【アフターレポート】\二拠点居住とやまなし2022 Vol.1/ 一つの場所に縛られない暮らし方入門 〜実践者から学ぶ 二拠点・多拠点居住の”いろは”〜
「二拠点居住とやまなし2022」では11/19(土)に現地ツアーを実施予定。仲間と一緒にはじめの一歩を踏み出したい方のご参加をお待ちしています!
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2021年に開催し大好評だったイベントシリーズ「二拠点居住とやまなし」。通信技術の発達や新型コロナウイルスの影響でリモートワークが定着し、新しい暮らし方の選択肢として一般化してきた二拠点・多拠点居住という暮らし方ですが、興味はあってもなかなか1歩を踏み出すことができない方も多いのではないでしょうか。
「二拠点居住とやまなし」では、二拠点・多拠点居住の居住先としてぴったりな山梨県の魅力を伝えつつ、二拠点・多拠点居住の実践者たちからリアルな体験談を聞くことで、新しい暮らしへの1歩を踏み出すきっかけとなることを目指しています。今回は8/18(木)に行われたオンラインイベント「\二拠点居住とやまなし2022 Vol.1/ 一つの場所に縛られない暮らし方入門 〜実践者から学ぶ 二拠点・多拠点居住の”いろは”〜」の様子をレポートします。
やまなし暮らしの相談窓口
イベントは、東京・有楽町にある「やまなし暮らし支援センター」職員の与田さんのお話からスタート。山梨県の基本情報や各エリアの特徴、二拠点・多拠点生活や移住を検討するにあたってネックとなる住宅や仕事に関する情報収集の方法など、とてもタメになる情報をお話してくれました。
やまなし暮らし支援センターでは、首都圏在住で山梨県への移住や二拠点・多拠点居住を検討している方向けの対面相談・オンライン相談を受け付けています。詳しく話を聞いてみたい、個別で相談に乗ってほしいという方はぜひお気軽に相談してみてくださいね!
3拠点生活によって生まれる新しい家族の形
まず始めにお話してくれたのは、山梨県北杜市、石川県能登市、千葉県流山市の3つの地域で多拠点生活を送るフリーランスのブランディングデザイナー、ワタナベルカさん。昨年度も二拠点居住とやまなしのオンラインイベントにご登壇いただき、お話がとても大好評でした!自身の生活環境を最適化するために「多拠点×フリーランス」という生き方を選択しているワタナベさんの暮らしは、一体どのようなものなのでしょうか?
ワタナベさん「一口に『多拠点生活』といっても実は色々あって、その様相は個人の希望によって全く変わってくると思います。移動したい距離はどれくらいか、誰と暮らしたいか、拠点に滞在する目的は何かという三要素を中心に整理すると、自分のやりたい多拠点生活が明確になると思います。私の場合は、移動は石川と山梨と千葉の中距離で、家族や仲間と一緒に、それぞれの拠点に目的を持って滞在しています。」
ワタナベさん「私は家ごとに役割を分けていて、千葉・流山は配偶者と生活を共にし休息や作業をする場、山梨・北杜は実家で両親と共に暮らし休息や作業をする場、石川・輪島は、昨年祖父が亡くなってしまったため、祖母を元気づけるために頻繁に足を運んでいます。
過去には東京・三軒茶屋のクリエイターの集まるシェアハウスに滞在したり、山梨・甲府でシェアハウスのオーナーをしていたこともありました。三軒茶屋は仲間と仕事や遊びを楽しむ場、甲府はオーナーとしてコミュニティを楽しむ場として滞在していました。
家を選べば多拠点生活は意外と簡単に実現可能で、私の場合は実家や(かつては)シェアハウスに滞在することでコストを抑えていました。最初から家を借りると大変かもしれないですが、実家やシェアハウスを活用するなどまずは簡単なところから1歩踏み出してみて、楽しいかどうか試してみるのが良いのかなと思います。」
