孤独になれる家具。オブジェクトの可能性を拡張するソン・スンヨンのデザイン

via: pinterest.com

韓国人デザイナー、ソン・スンヨンのデザインする家具は、多機能と矛盾、孤独とノスタルジーに彩られています。モノ本来の役目や固有の名前を裏切るインスタレーション・アートのようなオブジェクトたちは、わたしたちの日常感覚を揺るがせたり、安心感を与えたりします。パーソナルな体験から発想された、一見奇妙に見えるオブジェクトが伝えるものについて考えてみたいと思います。

via: materialicious.com

ソン・スンヨン (Seung-Yong Song) は、フランスのESADランスでデザインの修士号を取得。2011年にソウルで、同じくフランスでデザイン修士号を取得したヤン・ミンギョン (Min-kyoung Yang) と、SYデザインスタジオを設立しました。

高級シャンパンのモエ・エ・シャンドン、ヘネシー、ディプティック、ケンゾー、ノボテルなどのデザインプロジェクトに参加し、デザインマイアミ/バーゼルの「未来のデザイナー賞」、エル・デコ インターナショナル デザイン アワード (EDIDA) 、デザインプラスなどの国際的なデザイン賞を受賞。2014年にはフォーブス・コリアの「パワーリーダー2030」にも選ばれています。

via: seungyongsong.com

ソンの作品の中でも建築・インテリアデザイン関連のメディアで話題となったのが、「オブジェクトシリーズ」の一つ、隠れ家チェア「オブジェクト-O」。巨大なランプシェードが提灯のように椅子を包み込んで、自分だけの隠れ家に変えます。喧騒の世界から逃れて孤独を確保したいときや、読書のための静かなプライベート空間が欲しいときには、椅子の上のランプシェードを広げるだけです。

via: seungyongsong.com

180センチ四方・高さ220センチの「オブジェクト-O」は、椅子の部分はシラカンバの木材でつくられ、ランプシェードは生分解性のある韓国紙をUV塗料でコーティングして、光沢のある美しい表面に仕上げられています。

via: seungyongsong.com

「子供のころ、家のあちこちに隠れ場所をつくった思い出があります。テーブルの下、ワードローブや屋根裏部屋の中に基地をつくり、存在するはずもない敵から隠れたような安心感に包まれていたものです。豪華な邸宅などよりも、鳥の巣のように快適に安全なときを過ごせる自分だけの秘密スペースは、人が本能的に夢みるものではないでしょうか」とソンは語ります。

韓国語で「応接間」という意味のオブジェクト「Sarangbang」も、分離・変形・合体するユニークな多機能家具。

via: sydesign.kr

Sarangbangは対をなす2つの部分からなり、ドアを開閉することによって、それぞれを向かい合わせたり、横に並ばせたり、独立させて使用することができます。目的に応じてパーソナルなスペースを適度に調整できるのは、日本の屏風にも通じるものを感じます。

via: sydesign.kr

「わたしは以前、フェンスやゲートのない住まいに住んでいました。コテージのドアを開くと、庭・小川・自然と一体となれたのです。その場所のよい思い出が、新たなイリュージョンを創り出してくれました」

via: sydesign.kr

「オブジェクト-B」は、椅子の背もたれの部分を梯子や棚として使用できるもの。

via: dezeen.com

高い所にアクセスできて意外と便利かもしれませんが、輸送が大変そうな印象です。

via: dezeen.com
via: dezeen.com

ほかのオブジェクトと組み合わせて、室内ガーデンをつくることも可能。

via: sydesign.kr

「8 オブジェクツ」は、読書・仕事・食事といった機能を持つ様々なタイプの椅子が、集合するとベッドルームに変わるというオブジェクト。

via: sydesign.kr
via: sydesign.kr

まるで、だまし絵を見ているような感覚に陥るソン・スンヨンのデザインの数々、いかがでしたでしょうか。完成度の高い美しいキッチンウェアやバスルームのプロダクトデザインで国際的な評価も高いソンですが、「オブジェクトシリーズ」をはじめとする実験的なデザインには、よりパーソナルな感性とイマジネーションが込められていると感じます。オブジェクトの潜在的な可能性を探り出すこれらのトライアルを通して、オリジナルなデザインの視点を磨いていっているのではないでしょうか。

Via:
dezeen.com
sydesign.kr