電気を使わない最小限の暮らし。自己の内面と向き合う小さな家「Innermost House」
北カリフォルニアの山の中にひっそりと佇む小さな家「Innermost House」。
自己の内面の最も深い部分と向き合う暮らしを追い求める、Michael Anthony Lorenceとその妻Dianaの小さな住まいです。
ふたりは手探りで研究を重ね、25年間に20回以上も引っ越しをしたそうです。そしてついに、夫Michaelが自らその答えを見出し、「Innermost House」を設計したのです。
この家の面積はわずか13㎡。丘が北側にそびえ、森に囲まれています。南側のオープンポーチが玄関です。
中には5つの部屋があります。東側は7㎡のリビングルーム。西側はキッチン、書斎、バスルームに分かれていて、それぞれ1.5㎡のコンパクトな空間です。その上のロフトが寝室になっていて、木の梯子で上ります。
リビングルームは夫婦が多くの時間を過ごす場所であり、客人をもてなす場所です。東側の壁の足元には小さな暖炉があり、西側は本の壁になっていて、その間に夫婦が向かい合って座るふたつの椅子が置かれています。
内面の奥底から言葉を引き出し、ゆっくり会話をするために細部まで考え尽くされた空間になっていると言います。
この家には、電気やその類いのエネルギーはありません。火をおこして家の内部を暖め、料理をし、お風呂を沸かします。薪は、地元の果樹園で剪定された木の枝です。夏には石炭で料理をし、冷たい水で洗濯をし、キャンドルで家の中を照明します。
伝統的な汚水処理タンク方式を取り入れ、わずかな水しか使わずに暮らしていけるそうです。
「Innermost House」の暮らしや、MichaelとDianaの人となりに惹かれた多くの人々が、この家を訪れています。この家のホームページでは、彼らに感銘を受けた人々から寄せられた言葉を読むことができます。
「ささやかな、時代を超越した生活の開拓者」
「完全に時間の外に住んでいるかのよう」
といった言葉が印象的で、最小限の暮らしが、社会的、世俗的な時間から人を解放し、自己の内面と向き合うことと強く結び付いていると感じさせます。この家で一年を過ごしたら、見える世界が変わってきそうですね。