古材やリサイクル素材をフル活用。190万円で蘇ったオフグリッドな刑務所バス
赤黒く威嚇するような外観の刑務所バスが、DIYの力でモダンなモバイルホームに。クレイグリストでパーツ取り目的のディールから生き延びたバスは、若いカップルの“手”で新しく蘇りました。中古バスは古材やリサイクル素材を活用して190万円でリノベーション。カスタム家具のボルトまで再利用されています。
米国ニューハンプシャー州の若いカップル、ベン&ミーグのポワリエ夫妻。2013年に結婚した2人は、奨学金ローンと自動車ローンで1千万円以上の借金を抱えていました。カップルは5年の間、ライフスタイルをダウンサイジングして倹約に努めます。本業のほかに副業でフリーランスとしても働き、2016年10月に最後の奨学金ローンの支払いを終えました。
夫婦は2016年2月に、以前は刑務所輸送車両だった1989年製の31フィートのシボレーバスを8,000ドル(約86万円)で購入。フルタイムの仕事の週末にコツコツとDIY作業を行いました。2年間のリノベーションにかかった費用は合計190万円ほどで、古材やリサイクル素材を利用して材料費を節約しました。費用を大きく占めたのは、車体の修理とメンテナンスに4,450ドル、ソーラー発電に3,900ドル、温水と配管が1,500ドル、薪ストーブが1,405ドルなど。
「はじめてバスを見たときは、黒いペンキが剥げかかって赤い下塗りが浮いている外観が、“近づくと噛みつくぞ!”と言ってるようでした」とミーグ。
バスには、内部を仕切る3つの施錠付き刑務所ケージドアと窓には鉄格子がありました。壁には12口径のショットガンの薬莢が1つ食い込んでいました。ケージドアの2つは、フロント部分と最後部に再利用されています。
バスは標準のスクールバスよりも3m弱短く、15平方メートルの床面積しかないので、フロアプランをできるだけ広く保つようにデザインしました。
カップルは、すべての家具やフレームを自分たちで一から造りました。ベンは再生木材の会社を数年間管理していたので、フロア、キャビネット、カウンタートップ、バスタブ、ベッドフレームなど多くの部分に、メープルやブナの再生木材を使用しています。
キッチンとダイニングの後には、引き出すとツインベッドになるDIYカウチが置かれたリビングルームがあります。
カップルのクイーンサイズベッドはバスの後部にあり、衣類や電子機器を収納したキャビネットの上に置かれています。ベッドスペースへはバス後部のケージドアからもアクセス可能です。
バスの中心部のソファの向かいには、自慢のインテリアの小さな薪ストーブがあります。レンガのように見えるタイルで囲われた暖炉は、不用品セールで見つけたキッチンカートからリサイクル。暖炉の横には薪のストックスペースがあります。
ホワイトパインのキッチンカウンターなど、古材もたくさん活用。メープル材の折りたたみキッチンテーブルは、100年以上前の実際の肉屋のブッチャーブロックを使っています。折りたたみ椅子は、アンティークのヒッコリーの古材のスクラップから作られ、椅子のボルトは解体作業でバスから回収したものを使用しています。
バスには、キッチンとシャワーのために、プロパンと150リットルの給水タンクを装備。 ルーフトップに設置された600Wのソーラーパネルからの電力は、高性能ドライバッテリーに蓄えられます。LED照明、冷蔵庫、換気扇、ウォーターポンプ、デバイス充電プラグ、キッチン家電は、すべてソーラーパワーで賄っています。
換気扇付きコンポストトイレとバスタブは、造船所から回収されたエキナタ松の再生材を使用。バスの後方にある半分の高さのビルトインキャビネットに収納されています。アンティークジャンクの真鍮製の蛇口がデザインのアクセント。シャワーを使用するときは、天井のマグネットフックからカーテンを吊り下げ、シャワーを蛇口に取り付けます。
もっとも過酷なDIYプロセスは塗装と断熱処理でした。
「錆び止め、車体修理、やすりがけ、クリーニング、テーピングの作業に週末の4週間をかけました。これは忍耐力を試される辛い試練でした。実際の塗装作業はたったの4時間くらいで終わりましたが。プロフェッショナルな塗装業者の見積もりでは100万円以上の額でしたが、自分たちでやった費用は10万円以下ですみました」とミーグ。
ベンは夏の間、バスを床から天井まで細心の注意を払って断熱しました。 綿密に調査した後、バスのすべての穴を内側から塞ぎました。天井には硬質フォームの押出ポリスチレン (XPS) とReflectixの反射断熱材を使用。そして間に隙間を設けることで熱伝導を減らしました。「これは時間とエネルギーの投資でしたが、現在はその恩恵を受けています。寒い日や暑い日でも、素晴らしく機能して快適に過ごせます」とベンは言います。
ミーグは16歳のときに、嚢胞性線維症の気管支拡張症という肺の難病であると診断されました。咳き込むことの多かった彼女は、多感な10代の頃には、他人から隠れ、チャレンジすることを避けるようになっていました。
20代のはじめにパートナーのベンと再会したことが、ミーグを目覚めさせました。ベンはアウトドアへの情熱を彼女と共有し、健康のために自信を持ってチャレンジするよう彼女を励まし続けました。ミーグは、適切な食事と運動習慣のおかげで、今では笑顔で山を登り降りして、何マイルも走ることができます。
ポワリエ夫妻は、完成した刑務所バスをニューハンプシャー州ゴーラムに運び、愛犬ムースとともに、2018年1月からフルタイムのロードライフに移行しました。彼らは16カ月で全米の38州を巡り、3万km以上を走行しています。
ミーグは語ります。「DIYのようなチャレンジは人生も同じです。チャレンジのメリットはネガティブなものを上回ります。そしてチャレンジは私たちに、成長と希望、そして些細なことへの感謝をもたらしてくれます」。