【動画&レポート】YADOKARIの新たな「Vision」とこれからのこと | 共同代表取締役さわだいっせい・ウエスギセイタ対談
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2011年3月11日、濁流に飲み込まれる家の映像に衝撃を受け、その日からYADOKARIとしての活動を始めた創業者のさわだいっせいとウエスギセイタ。「一生をかけて高額な家を買うことが、本当に幸せな住まいの在り方なのだろうか?」そんな疑問から「未来の豊かな住まい方」を探究し始め、タイニーハウス、移動する暮らしなどの新たなライフスタイルを世界中から紹介するメディアとして、YADOKARIは少しずつ歩みを進めてきました。
2013年に法人化し、タイニーハウスによる駐車場を活用したコミュニティプレイス&飲食施設「BETTARA STAND 日本橋」や、同じくタイニーハウスを用いた京急電鉄高架下のホテル&飲食施設「Tinys Yokohama Hinodecho」などの場づくり・地域活性の事業展開を経て、創業7年目を迎えた今、YADOKARIはさまざまな自治体や企業との大規模なプロジェクトにも参画させていただくようになりました。
そんな今を、さわだとウエスギは「YADOKARIの第2創業期」と捉え、会社のVision・Mission・Valueを一新。原点に立ち戻り「リビングコスト・ゼロの住まい」を、仲間たちと本気で実現しようとしています。YADOKARIの新たな世界観とこれから向かいたい未来について、2人が想いを語りました。
YADOKARI第2創業期にあたり、進化するVision
ウエスギ: 7年目にして、実は1月の終わりくらいから会社の新しいVision・Mission・Valueをずっと考えていたんですよね。もともと最初のビジョンメッセージや理念も3ヶ月くらいかけて2人で考えましたよね。
さわだ: そうですね、小林武史さんがプロデュースしている代々木VILLAGEに行って。
ウエスギ: さわだとそこに入り浸って、ああでもないこうでもないと。モバイルハウスやタイニーハウスの構想はもともとあったので、代々木VILLAGEの動くコンテナみたいなものを見ながら実際にインスピレーションを感じて言語化していって、何度も何度も書き直したのが、YADOKARI.netの「ABOUT」の言葉。この時、テーマにしていたタイニーハウスや多拠点居住は今だからこそメジャーですけど、これを書いた2012年は、こんなこと「?」が付いている時代でしたよね。
さわだ: 普通になりましたね。
ウエスギ: この「ABOUT」にもある「場所、時間、お金に縛られない」というのも重要ですよね。でも今回のコロナで、場所や時間には縛られなくなってきたかもしれない。東京にいる意味も薄くなってきましたね。
さわだ: 確かに。こうやってリモートで仕事ができるようになっちゃうと、場所と時間の自由はもう実現できている人もいるかもしれない。あとはお金だね。
ウエスギ: そこだけだよね。この時は、「これからの豊かさ」の実現に向けてYADOKARIというメディアを深めていくにあたって、「自分の中で豊かな暮らしってどんなのだろう?」というのをお互いコラージュで持って来て、そこから言語化したんだよね。3.11とも重なって、僕らも自分たちなりのマニフェストを提言として書こうと思った。これを読んで連絡してきてくれた人、たくさんいましたよね。
さわだ: 僕らのスタンスが出ていたし、ここに共感してくださった人たちが多かったんだろうね。
ウエスギ: この当時はまだ会社化は考えていなくて、ただ自分たちのやりたいことを一生懸命言語化しようとしてた。今まさに、こういうことをやっておいて良かったなと思います。これが今から約8年前に書いたもので、スタッフも増えてきて、2020年1月くらいから第2創業期だという意識もあったので、Vision・Mission・Valueを改変しようということになった。さわだと一緒にまた3ヶ月くらい産みの苦しみで考えて、かなりアップデートしたんです。
Vision(YADOKARIの使命)/「世界を変える、暮らしを創る」Change the world, Create a life
ウエスギ: このフレーズが出て来た時、2日間くらいテンション上がっちゃいました。
さわだ: 久しぶりにブルブルッと、自分たちの中に来たんですよね。
