コミュニティを生み出すパッシブハウス「STRETCHED EGG」

自然界で最もエネルギー効率のよい形とは?

ピンときた方もいらっしゃるでしょう、答えは「卵型」です。外壁の表面積を最小にすることで熱の損失を最小に留められることに着目し、卵型からインスピレーションを得て、この「STRETCHED EGG」のアイデアが生まれました。「STRETCHED EGG」は、プロポーザルコンペ「Isover Multi-Comfort House」で入賞した提案で、提案者はラトビアの建築家Evgeni Leonov Architectsです。このコンペは、開発計画が進むイギリスのNottingham Trent Basinにおける地域性とコミュニティの活性化を目的として開催されました。

主催したのは断熱材などの建材を扱うIsover社。持続可能なパッシブハウスの提案を求め、コンペの第一段階では建物のA/V比(A : area of building envelope surface, V : volume of the building)を最小限にすることが焦点となりました。

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「STRETCHED EGG」の提案文によれば、中心市街地の拡張と大規模な再編計画により、この地域は取り残されそうになっています。そうした現状の計画および再利用が可能であるはずの多大なインフラと建物が破壊されている実情に疑問を呈し、既存の都市構造と調和する新しい地域性をつくる必要を訴えています。

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また、A/V比を最小限にするために、複数の住宅をまとめて区画し、壁を繋げ、角をなくして卵型の断面形状とし、敷地に合わせて全体を調整していくことを提案しています。結果として、A/V比を同規模の建物のおよそ半分にまで小さくできたとのこと。
Isover社の製品を使うことで、パッシブハウスの基準もクリアし、建物の年間使用熱量はわずか3.33kwh/m2!こうした数値を提示したことも、コンペの評価ポイントになったことでしょう。

コンペの次の展開として、サステナブルな近隣環境をデザインすることが求められます。
この提案では、地域のコミュニティコアをつくることが計画されています。コアとなるのは、この近隣に住んでいるすべての住民のための共用レクリエーションスペースです。共用の運動場、スイミングプール、庭、地下には共用の駐車場もあります。
共用部を大きくつくることは、コスト面で効率的な解決策であると同時に、近隣住民間の社会的なコミュニケーションの場を生み出すことにも繋がります。

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長屋形式を環境配慮型に発展させたようなこの提案、長屋のコミュニティの良さも享受しながら、現代的な新しい地域性が生まれそうです。ぜひとも実現した姿を見てみたいですね。

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via:JSª + DMG Arquitectos / Alison Furuto