ポルトワインの産地に建つ。ワイナリーに隣接するスモールハウス「Pavilion House」
ここはヨーロッパ最西端の国、ポルトガル。ワインの産地としても有名で、特にポルトガル第2の都市「ポルト」で生産された「ポルトワイン」は、通常のワインとは違うフルーティーな感じのワインで、世界中にファンがいる。今回の舞台は、そんなワイン産業が盛んなポルトのほど近く、Guimarães (グイマラエス) という町にあるワイナリーの小さなゲストハウス。
Andreia Garcia Architectural Affairs (アンドレイア・ガルシア・アーキテクチュアル・アフェアー) と Diogo Aguiar Studio (ディオゴ・アグイアー・スタジオ) が協力して建設した、このワイナリーの中にある小さなゲストハウスの名前は「Pavilion House (パビリオン・ハウス)」。
「森の中の記憶を強め、都会から避難すること」がテーマとなっている、このゲストハウス。
1階部分の土台は花崗石、2階部分は木の壁になっており、このコントラストが美しく、自然に森の中に溶け込んでいる。目の前にはブドウ畑が広がり、ワイナリーと一体化したゲストハウスの雰囲気にマッチしている。外観からはもちろん、室内から眺める景色も周りの景色を取り込むように設計されている。
壁は細長いよろい板を縦に張り、木のぬくもりを感じる室内になっていて、ワインの木箱を連想させる。黒い床と天井が木目の美しさを引き立てているようだ。シンプルでシックな内装やインテリアからセンスの良さがうかがえる。
壁の四方に大きな窓が取り付けられており、それぞれの窓から違う景色を楽しむことができる。
日中は部屋に太陽の光を取り込むことができるので、室内が明るくなり、冬などは室内を暖める効果もある。
建物の面積は85.0平方メートルと、けして広くはないが、スペースを有効活用する工夫が随所にみられる。例えば、このスモールハウスのベッドは壁に収納できるようになっており、引き出せばダブルベッドが登場する仕組みになっている。ベッドを使わないときは、壁に収納することで、限られたスペースを広く使うことが出来るというわけだ。テレビや、本棚などの収納も同じように使うときだけ扉を開き、日頃は座り心地のよい椅子があるだけのシンプルな空間を演出している。
その他にもベッドや、テレビなどと同じように、一面よろい板の壁にみえていた「折れ戸」を開けると、キッチンや洗面所が現れる。使わないときは扉を閉めることで、生活感を感じさせないシンプルな空間に。
「森の中の記憶を強め、都会から避難すること」のコンセプトとおり、極力日常を感じさせない設計になっている。室内に居ながら、森と一体感を感じてほしいということだろう。
このスモールハウスのシャワーもユニークで、天井がなく、上には青空が広がっている。天気がいい日は太陽光を浴びながら、シャワーを浴びて開放感に浸ることが出来る。ここでもオープンスペースの概念が取り入れられている。
このゲストハウスの特徴はなんといっても、部屋をシンプルに見せる折り戸式の壁だ。狭いスペースを広く見せる効果はもちろん、生活感のあるものを扉の中に隠すことで、非日常を体験できるところだろう。その扉が、一面のよろい板の壁と一体化しているところにデザインセンスの良さを感じる。
スモールハウス自体がミニマリズムの追求のために存在するのならば、このように一見シンプルに見えて、じつは複雑な「隠す」、「使う」、「登場させる」といった機能やデザインをヒントにすることで、よりセンスのよい快適なスモールハウスライフを送ることが出来そうだ。