ウエスギ: 今までは「住」という視点で、タイニーハウスとか多拠点居住とか、ツールも明確にしていましたよね。それを、自分たちがやって来た活動を棚卸した時に、もう少し次の世界へ行けるように、年末にうちの会社のメンバーみんなで真剣に話したんですよね。それを受けて僕らももう一度Visionをアップデートしようと。「暮らし」という領域から「世界を変える」。かなり引き上がりましたよね。
さわだ: 相当大きいよね。ずっとモバイルハウス、タイニーハウス、コンテナハウスに固執していたというか、今でももちろんその事業もやっていて、暮らしを変える一つの選択肢ではある。でも、それだけが人々を幸せにするわけでもないし、もっと選択肢がないとダメだよねということで、壮大なことにチャレンジしてみたいんですよね。
ウエスギ: この「世界を変える」というのは、さわだはもともと「世界」が頭にありますよね。
さわだ: YADOKARIの可能性はこんなもんじゃないだろうって所に、いつもチャレンジしたいんだよね。もちろん毎日小さなことから丁寧に活動を進めて行かなきゃいけないんだけど、視野は大きく広げたい。
ウエスギ: これは僕らの著書をきっかけに、中国に講演に呼んでいただいたのが大きかったなと。中国と韓国でYADOKARIの本が翻訳されて出ているんですけど、「中国の新しい暮らし」というテーマで登壇させていただいた時に、「小さな暮らしってどう?」って聞いたら、中国の若者が「いや、3億円のマンションに住みたいし」みたいなこと言ったりして、めちゃくちゃ面白いなって。日本の中だけじゃない、同世代だけど価値観は多様なんだなと。そうなって来ると、僕たちのフィールドというか、価値観をアップデートすることにおいて、まだまだたくさんの人たちと切磋琢磨できそうだなと思いましたよね。だから「住」から「暮らし」、そして「暮らし」から「世界」へ。みなさんどう思いますかね? 共感してくださる方は、ぜひ一緒にこの船に乗ってほしいなと思います。
さわだ: うん。自分たちだけだと難しいことだし、ハードルは高いと思うから。
Mission(YADOKARIのありたい姿)/「暮らしの美意識を体現し、新たなカルチャーを創造する」Multi creative society of life. Creating a new culture.
ウエスギ: Visionの「世界を変える、暮らしをつくる」を達成するための、僕らのあるべき姿ですよね。さわだは、これはどうですか?
さわだ: 暮らしの美意識というものの定義は人それぞれだけど、僕らの中では、日常の暮らしの中にも自分なりの丁寧さや美意識をしっかり持って、それを自分たちで実際に体験・体現していくことが重要だよね、と言っているんです。表層だけじゃなく自分たちが行動で表していく。それが積み重なって、いろんな人に影響を与えたりして新たなカルチャーになっていく、その流れが大事なんじゃないかと。
ウエスギ: 小さな暮らしやミニマリストも、一つの暮らしの美意識ですよね。あれを「合理的な暮らし」みたいに表現した時に、「HOUSE VISION」のプランナーの土谷貞雄さんに「いや、君たちのやっていることは合理的ではなくて、美意識だよ」って教えてもらったのがきっかけだった。日常ではない美意識のことを「演劇的な暮らし」などと僕らは表現するんですが、例えば彼女の誕生日に横浜のみなとみらいのホテルを予約してシャンパンを飲んで観覧車に乗る、みたいな、それも素敵な暮らしだけど、それは演劇的な暮らしであって日常ではない。僕らが描いているのは、日常の中でこの1杯のお茶をどうクリエイティブにつくろうかという所作や暮らし方ですよね。そういう所の美意識が整ってくると豊かになるなぁという実感があったので、そんな人が増えていくとまた新たなカルチャーができそうだなって。
ウエスギ: アフターコロナでは地方移住が加速するんじゃないか、みたいな議論も社内ではしているんですが、仕事があるから首都圏を離れられない場合もありますよね。過去に無印良品さんとそういうアンケートを2万人くらいに取った時に「働き方を変えないと、暮らし方を変えられない」というご意見をたくさんいただいて。でも、このコロナで働き方も暮らし方も大きく変わりそうなので、改めてどんな暮らしをしたいか考えたいですよね。こうなってくると家の居心地の良さはけっこう大事。さわだはどうですか? 海の近くに住んでるけど。
さわだ: うちはもう震災の時に一念発起で逗子に引っ越して、築50年の古い平屋に住みながら、家や庭を少しずつきれいにしながら、時には朝、海へ散歩に行きながら、みたいな暮らし方にシフトしたんです。今このコロナの状況下でも同じ暮らしを続けられていて、何の不満もない。
