【特集レポート】仕事と遊びを自在に行き来できる町へ。志摩のアクティビティとワーケーション環境の今
場所に捉われない働き方は、身の自由が確保しやすいフリーランスや経営者だけに留まらず、企業に勤める人であっても実現可能な時代になりつつあります。
出社しなくて良い勤務形態が徐々に普及し、個人が気軽にドロップインできる快適なコワーキングスペースも各地に増え、コミュニケーションとラップトップでの作業が業務の大半を占める人なら、WiFiと電源さえあれば、今や世界のどこにいても仕事ができる環境が整ってきています。
そして、この流れをさらに進化させるのが、モビリティ(移動手段)の発達です。実装に向けて急速に開発が進む自動運転は、今までの移動の概念を大きく変え、いわば居住空間・オフィス空間ごと好きな場所へ移動していくことも可能にします。
目的地へ到達することだけが移動の価値ではなくなり、移動中の時間・空間で仕事や日常的な活動が継続できるようになった時、私達はどこへ行きたくなるのでしょうか。
観光だけでなく、仕事の場所として
2016年に「G7伊勢志摩サミット」の開催地にもなった三重県志摩市。市全体が国立公園の中にあるという大自然の恵みを資源に、関西有数のリゾート地として発展してきました。しかし人口減少が進む今、従来の観光だけではない交流人口・関係人口の増加を目指し、市長が中心となって先進的な取り組みを始めています。
2018年には「SDGs未来都市」にも選定され、2019年秋からは次世代移動サービス「MaaS」の先行モデル都市としての実証実験も開始。「モビリティ×まちづくり」を推進し、ワーケーションや2拠点居住といった新しいワーク&ライフスタイルの場としての可能性を模索しています。
YADOKARIではこの志摩市に、今回新たに開発した新オフグリッドタイニーハウスを設置し、ダイナミックな自然環境の中で「移動する暮らし」を実現する試みを、市と一緒に行っています。
ワーケーションに期待するものとは?
仕事場をいつもとは違う場所に変えることによって、私達が得られるものとは何でしょう?
一つは「インプットを変える」ことができます。たとえ仕事の内容は同じでも、単純に身を置く環境を変えることで、目に映る景色や聞こえてくる音、匂い、空気が変わり、周囲の人間関係が変わり、いつもの設備や道具が変わることで体の動きも変わります。こうしたあらゆる刺激がそれまでと変わることによって、私達の脳や心、肉体は新鮮さを感じることができます。
同時に、そこに積極的に体を動かしたくなるような環境があった場合はどうでしょう? 海での遊びや、森の中を思いっきり走ること、屋外での料理や食事なども、いつもとは違う発散・クリエイティビティであり「アウトプット」の形。きっとそれまでとは違う脳の回路や感覚、筋肉などを使っているに違いありません。
こうした「インプットとアウトプットが変わる」ことで、私達は思考も精神も肉体もリフレッシュし、通常の仕事に対する見方や取り組み方がより良いものに変化する可能性は大いにあります。
このような効用をワーケーションに期待する時、志摩の豊富な自然資源とアクティビティは大きな魅力と言えます。その志摩の代表的なアクティビティについてご紹介します。
海のアクティビティ
志摩で最も気軽に触れられる海のアクティビティと言えば、まずは海水浴です。志摩には数多くの美しいビーチがありますが、代表的な海水浴場を挙げると、
・阿児の松原海水浴場
・御座白浜海水浴場
・次郎六郎海水浴場
・浜島海浜公園
・わたかのパールビーチ
などがあります。(伊勢志摩観光ナビ/伊勢志摩観光コンベンション機構公式サイト https://www.iseshima-kanko.jp/feature/beach-pool/shima )
いずれも水質が非常に良く、特に御座白浜海水浴場は、快水浴場百選や環境省の「日本の水浴場88選」にも選出されており、白い砂が美しい、波の穏やかな、東海地方有数の遠浅のビーチです。海水浴シーズンには海の家も立ち並び賑わいますが、オフシーズンも静かな海を味わいに訪れたくなりますね。
他にも、
・ウォーターボール
・シーカヤック
・サップ
・サーフィン
・体験ダイビング
などが楽しめます。志摩市観光協会のサイトから、さまざまな体験を選んでネット予約することもできます。(志摩市観光協会ウェブサイトhttps://www.kanko-shima.com/html/taiken/index.html)