ワタナベさん「車で移動する場合の三拠点の位置関係はこのようになっています。輪島から流山に直接移動することはほとんどなく、基本的には北杜市を経由しています。滞在時間の割合は輪島が10%、北杜市が45%、流山が45%ほどです。
輪島では「海の暮らし」、流山では「街の暮らし」、山梨では「山の暮らし」をそれぞれ満喫しています。山梨の実家では庭で育てたハーブなどの植物をシロップやお茶、ジャムにしたり、バジルをクッキーに練り込んだりして美味しく食べています。地元の特産品である桃やぶどうは安くたくさん手に入るので、ジュースを作るなどして食を楽しんでいます。
山梨の良いところは山の食材が美味しいことと、気候がよく開放的な居住地であること。対して注意が必要なことは、車がないと移動が大変であったり、冬は積雪で移動がしづらいこと、そして娯楽がたくさん用意されているわけではないので、自由な気持ちで積極的に動く行動力が必要だなと思います。」
最後に、多拠点生活をしているなかでワタナベさんが感じることをお話してくれました。
ワタナベさん「結婚していると多拠点生活はできないですかとよく聞かれますが、そんなことはないです。私は各地域で、夫、父と母、祖母・叔父・叔母とそれぞれ一緒に住んでいますが、この人たちはかつては同じ家に住んでいたかもしれない人たちじゃないですか。そのなかに移動する人間が表れることで、核家族でも多世帯住宅でもない従来の家族とは少し違ったコミュニティや新しい家族の形が生まれるのではと思っています。
多拠点生活の良いところは、住みたい人と住み、生きたいように生きられることだと感じています。皆さんもぜひ、自分がどんな暮らしをしたいか考えてみてください。」
BONCHI AVENUE(ワタナベさんが代表を務めた甲府市の工房開放イベント)
「地域」を舞台に暮らしを実験する
2人目のゲストは、くらしの社会実験家・浅地杏子さん。和歌山県かつらぎ町で地域おこし協力隊として活動しながら、東京都三軒茶屋のシェアハウスに月5日ほど滞在する二拠点生活を実践しています。山梨県の大学を卒業後、農業資材メーカーへ就職し、営業職として日本全国の農家を訪問する仕事を5年間行っていた浅地さんは、なぜ二拠点居住をすることになったのでしょうか。
浅地さん「農業資材メーカー時代は、営業で全国の農家さんを回っていました。その後都内のweb制作会社に転職しましたが、前職で全国を回っていた際に地方の面白さを感じていたので、趣味で休日に全国を旅するようになりました。
旅先のご縁で東京・三軒茶屋のシェアハウスのオーナーさんと繋がり、そこに入居することにしました。フリーランスの方が多いシェアハウスで、色々な生き方があっておもしろいな、会社員じゃない生き方もあるかなと思い、web制作会社を退職。半年間旅などをしながら自由に暮らし、旅先で出会った和歌山の方から誘われて二拠点生活を送ることになりました。」
2020年の11月から協力隊として活動する浅地さん。かつらぎ町ではどのような日々を過ごしているのでしょうか。
浅地さん「会社員を突然やめたので、立場や役割が一気になくなることに対し、自分が社会の構成員としてどこにも属さないという漠然とした恐怖感がありました。それを解消してくれたのが地域おこし協力隊です。地域おこし協力隊は、都市部から地方自治体へ住民票を移し、最大3年の任期のなかで自治体が提示する課題にアプローチするという総務省の制度で、ベーシックインカムが付与される期間内に定住の準備をするという定住促進の面もあります。協力隊は全国に6000人ほどいて、自治体によって活動内容も様々です。
私は和歌山県に縁も所縁もなく滞在したこともなかったので、自分が町に合うのかも分からない状態での移住でした。そのためまずは実験として3年間を使ってみようという気持ちでかつらぎ町での暮らしを始めました。私の協力隊としてのミッションは、援農、移住定住支援、移住定住希望者への就農支援ですが、その活動に加えて移住に必要な3要素『居・職・住』を作っていこうと決めました。」
山梨での地域おこし協力隊情報はこちらで発信しています!
