ツリーハウスつくろう(番外編)〜星野リゾート・リゾナーレ熱海 – 森の空中基地 くすくす〜
今を活き、未来を創造する『人』ツリーハウスクリエーター 小林 崇さんと、その世界について綴っている『ツリーハウスつくろう』シリーズ。
番外編の今回は星野リゾート・リゾナーレ熱海にこの度オープンした、コバさんが手がけたツリーハウスをシンボルとする森の空中基地 くすくすについて体験レポートしたいと思います。
森に浮かぶ空中基地
“大人のためのファミリーリゾート”をコンセプトに掲げている「星野リゾート・リゾナーレ熱海」。
ホテルに隣接する敷地内に、ツリーハウスや樹上アスレチックが広がる「森の空中基地 くすくす」がある。
森のシンボルとなるのは、樹齢300年にもなるクスノキをホストツリーとするツリーハウス。デッキ面積も広く、これは日本最大級のツリーハウスだ。森の名称である“くすくす”は、この巨大なクスノキから取られたそうだ。
“ネスト”は、鳥や昆虫の巣・すみか、また、隠れ家・安心できる住まい、といった意味だ。
人間だって動物。遺伝子に刻み込まれた本能では、安心出来る“巣”に帰る事を望んでいるのではないだろうか?何かマユの中に入ったような感覚。母なる地球に戻るような感覚を感じて欲しい。そんな想いから、このツリーハウスは制作された。
ツリーハウスは、日本ではまだまだ珍しい存在。その世界に触れる機会は少ないだろう。今回、家族連れでも気軽に行ける森を開き、そこにツリーハウスが出来た事で、多くの方々にその魅力や、自然に寄り添うライフスタイルに興味を持って頂けたら嬉しい。
多彩なコンテンツ
星野リゾート・リゾナーレ熱海では、このツリーハウスをシンボルとする森の空中基地 くすくすを、満喫する為に、多彩なコンテンツを提供している。
【樹上ピクニック】
バスケットを持ってツリーハウスで貸切ピクニック。天気が良い日は、ポカポカのデッキで食べると好さそうだ。メニューはホットサンドとコブサラダ。トマト、モッツァレラ、バジルのオーソドックなものから、キャベツ、アジなどの海の幸を入れたものまで、焼きたてを提供してくれる。
【森の空中散歩】
木と木の間を渡っていく、樹の上のアスレチック施設。全長約80m、樹上2.1m~9.0mを進むコースは大人も充分楽しめる。子ども向けには、ストーリーのある冒険プログラムもあるようだ。
ハーネスを装着。ランヤード用のワイヤーが全体に渡り引かれているので、楽しく安全に木々を渡る事が出来る。最後に待ち構えるジップラインは、まるで鳥になったような感覚だ。
この他にも、ランタンで照らされた幻想的な夜のツリーハウスで過ごす「プライベートランタンBAR」。森のデッキで朝のストレッチ「森林浴ストレッチ」。ゆったりと森で過ごす「ツリーハウスの森時間」や「森のさわやかガイドウォーク」など豊富なコンテンツが用意されている。
コバさんが打ち出したコンセプト「ネスト/nest」を、心と身体全部で感じる事が出来るだろう。
ツリーハウス制作は樹木との対話
「僕は、楽譜の無いオーケストラを指揮するようなもの」
コバさんの言葉だ。
ツリーハウス制作は設計図の無い創作活動。樹木の状態や森の環境により、いとも簡単に描いていたプランが変更になってしまうからだ。制作は、ホストツリーとなる樹木や、材料、自然との対話を繰り返しながらの作業なのだ。
その現場は、時に自然に魅せられ、時に厳しさを味わう。だから真剣。だから面白い。
今回の森の空中基地 くすくす制作は、日本のツリーハウス制作第一人者として経験豊富なコバさんにとっても、大変なプロジェクトだったようだ。
木が大きい、とても大きいという事。だからこそ実現できた、日本最大級のツリーハウスなのだが・・
普段のツリーハウス制作では、特殊なボルトを使用し100%木の上に建物を乗せているが、今回は、子ども達も多く訪れる施設。
特に安全性を考慮し、国際的な技術コンサルタント会社である、アラップ社(ARUP)のアドバイスによる構造計算を行い、ストラクチャー(ツリーハウスを支える機構)を構築した。また、建物の大枠なデザインは気鋭の建築家、中村拓志さん(NAP建築設計事務所)が担当。
コバさん(ツリーハウスクリエーション)、アラップ社、中村拓志さんの三者がコラボレーションし、ツリーハウスと建築が関わり融合した、他に類をみないプロジェクトとなった。
ツリーハウス制作は、樹木の複雑な枝葉を活用したり、避けたりしながらの創作的作業が多い。また、森の中へは、大きな重機を持ち込んむ事も難しい。その為、その大半を手作業で創り上げて行く。ビルダーは、樹木に対する知識、特殊な技術と経験が必要となる。今回のホストツリーは樹齢300年の巨樹だ。コバさんの下へ、各分野の職人や業者の方々に加え、各地からツリーハウスビルダーが招集された。
ツリーハウス制作は、時に厳しさを味わう。
森の空中基地 くすくすの制作期には、暴風雨、二度に渡る大雪と、見事に自然の厳しさを味わう事となった。当然その間の作業は大幅に遅れが出る。しかし、ツリーハウスビルダー達は、それでも手を止めなかった。作業は時に深夜にも及んだ。
この深夜の作業は、思わぬ森の美しさを発見する事になった。夜の“くすくすの森”は、思わず息を呑む幻想的な空間。熱海の街の灯が木々の合間を縫い、晴れていれば満点の星空。ツリーハウスは、光の森の空中基地となる・・
この幻想的な空間は「プライベートランタンBAR」などのコンテンツで体験する事が出来そうだ。
コバさんが最も大切にしているのは、木が元々持っているデザインを壊さず、創ったものが最終的にそのバランスの中に溶け込む事。
ビルダー達の仕上げの作業は、最後の最後まで続いた。コバさんから最終のOKが出たのは、オープン前日の事だった。他に類をみないこのプロジェクトは、こうして、ついに完成した。
熱海の森に包まれる喜び
森の空中基地 くすくすのクスノキは、常緑樹(一年中葉を落とさず、いつも緑葉を持つ樹木)だ。その為、どの季節に訪れても、緑に囲まれた豊かな時間を過ごす事が出来るだろう。
また、その名の語源は「臭し(くすし)」とも云われる程、大変香りの強い木でもある。クスノキが多く自生するこの森は、常に木々の穏やかな香りに包まれており、呼吸をする度に、森が身体の中を通り抜けるような感覚を体験出来るだろう。
熱海って温泉だけではないんだ・・
海があって、そして、こんなにも豊かな森があったんだ。
最近、いつ深呼吸したかな・・
ため息は沢山ついたけど。
ツリーハウスのデッキに立って、
森の香りを目一杯吸い込んだ瞬間、久々に空を見上げた。
コバさんが手がけたツリーハウスをシンボルとする森の空中基地 くすくす。
その森を満喫出来る、多彩なコンテンツで星野リゾート・リゾナーレ熱海は、私達を迎えてくれるだろう。
Back on The Tree
帰っておいで、くすくすの森へ。
取材概要
施設紹介:星野リゾート・リゾナーレ熱海 – 森の空中基地 くすくす
【取材協力】
Photo:KIN
Model:Chieko
Supporter:唐品知浩 / 石原渓子 / 橋口ちかこ / 浅野譲司