉めれば、元のキャビンに元通り。
通常ならインドアでやるようなことも、このキャビンならオープンスペースで可能だ。
この建物の構造はまるで小型帆船のようだ。つまり、シンプルで持ち運び可能なポータブル。どんな悪天候の中でもするするとその中を切り抜けていくヨットのように、このスモールハウスはどこでも運んでいくことができる。
ラミネート加工された木材をのみを断熱材として使用している点も、海原を進むボートを彷彿させるような構造となっている。
そして、この建築物はプレハブ構造で、これもボートさながらだ。
この建築物をどこに置くかということが、直接そのデザインの一部となっていくのだ。「どこにでも設置できる」ので、わざわざ、トルコとギリシャという東洋社会と西洋社会の瀬戸際に置く必要もないだろう。国境沿いは常に何かが起きる、潜在的に危険な場所だからだ。
しかし、この小型ヨットのようなモバイルハウスなら、そのような場所でも自然の恵みを受けながら豊かな生活を送っていけるだろう。
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