荒れ放題だったコンクリート工場をリノベ。アートあふれる高校へと大変身
現代的でアートを感じさせる建物ですね。実は、デンマーク・ロスキレにあるロスキレ・フェスティバル・フォーク・ハイスクールの校舎です。この校舎は何と、昔使われていたコンクリート工場の敷地内に建てられています。
この校舎を創り出したのは、デンマークの建築設計事務所COBE とオランダの建築家集団MVRDV。彼らは、毎年ロックフェスティバルが行われるロスキレのMusicon地域に、この校舎を創り出すためにコラボレーションをしました。
「倉庫群は、荒れ放題で壊れているが、何とか使えるといった感じだった。でも僕らは一目で気に入った」と、COBEの創設者 Dan Sttubbergaardは語ります。
「僕らは、ワカモノに人気なクリエィティブな学校になる、とてつもない可能性をここに見つけた。だって、学校は、捨てられた工場のなかに建てるのだから。新しい建物とは違い、決まりきった経験ではないなにか別の新しい経験ができるはずだ」
まず、この建築家集団は工場のコンクリート製の大きな梁と支柱のみをのこし、大きな窓と16の「箱」をいれました。この箱をいれることにより、空間はさまざまなワークショップを行える場所へと変化したのです。
「箱」は、もともとの高さが8メートルもある工業スペースに、残された共有部分のまわりの2階部分に重ならないように設置されています。
デンマークのフォーク・ハイスクールの活動は1800年初期から始まりました。この高校には決まったカリキュラムや試験はありません。伝統的には、生徒たちは冬の間学校に寄宿し、その後は家族が営む農園にもどり残りの1年を過ごします。Stubbergaard 自身もフォーク・ハイスクールの出身で、そのことは彼がこの教育施設をデザインするアプローチに様々な情報を与えたでしょう。
「僕たちは古典的なキャンパスの構造を超コンパクトにした。つまり、すべての学校設備は古いコンクリート工場施設内に設置し、学生たちの住む場所と歩道でつないでみた。この仕組みはコミュニティのきずなをより深めると思う。コミュニティのきずなこそ、フォーク・ハイスクールでの生活でとても大切なもの。なにか面白いことは、より小さなスペースから生まれることが多いと思う。だって、そこは正式な教室より管理されていないからね。だから、僕らは小さな教室を沢山作った。そこでは創造的になれるし、単に遊ぶこともできる」。そんなSttubbergaardの思いが学校設備の随所にみられます。
ロスキレ・フェスティバル・フォーク・ハイスクールには芸術コースもあるので、キャンパスには通常の教室に加えて、劇場や音楽スタジオそしてダンスルーム、講義ホールや控え室まで完備しています。メインエリアにある階段状の座席は2階への通路も兼ねて、スペースを有効につかいながら、座席も増やしています。
それぞれの「箱」は、輝くような色で、地元で毎年開かれるロスキレフェスティバルに思いをつなげてくれます。このフェスティバルは大変盛況で、昨年は130,000人もの人々が集い、その収益は人道主義の活動に寄付されたとのことです。
生徒たちが住む2つのブロックは、高校のメインビルディングの正面にあります。4階の高さに積み上げられたモジュールはメタルで覆われ、この場所が工場として使われていたことを思い起こさせてくれます。各階に12-15人の生徒が住んでいて、キッチン、食堂、作業をするための小さなくぼみのような共有スペースがあり、通路によってそれぞれが外部につながっています。また、別のドアを開けると、やはりメタルで覆われたテラスハウスが4棟あり、教師の住居に使われています。
ロスキレ・フェスティバル・フォーク・ハイスクールのそばには、同じくCOBEとMVRDVがデザインした、ロック音楽の栄光に敬意を表したきらびやかなゴールドをちりばめた外観の美術館もあります。
建築家たちは、ロスキレと音楽の才能の結びつきをより深めることはもちろんですが、生徒がなにかヒラメキを得ることを願って、既にある建物を校舎へと変化させました。
「リノベーションをして形をかえれば次の世代にも受け入れられる、斬新で役に立つ第二の人生がある頑丈な建物を、なぜ取り壊してしまうのだろう。20年前コンクリートは、多くの労働者によって生み出されていた。今その孫たちが、同じ建物にある新しいクリエィティブな学校に通っているかもしれない。すごいことだよね」と、Sttubbergaardは語ります。
既存の建物を使われなくなったからといって廃棄してしまわず、アートな建築によってより新しく生まれ変わらせたこのキャンパス。こんな動きが世界中に広がればいいですね。