陸のアクティビティ
海と山が近い位置で接する志摩には、海を見ながら陸で楽しむアクティビティも豊富です。例えば、サイクリングやウォーキング、ランニングなど。
サイクリングは、サイクルコースも複数整備されている他、海岸線や森の中を気の向くままに走ることもでき、ビギナーから本格派まで楽しめます。市内のあちこちにサイクルラックを備えたお店もあり、愛車でのツーリングをサポートしてくれる他、中心地鵜方駅付近では電動自転車のレンタルもできます。
また、シューズさえあれば誰でもすぐにできるウォーキングやランニングも、志摩の自然を全身で感じる身近なアクティビティです。
加えて、2日間かけて伊勢志摩エリアを皆で歩く「伊勢志摩ツーデーウォーク http://www.shima2daywalk.jp/ 」というイベントや、「伊勢志摩里海トライアスロン http://shima-tri.com/ 」、「志摩ロードパーティーハーフマラソン https://shima.roadparty.jp/index.html 」などの大会も毎年開催されています。こうしたイベントをきっかけに訪れるのも良いかもしれません。
他にも、ゴルフや、初心者でも気軽に楽しめるパークゴルフ、キャンプなどのアクティビティがあります。
このように、手ぶらで現地に行っても体験できる多様なアクティビティのインフラがすでに豊富に整っているのは、志摩の優れた魅力と言えます。一年を通して温暖な気候であるため、季節を問わず楽しめるのもポイントかもしれません。
大自然の中で、その日のスケジュールやコンディションに合わせて、遊びと仕事を自由に行き来しながら過ごす。そんなワーク&ライフスタイルが、志摩ではさほど難しくなく実現できるのではないでしょうか。
空き家・遊休施設を活用したワーケーション拠点整備
志摩の観光資源・自然資源を活かしたアクティビティがすでに充実している片側で、ワーケーション可能な拠点の整備にも動きが出始めています。
志摩にある空き家や稼働が停滞している遊休施設に、リノベーションやWiFiの設置等を行い、企業のサテライトオフィスやコワーキングスペースとして活用していく試みです。
高齢化によって利用者数が少なくなった賢島の「阿児の松原スポーツセンター」や、少子化と防災の観点から統廃合・移転が進む小中学校の空き校舎において、施設内の一部のスペースをオフィス空間として利用してもらうことを目指した動きが始まり、都心のIT企業や不動産企業が視察に訪れているそうです。
最初の1歩は都心企業と共同で取り組む必要性も
ワーケーションの取り組みについて志摩市産業振興部観光商工課の鈴木さんに、この試みが前に進んでいくために大切なことを伺いました。
鈴木さん:「志摩は今まで観光メインでやって来ている所に、もう1本の柱としてワーケーションや2拠点居住、移動する暮らしをする方々にも利用していただきたいという市長の想いがあります。ワーケーションの拠点や、仕事ができる環境・インフラの整備に関してはこれから進めていく段階ではありますが、難しいのは拠点の整備が先か、利用したいと言ってくださるお客様が先かという問題です。拠点整備にも予算がかかるので、見込みの利用者がある程度見えて来るとこちらとしても進めやすい。特に初動期は、自然豊かな環境でのワーケーションに関心のある企業とタッグを組んで、一緒につくっていく、という取り組みが必要ではないかと感じています」
利用者にしてみると、都会では得られない自然の中に身を置きながら、仕事にも集中できる環境・設備がある、という両面がワーケーションの必須条件。その環境を、企業が受け入れ側の地域と共につくっていくというアプローチは、地方への貢献や、従業員へのより良い場・機会の提供という側面において新しい方法と言えます。ひと昔前の「保養所」が機能しなくなって来ている今、自社に長く貢献してほしい優秀な人材に対して、どんな環境を提供できるのか。働き方改革が声高に叫ばれる今、企業にとっても改めて働く場所の選択肢を広げる動きが望まれているのかもしれません。
気持ちのいい場所で遊ぶ、働く、暮らす幸せ
テクノロジーの進化で場所を選ばない働き方ができるようになってきた今、自分の身をどこに置いて仕事をするかは、人生の豊かさや幸せの実感にも大きな影響を与えそうです。G7伊勢志摩サミットで世界が魅了された一大リゾート地 志摩。「気持ちのいい場所、好きな場所で、遊びと共に仕事をする」という新たな視点で訪れてみませんか?