第4回:Pyrex|アメリカンヴィンテージ・グラスウェア

Fire Kingに負けず劣らず人気のPyrex(パイレックス)。可愛い色合いで豊富なパターンのPyrexは、日本でもアメリカでも絶大な人気を誇っています。Pyrexの実用的なところが好きな人や、パターンや色に惹かれてコレクションしている人、むしろその両方!という人もたくさんいると思います。

Pyrex LimePyrex “Lime”のディナーウェアセット

さて、そんなPyrexはどのように誕生したのでしょうか。それでは最初に、Pyrexの生みの親、Corning(コーニング)の歴史からご紹介。

Pyrexの歴史


Corningの歴史は、実業家エモリー・ホートンが1851年にマサチューセッツ州サマーヴィルという町にあったCate and Phillipsという小さなガラス会社を買収したことから始まります。ホートンは事業を拡大するため、1864年にニューヨーク州ブルックリンのBrooklyn Flint Glass Companyを買収し、その地へ移りますが、破産の危機に陥ってしまいます。しかし運良く、 同州Corningという町の銀行家が、ガラス会社を誘致するために融資するというので、ホートンはCorningへ会社を移転することを決心します。1875年のことでした。もしこの時に会社が破産していたら、Pyrexは誕生しなかったかもしれませんね。

Spring Blossom“Spring Blossom (Crazy Daisy)”のマグ(右下)、シュガー&クリーマー(上)、マーガリンディッシュ(左下)

ニューヨーク州Corningへの移転に伴い、会社名をCorning Flint Glass Worksに変更。後に、Corning Glass Worksに再度変更し、鉄道で使用される信号用の色付きガラス(ランタン型で、色別で列車に注意を促した)、食器、電球用のガラス、温度計管、実験用のガラス器具(フラスコやビーカー) など、多種多様なガラス製品を製造していました。これで、傾いた経営も持ち直しました。

Pyrex Gooseberry“Gooseberry”のリフリジエーターセット

そして1915年には、おなじみのグラスウェアPyrexの製造販売に成功。Pyrexにはたくさんの利点があったので、当時とても人気がありました。火に強いのに冷蔵庫や冷凍庫でも保存可能、手入れしやすいうえに匂い移りしない、料理した後に他の容器に移し替えなくてもそのまま使用できる、そして何より、値段がお手頃だったからです。

Pyrexの名前の由来


Pyrexの名前の由来は数種類ありますが(有名なのは、ギリシャ語のpyr(fire=火)とラテン語のrex(王様)を組み合わせたもの)、実際は、Pyrexとして最初に販売したのがパイ皿(pie dish)だったのと、自社商品の語尾がどれも-exで終るので、pieをpyにして、pyとexとの間にrをはさんで「Pyrex」にした説が本当のようです。

Square Flowers“Square Flowers”のキャセロール
取っ手の部分が注ぎ口にもなります

Pyrexの種類とパターン


Pyrexの種類はグラスウェアでも多岐にわたります。ボウル、キャセロール、パイ皿、パーコレーター、ダブルボイラー、リフリジエーター(リフ)、プレート類、マグ等、色々あって書ききれないほど。私は、ボウル類は小さいものを中心に集めています。小さいボウルだと、カットした野菜別に分けておくのに便利だし、かさばらなくていいんです。大きいボウルはもっぱらお菓子作りに大活躍。リフは、見た目も可愛いので、ナッツ類やキャンディを入れたり、紅茶を入れたりして、常にキッチンの周りに置いています。

パターンもたくさんあり、一般家庭用、レストラン用、それにアメリカだけでなく、他の国で製造されたものも合わせると、何と50種類以上。かなりの数ですよね。 Butterfly Gold、Gooseberry、Spring Blossom、Butterprint、Snowflakeなどが日本でもよく見かける人気のパターンなのではないでしょうか。Fire KingのようにPyrexも、色で揃えている人、パターンで揃えている人、それぞれこだわりがあるようです。

Flamingo PinkFlamingo Pinkのミニキャセロール

Pyrexのバックスタンプ


Pyrexのバックスタンプ(刻印)は数種類あり、グラスの底についているので見つけるのは簡単。それと、Made in U.S.A.やMade in CANADAというように、製造国名が入っているものと入っていないものがあります。

バックスタンプの種類は大きく分けて、Corning表示のものとPyrex表示のもの、または両方が表示されているものがありますが、 Fire Kingと比べてバックスタンプから製造年を判断するのが難しいんです。

Pyrex backstampsPyrexのバックスタンプ

それじゃ、どうやって製造年を見分けたらいいのかというと、パターンで判断するのが一番簡単な方法。例えば、Snowflake(1956年〜)、Butterprint(1957年〜)、Gooseberry(1957年〜)、Spring Blossom(1960年後半〜1970年前半)、Butterfly Gold(1960年後半〜1970年前半)などが探しやすいアイテムでもあります。

その他には、製造番号やちょっとしたフォルムの違いで年代がわかるようです。しかしここまでくるとマニアック(!)なコレクターさん並みの知識が必要になってしまいます。

Revel“Revel”のマグとプレート

Pyrexの良さは、頑丈なところ。そして、見た目も可愛いうえに使いやすい。私はパステルカラーが好きなので、最初はブルーのButterprintやピンクのGooseberryを揃えていましたが、最近は黒いパターンのものも集め始めました。 黒いパターンのものは、パステル調のグラスウェアと違って、白いグラスウェアに模様が映えるのでシックで素敵。

カラフルで可愛いPyrexでお客様をおもてなししたら、お料理だけでなく見た目もプラスになりそう。ボウルなども、料理だけではなく小物入れにもできるので、インテリアのアクセントにもなるのではないでしょうか。

Golden Butterfly“Golden Butterfly”のキャセロール