ウエスギ: 夜遅くまで働いて、寝に帰るだけの家に暮らしている人はしんどそうですよね。
さわだ: 今まで家の中に「居場所」をつくってきた人たちは、この状況になっても幸せに家での時間を過ごせるんだけど、そこに居場所がない人はけっこうしんどいんだよねぇ。ずっとバリバリ仕事し続けてきた人とか、顧みずにやってきた人とか。だから良いきっかけになるかもしれないですよね。住みたい所に住みつつ仕事ができる環境が整えられるようになったから、この機会にもっとストイックになればいいんだよね、本当に自分が気持ちいい場所へ。
Value(YADOKARIの行動指針・価値基準)
ウエスギ: まあ、ずっと言ってきたことですよね。でもなんかちょっと中2病みたいな所が良いですよね。
さわだ: 中2病なんだよねぇ、基本。うちの社員には一人一人、ビジョンミーティングをしたんですよ。メッセージに向き合ってもらって「これを聞いてどう思う? こういう生き方できてる?」とかね。
ウエスギ: これはもともとのメッセージビジョンから抽出した、さわだ・ウエスギが事業をやる上で、いつも案件一つにおいても立ち返る7つのバリューですよね。
さわだ: 人生のスタンスみたいな所でもあるよね。そこと仕事を交わらせたい。仕事だって人生だし、そこをミックスするとぶれない。本気でそれをやり続ければ良い人生を送ることができるよね、という所を書き出した感じかな。
1. 今を生きる/過去を悔やみ、未来に怯えることは不毛。今という一瞬に集中して生きることでまだ見ぬ可能性を引き出し、人生を成長させる。
ウエスギ: 大抵の人は、悩んでいることが今のことじゃないんですよ。過去の自分を悔やんでいたり、そんな自分だからできないんだと思っていたり、行き先が見えない、お金どうしようみたいなことだったり。これからのことと過去のことで悩んでいて、今日何を一生懸命頑張ってやっているのかを忘れちゃったりする。
さわだ: これからずっと死ぬまで頑張って、まだ見ぬ可能性を見たいなっていう所まで頑張るわけじゃないですか。その中でも足元の幸せ、今幸せかどうかはとても重要だと思っていて、僕は誰一人として、今自分が幸せじゃないと思って付いて来ていたら絶対ダメだと思っていて。YADOKARIで働いている人たちがみんな、今幸せであってほしいなということなんです。
ウエスギ: それで今、素敵な関係性や仲間たちが少しずつ増え始めてるということは、自分の中で自信を持って言えることです。
2. 好奇心に従う勇気/好奇心と恐れは表裏一体。静寂の中で湧き上がる魂の声を勇気を持って選択する。
ウエスギ: 好奇心は勇気がないと選択できないですよね。
さわだ: 僕はけっこうナチュラルに選択できちゃうんだけど。人生とっくに捨ててきたんで。そこはポリシーとして頑張ってやってきた気がする。
ウエスギ: 「好奇心」と「恐れ」は、僕は表裏一体だと思ってるんですよ。みんなワクワクしてることは多少あるんだけど、それを選択する時は、お金のことや家族のことなどいろんな恐れもありますよね。守りたいプライドみたいなものがあるのかもしれない。僕もそうだったから。前回もさわだの話に出ていたんだけど「何者でもない自分を認める所から自分は始まる」という話にもつながる。さわだは、好奇心はシンプルにやってますね。
さわだ: もう中学校ぐらいでレールを外れた時から、そうやって生きた方が楽しいなって(笑)。ウエスギを見てると、やはり「長く続けることが正義だ」って感じじゃないですか。僕は打ち上げ花火で、思いっきりでっかい花火をぶち上げる、創造と破壊みたいなのが正義だと思ってるから。
ウエスギ: でも「世界を変える、暮らしを創る」は、その破壊と継続の両方がないとできないと思う。だから僕は最近、お互いそれをやれたらいいなと思ってます。
3. 固定観念や慣習に囚われない/創造性は無限大。合理性を一旦傍に置いて本質を捉え、新たな価値を生むクリエイティブを考え抜く。
さわだ: これはみんなにしょっちゅう言ってるね。固定観念や慣習は、コミュニティや環境や国や時代などで全然違うものになっていくから、そこには本質が隠れていないような気がしていて。そこをまずフラットに見られる目を持つ方が、良いクリエイティブにつながる気がします。
ウエスギ: 固定観念をぶち壊すって、できるようで、できる人って少ないと思うんですが、さわだはなぜこういうことがベースにあるんですか?