最後に、浅地さんの考える二拠点・多拠点生活のポイントを教えてくれました。
浅地さん「地域に入る1番の方法は誰かの信用を借りて人間関係を作っていくこと。何かを楽しそうにやっているとそれが広まって人が集まり、そこから新しいコミュニティが生まれていくのかなという印象です。
移住前の拠点探しで大事なことは、地域で選ぶこと。ただ『地域』というと広すぎるので主語を最小限に、あなたにとっての地域とは何をさすのかを自分のなかでぜひ整理してみてください。最大のポイントはすぐに移住しないことで、住居のサブスクやシェアハウスなど色々な方法があるのでぜひ探してみてください。二拠点生活は柔軟に動くことができるので、地域にお試しで関わってみて、合わないと思ったらこだわらずに次の場所に行くのもありだと思います。」
小さな1歩から始める「ただいま」がいくつもある暮らし
3人目のゲストは、定住する特定の家を持たず、さまざまな場所を転々とするアドレスホッパーである西出裕貴さん。会社員として人事の仕事をフルリモートで行いながら、定額住み放題多拠点生活プラットフォームである「ADDress」(※)を活用し日本各地を巡っています。持ち物はキャリーケースとリュックのみ、アドレスホッパーを始めた2020年2月から現在までで33都道府県90拠点に滞在したと言います。
(※)月額4.4万円から、全国どこでも住み放題の住まいのサブスクサービス。初期費用や光熱費はすべて込み。Wi-Fi・家具家電など生活や仕事に必要なものは完備しています。(ADDress公式HP)
ADDressの基本プランでは同時に予約保持できる日数が14日分と決まっているため、2週間後に自分がどこにいるのかわからない暮らしを楽しんでいるそうです。
西出さん「就職と同時に上京し、5年間は1人暮らしをしながら週5日フルタイムで出社していました。転機になったのは2019年の4月で、余命宣告を受けた父と過ごす時間を確保するため、東京の家はそのままに、大阪の実家と月の半分ずつ滞在する2拠点生活を始めました。3ヵ月後の2019年7月からは月の固定費(12万円)を削減するため、東京での生活はホテル暮らしに。
さらにその半年後、ADDressの利便性が向上したことをきっかけに多拠点生活を始めました。ホテル暮らしの出費はだいだい月7万円ほどでしたが、ADDressにすると月4.4万円になるのでこれは利用するしかないなと。嫌だったらホテル暮らしに戻れば良いと始めは思っていましたが、結果的に31ヵ月目を迎えようとしています。」
西出さん「『はじめまして!』が飛び交うADDress暮らしは僕にとって非常に魅力的です。濃い人たちと遭遇することが多く、色々なメンバーと『はじめまして!』をしながらご飯を食べています。
「繋がり」の要素も大きく、ADDressの白馬拠点がその最たる例です。白馬の拠点に住んでいると、家守という家の管理人たちとまず友達になり、ADDress会員と出会って友達になり、会員同士の横の繋がりで新たな友達ができ、さらに地域の人たちとも繋がっていきます。これが多角的に広がり、現在は白馬で50人ほどの友達ができました。」
このような繋がりから、白馬拠点の家守2人と、自分の好きな・心地よいワークスタイルを探究し、様々な働き方の様子を写真に収めてSNSにアップする『エクストリームワーケーション』プロジェクトを立ち上げたり、その活動での繋がりをきっかけに白馬バレー民と運任せで繋がれるガチャガチャ『村ガチャ In Hakuba Valley』という新しい企画を立ち上げた西出さん。
地域と繋がる際には、過去にどういう地域だったのか、これからはどういう地域になろうとしているのかというまちの文脈を知ること、そして地域の派閥のなかで中立の立場をとることを意識しているそうです。
最後に、多拠点生活を始めるにあたり1歩踏み出すにはどうしたら良いのか、地域と繋がるにはどうしたら良いのかをお話してくれました。
西出さん「1つ目のポイントとして僕はスモールスタートを推しています。僕が多拠点生活の1拠点目に選んだ千葉県習志野市は都心に電車で1本・1時間半で行ける場所でした。できることを無理なく始められるレベル感にして、いかにハードルを下げられるかを意識していただければと思います。
2つ目のポイントは現地の人と友達になること。ADDressの場合は家守という存在がいるので、行ったその日に友達ができるのが大きいと思います。3つ目のポイントは、『友達の友達は友達理論』で攻めることです。共通の知り合いがいると受け入れてもらいやすいので、繋がりを上手く使っていただけたらと思います。
最後に、僕は次の拠点に行くときに必ず『またね』といって出発するようにしています。人との出会いが新たな出会いに繋がることが多いし、拠点に行く理由として人に会いに行く部分が強いので、『またね』と言える人間関係を作っていくことが大事かなと思います。今の生活は『ただいま』がいくつもある暮らしで、そんな暮らしをこれからも続けていきたいです。」
もっと聞きたい!二拠点・多拠点居住の”いろは”
3名それぞれの多拠点生活のお話を聞いた後はトークセッション&質疑応答セッション。イベント中に参加者の方が自由に書き込めるチャットには時間内に答えられないほどたくさんの質問が寄せられていました。なかでも特に印象的だった2つの質問への回答をご紹介します。
◯移動にかかる交通費などについて何か工夫していることはありますか?
