素人ビルダーが見事完成させた。テキサスのスモールハウス「Ryan McLaughlin’s cabin」
ここはアメリカ合衆国の南部、テキサス州。メキシコ国境沿いのこの州は乾燥した広大な平野が広がり、まさにカーボーイの世界を連想させる。「日本と違いアメリカは全てのスケールがビッグだ」と言われることが多いが、特にここテキサスはそれを肌で感じることができるところだ。
今回のスモールハウスのビルダーであるライアン・マックラフリンは、そんな広大な土地でミニマリズムな理想郷を生み出した。彼はもともとデジタル製品のデザイナーで、建築に関しては全くの素人。そんな彼がおよそ8ヶ月の建築期間を費やし、14.8㎡ほどの小さくてスタイリッシュなキャビンを見事に建てたのだ。小屋のようにも見えるこのスモールハウスは、実はトレーラーで運べるモバイルハウス。今はここテキサスにあるが、もともとは、両親所有の牧場があるジョージタウンで建築したものをここまで運んできたのだ。
実はこのビルダーは、日本のデザインも大好きで、この建物にもそれを少し取り入れている。例えば、写真のこの黒の壁の部分などは、バーナーで焼いた手作りの「焼杉板」の技法を取り入れている。焼杉とは、杉の板の耐久性を増すために表面を焼いて焦がし、炭素層を作った素材で、確かに日本らしさを感じ、デザイン的にもかっこいい。
室内は、ラワンの木目を生かした内装で、センスの良さが見て取れる。狭いながらも、快適な空間だ。
床材には連結ゴム材を使用し、土足で上がっても頑丈で、液体状のものを落としてしまっても簡単にふき取れる利点もある。
リビングにあるビルトイン式のソファーは、引っ張り出せばベッドにもなる。狭い空間ではグッドアイデア。
シンクやプロパンガスでのホットプレート、小さな冷凍冷蔵庫まで完備の小さなキッチン。このキッチンで目を惹くのは、白いペグボードの壁。黒い包丁などの調理器具や調味料・スパイスなどの容器を壁に貼り付けることで、スペースを有効活用するだけでなく、室内をスタイリッシュに演出している。
キッチンの奥にはちゃんとシャワー室まである。小さいながら生活に必要不可欠な設備がしっかりと整っているため、このような小さなスモールハウスでも快適に暮らしていける。
ドアは簡易的に紐で引っ張る形式のものを採用した。決してドアノブの取り付けが難しかったわけではなく、セルフビルドの場合はなるべく建築の負担を減らして最小限の機能を重視した。しかし、これがユニークで、かえってセンスの良さを感じる。
はしごを上がると、屋根裏部屋が主寝室になっている。しかも、クイーンサイズのベッドが置けるほどのスペースとなっている。リビングのソファーベッドは来客用に活躍しそうだ。
このスモールハウスはオフグリットハウスで、太陽光パネルが取り付けられており、電力を自給自足で賄うことができる。また、トイレもバイオトイレを採用し、排泄物をなるべく出さない工夫がなされている。デッキの下も薪を置くなどして、スペースの有効活用。
入り口のドアはガラスの折り戸式で、全開すると中と外の境界線をなくすことができる。
家の前の小さなデッキからは、広大な自然の景色を見渡せる。自分で建てた家から眺めるテキサスの雄大な景色は、格別なものだろう。
都会に住む人々は時として、喧騒を離れ、このような大自然の中に身を置きたくなるものだ。今回のスモールハウスは、単にダウンサイジングが目的ではなく、大自然の中で、自分らしい暮らしをして、明日への活力にする。そんな自分のための小屋を自分で作ることは、究極のアウトドアライフかもしれない。
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