さわだ: 無いものをつくりたいんじゃないでしょうかね。面白いじゃないですか、無いものをつくった方が。
ウエスギ: 確かに。YADOKARIとしては、市場がないと言われている所をずっとやってきたので、そこはすごく大事なことですよね。こんな小さな会社だけどいろんな人たちに目を掛けていただけるのは、ここだと思っているんです。
4. 仲間を信じる/一人では世界を変えることはできない。仲間を信じ、プロフェッショナルとして己の役割を全うする。
ウエスギ: この仲間を信じるっていう感じ、僕はもともと成果主義の会社が多かったから、チームでやるのはYADOKARIが実は初。
さわだ: 僕は夢ばっかりでかいからね(笑)。弱い人間だし、できないことばっかりだから。ここだけはできるということ以外は、本当にみんなに手伝ってもらうしかないなぁという感覚ですよね。みんなそれぞれ自分ができること・できないことがあるはずだから、それがYADOKARIでマッチしていって、1つのチームとして世界を変えられるような大きなことができれば良いんじゃないかな。だから自分の弱さもちゃんと認めて、強さも知って、みんなが補い合うのが大事だろうなって。
僕は個性を大事にしたいんですよね。雇う側と雇われる側じゃなくて、それぞれがちゃんと自分らしさを発揮できる会社が良い。別に株式会社じゃなくても良いんだけど。YADOKARIの、株式会社という枠組みに関しても、これからどんどんチャレンジして壊していきたいと思ってる。
ウエスギ: 「みんな役員」みたいな可能性もありそうですよね。みんながこの会社の社長みたいな感覚。コロナをきっかけに、株式会社みたいなものも分解されるかもしれない。その形態である必要性が無くなってくるかもしれないですよね。
5. やり抜く価値/やりたいことがあるなら、やるべきことを全うし、時代の流れを掴む。
さわだ: 仕事って短距離走じゃないから、結局、永続的に会社も続いていくものでないとダメだと思うし、打ち上げ花火を上げて終わっちゃうとそれだけなんだよね。そこでどれだけしぶとくやり続けられるか。やり続けることで次のチャンスがまた降ってくるのかもしれないですね。
ウエスギ: 「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があるけど、YADOKARIは人事を尽くして、その後にまた時代の流れを掴む、みたいな感じ。やり抜いたら天に任せるんじゃなく、やり抜いた後も時代を見に行こう、みたいな、やり抜いているからこそ見極めようという所はありますよね。
6. 地球と共に育む/地球と生き、自然を愛し、全ての生き物と共に育む。
ウエスギ: ここはお互いに少し弱い所だから、自分たちに課した感じもあるよね。
さわだ: 自分たちがつくり出すプロダクトが、安いのを理由に地球に良くない部材を使って、それでできた物をお客さんに提供すること自体が本当に良いのか?という話で。自分たちの活動も作り出す物も全て、一貫して責任を持つのが大事じゃないですか。これからの時代の会社は、これが当たり前にないとダメだから。
ウエスギ: 若い子たちの方が、エシカル、ホリスティック、持続可能みたいなことが既にベースにあったりしますよね。YADOKARIで紹介してきた、自然の中でスモールハウスで暮らすのが気持ちいい、みたいな感覚と通じる所がありますよね。ここはみなさんと一緒に「地球と育む」企画を考えていきたいです。生かされているということを、自分で感じ取れる人たちが増えていきそうですよね。
7. 愛を伝え続ける/生かされていることに感謝し、関わる全ての人々へ愛を伝えることを怠らない。
ウエスギ: さわださんは愛、伝えてるんですか? パートナーシップもそうだし、会社もそうだし。伝え方はいろいろあるけど。
さわだ: 僕は前の会社をクビになった時に、やっぱり愛を感じられなかったというか、自分の会社をつくるんだったら絶対に愛のある会社をつくるぞって思ったんだよね。
ウエスギ: その愛って何なんですか?
さわだ: それはまだ分からない。一緒に働くメンバーを一生幸せにするとか、一生面倒を見る気概で対峙するとか。とはいえ優しくするだけが愛ではないし、時には厳しいことも言う。君が本当にそれで死ぬ時に後悔しないかなって。そういうことに気づいた時に、実は前の会社も愛がない会社だったとは思わなくなったんだよね。
ウエスギ: へぇー! そうなんですか。
さわだ: あの時、僕はクビになったけど、結局そうしてもらったことによって今ここにいるわけだから。
ウエスギ: それは愛だったって受け取れるってこと?
さわだ: そういう愛もあるなぁって。確かに僕はあそこで自分の最善を尽くして仕事をしていたかというと、多少は怠けてた部分もあったかもしれないし、今となっては前の会社の経営者の気持ちはすごく分かる。
ウエスギ: すごいこと言いますね!