西出さん「移動にも濃淡をつけることができます。交通費の兼ね合いもあるので基本的には1ヵ月間で4,50㎞圏内を移動し、動くタイミングで一気に300~500㎞の移動するというやり方をするとあまりしんどくないと思います。交通費については、ADDress会員がよく利用しているガッツレンタカー会社だと、保険込で月額4万円で車を借りることができるので、それを活用することが多いです。また公共交通機関を利用する選択肢があれば、50㎞圏内であれば交通費は1ヵ月1万円いかないと思います。」
浅地さん「かつらぎ町は立地が良く大阪府との県境なので、電車で1時間半あれば大阪に行けるし、関西国際空港にも1時間で行くことができます。難波から東京までは夜行バスが通っていて非常に安く、日によって変動もするので片道3000円で東京まで行けることもあります。飛行機も格安航空を使えば5000~6000円で東京に行けるので、往復で1万円しないことが多いです。」
◯山梨の良いところは何ですか?
ワタナベさん「今の季節柄でいうとフルーツがすごく美味しくて、山梨の選果場という果物を選定する施設で桃が30個ほど入った大きな箱が2000円くらいで売っているんです。ブドウもアルガベリーファームという農家さんが好きなのですが、そこのブドウ体験は皆さんが知っているブドウをちょっと越えてしまうと思うんですよ。そういうことを自分の足で歩いて発見できたときが1番おもしろいですね。自然のおもしろさは人間の想像を超えるなと思っています。」
浅地さん「1つは東京が非常に近くて便利なことです。通勤圏内なので、今までの暮らしを手放さずにできちゃうのが本当に羨ましいなと思います。2つ目は、フルーツができるということは天候が穏やかで変動がないという証拠なので、すごく暮らしやすいと思います。体調にも影響するので、天気・気候関係が恵まれているのは山梨の良いところだと思います。」
西出さん「山梨にはADDress拠点は7ヶ所あります。富士吉田から見る富士山がすごく綺麗で、距離が近く圧倒的だったことが印象に残っていますね。東京にももちろん近いのですが、横浜にも近くてバスが出ています。日中のバスに乗れば3000円~4000円くらいで横浜に行くことができるので、活用している方が多いですね。清里や河口湖の方に行くと夏でも日中クーラーがいらないことが全然あるので、夏は涼しいところで過ごしつつ、冬は甲府など雪が積もらない地域に行くのもありかなと思います。
東京からの移住先として今1番多いのが神奈川や静岡のライン、次いで埼玉や千葉のラインなのですが、山梨はまだあまり一般化されておらず物件も空いていて狙い目かなと思います。事業を起こされている方も多い一方、東京圏内に出勤されているサラリーマンの方も多い、さらにこれだけ県のバックアップ体制も整っているので、僕がもし二拠点生活をするなら山梨を選ぶかなと思います。」
その他にも、二拠点生活をして感じたギャップ、繋がり方のコツ、地方のネット環境、ものとの付き合い方、多拠点生活と車の関係など移住の”いろは”に関する様々な質問が飛び交い、時間ギリギリまでイベントが盛り上がっていました!
二拠点・多拠点生活へのはじめの一歩
100名以上のお申込みをいただいた今回のイベント。日本全国のみならず、海外から参加してくださった方もいらっしゃいました。やまなし暮らしや二拠点・多拠点生活へ関心を持つ方にとって、今回のイベントがはじめの一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。