さわだ: うん。やっとそこで単純に優しくするだけが愛じゃないと思ったんだよね。愛のある会社をつくろうと思ったのは間違いなくて、ただそれをどう伝えるかは、僕も口下手な所があるから難しいなと思うけど、努力はしたいと思ってます。
ウエスギ: でもさわだのその愛を感じて周りに人がいるのは事実ですよね。だから伝えなくても伝わるものなのかもしれないです。奥さんに愛を伝え続けるって、どんな感じなんですか?(笑)
さわだ: それはね、ちゃんと言葉で伝えた方が良いと思うんだよね、行動で示すとか。しっかり分かりやすい形で示した方が良いよね、ものすごく家事をやるとか、時々花を買って帰るとか、「いつもありがとう」って感謝の言葉を伝えるとか、とにかく分かりやすい方がいいね(笑)。
ウエスギ: さすがですね。うらやましいなぁ、俺も頑張ります(笑)。
住居費ゼロの世界へ
ウエスギ: こんな感じで3ヶ月間悩み抜いて、第2創業期にYADOKARIのVision、Mission、Valueを設定しました。これは僕らのことというよりも、意外に人生を生きる上での指針としても役立つフレーズかもしれない。
さわだ: それで今、中銀カプセルタワーの新しい形、現代版の中銀カプセルタワーをつくろうとしてるんだよね。僕らは3〜4年前に中銀カプセルタワーの保全の一環で、10㎡の1カプセルを創業期の初めてのオフィスとして借りていたんです。建築家の黒川紀章さんはミニマリズムの先駆者で、1960〜70年代からこういうことを考えていたなんて本当にすごいなと感銘を受けて。で、現代にあれを蘇らせるならどんな機能が必要かと考えた時、まず思ったのは、やはりコミュニティだよね。それぞれのカプセルが独立して完結しすぎているから、カプセル同士の交流があまりない。そこでコミュニティスペースやコワーキングスペース、リラクゼーションスペース、温浴施設みたいなものがあることが重要じゃないかと思って、いま僕らがつくろうとしてます。それがYADOKARIのクリエイティブレジデンス。
ウエスギ: それをきっかけに、さわだがまた創業期のビジョンを取り戻したこともあって、だから「リビングコストをゼロにする」という原点に立ち返りましたよね。
さわだ: 新たなVisionの中で、「世界を変える、暮らしを創る」ことに伴って、以前のVisionが「お金と場所と時間に縛られない暮らし方をつくっていく」ことだったんだけど、お金に縛られない暮らし方は、まだ僕らは実現できていないなぁと思う。
ウエスギ: 世界中がまだできていないですよね。
さわだ: このコロナ禍で、スペインなどはベーシックインカムを始めると言っているけど、日本はまだまだ先だろうと思います。でも僕は、民間がいろんなインフラ系のサービスをフリーミアムでどんどん提供してくるとは思っていて、次第にお金は使わなくても生きられるような世の中になると思っている。その枠組みの中でYADOKARIも挑戦したくて、僕らがいちばん強い所で、「スモールハウス=極小の小さな家」を何らかの形で無償で提供していけないかと今考えている所です。
ウエスギ: ぶっ飛んでるよねぇ! ほとんどお金って住居ですよ。年収の3分の1から多い人だと2分の1くらい住居費だから。それがゼロになった時にみんなは可処分所得をどうするんですかね。
さわだ: 僕はやはり創造欲求みたいな所に立ち帰るんじゃないかと思ってる。結局ものづくりしたりとか、何かを表現したくなると思っていて。だから第1弾として、クリエイターとかアーティストとか「クリエイティブクラス」と呼ばれる方々に向けてのレジデンスをつくって、それを住居として無償で提供していく仕組みをやっていこうと。
ウエスギ: それを今、進めています。住んでもらえる人を全国から公募します。
さわだ: そのお金を集めるために奔走してます。大きなお金を僕らが資金調達して再分配していく形かもしれないし、ある個人が足長おじさん的にアーティストを支援することもできると思うし。その仕組みとプラットフォームと住む場所、小屋みたいな「HOUSE in HUT」を開発していて、ハード(建物)と、お金の仕組みと、コミュニティをつくろうとしています。
ウエスギ: YADOKARIは、これからお金が回ってきたとしても、クリエイティブなお金の使い方をしたいですよね。リビングコストゼロ。それによって人間のクリエイティビティや美意識が引き上がり、もっともっと豊かになると思うんです。
さわだ: だからもう本当に、みんなお金のために生きるのはやめようということですよ。「世界を変える、暮らしを創る」という中で、僕たちは次の取り組みとして、世界中のリビングコストをゼロにしていく壮大なプロジェクトに邁進します。僕らは人生をかけるテーマが見つかったと思っているから、これをずっとやっていくので、ぜひ何かしらお力を貸してくださる方がいたらご一緒したいと思っています。