冴えわたる青空の下、鮮やかな黄色に彩られた団地イチョウ通りを抜けると、穏やかな暮らしが営まれる「町田山崎団地」が見えてきます。
子どもと大人が入りまじり心地よい日常を共に生み出していくことを目標に、UR都市機構とYADOKARIの連携で始まった「まちやまプロジェクト」。プロジェクトの一環として今夏に実施された「まちやま まるごと スコーレ」の第2弾が、11月30日(土)~12月1日(日)の2日間で開催されました。
音楽ライブやワークショップ、焚き火にピザ窯と冬の団地を楽しむための企画がつまったイベントの様子をレポートしていきます。
「まちやま まるごと スコーレ」に込めた思い
「まちやま まるごと スコーレ」とは“学び”と“余暇”をテーマにした、幅広い世代が集まって団地でのこれからの過ごし方を模索するためのイベントです。
子どもの頃友だちと駆け回った広場、ご近所さんの「おかえり」に心が救われたあの日。団地には、確かな心のつながりが存在します。そんな日常を少しだけ飛び超えて、新しい出会いに胸をときめかせる2日間となりました。
「スコーレ」は、遊びや余暇という意味を持ち、スクール(学校)の語源にもなったギリシャ語です。ゆったりとした穏やかな日常の延長線、新たな発見や学びを楽しむことを目指して当イベントでは様々な企画が用意されていました。
日常の中で出会う、心躍る新しい体験
「まちやま まるごと スコーレ」第2弾では、主に4つの企画を実施しました。
・人生の学びや知恵が循環する「体験マルシェ」
・大人も子どもも楽しめる「特別企画」
・サテライト会場にて行われる「同日開催企画」
・音とリズムで感性がひろがる「音楽ライブ」
まずは“学び”と“余暇”を存分に体感することができる「体験マルシェ」についてご紹介します。商店街を通り過ぎた先にあるぽんぽこ広場に立ち並ぶ数々のブース。子どもたちのいつもの遊び場がにぎやかなイベント会場に大変身です。住民の方も、近所にお住まいの方も、家族や友人とふらっと立ち寄り簡単に楽しむことができる空間になりました。
こちらは「みんなの可能性は無限大」を合言葉にファッションを追求する、桜美林大学のサークル「Unlimited」のブースです。服を製作する際に出る端布を使って何かできないか、と考え、子どもでも簡単に作ることができるクリスマスリースのアイデアが生まれました。
「第1弾にも参加させていただいたのですが、町田山崎団地の人たちは本当に温かくとても居心地の良い場所だと感じています」と代表。リースが完成した子どもたちの嬉しそうな声に目を細めます。
クリスマスといえば、クリスマスオーナメントづくりのワークショップも行われていました。かつて手芸カフェで出会ったメンバーが集まって、現在は町田山崎団地内の駄菓子屋「ぐりーんハウス」のフリースペースを借りて手芸を楽しんでいるそうです。
続いては、一際目を引く「里山ハンモック」のブースです。ここでは自由にハンモックでくつろぐことはもちろん、自分で色を選んで作ることもできます。
物珍しさや店主の方の明るさに惹かれ、手芸ブースのお店の人もやってきて、器用な手さばきでハンモックを完成させていました。
冒険心をくすぐるハンモック。体全体を優しく包みこむハンモックに揺られていると、普段見ている景色が少し特別に見えてきます。
ブースを回っていると、何やら異国情緒漂うにぎやかな音楽が。町田市のフラメンコ教室「FlamencoVerde」のみなさんによる公演が始まりました!
まるで町田山崎団地in スペイン、フラメンコの独特なリズムと美しい所作に目を奪われます。
ショーのクライマックスでは観客もステージにあがり、その場にいた全員が一緒になって歌い踊る素敵な時間に。
「魔法みたいだわ」と観客の一人がつぶやきました。団地に住むその方は、実は娘さんがフラメンコを習っているそうです。「足腰が弱ってなかなか遠くまで見に行くことができなくなった今、この団地でフラメンコを見ることができるなんて本当に感動しました」、と笑顔で語ってくれました。
他にもペーパークラフトやにがおえ、人相占いにジェルネイル、オリジナルリングノートやグラスアート、天然石小物づくり、さらにキエーロDIYワークショップなどが開催され、2日間とは思えないほど充実した内容となりました。
焚き火にピザ窯、まちあるき。団地ならではの特別企画
当イベントでは冬にぴったりの特別企画も実施されました。
木枯らしの吹く12月、ぱちぱちと音を立てて燃える焚き火に自然と人が集まります。会場内を歩いてシールを集める「まちやまミッションラリー」にクリアするともらえるマシュマロに、子どもたちは大喜び。焚き火で炙って、さぁ、いただきます!
焚き火の隣では、自由に食材を持ち寄って焼いて食べることができるピザ窯があります。生地が焼きあがる香ばしい香りとあつあつのチーズに舌鼓。外で食べるピザは格別です。
団地暮らしを楽しく想像してもらうための「まちあるきツアー」も実施されました。
この企画は親子での参加ができます。URの担当者と一緒に団地のおすすめスポットを巡り、子育てや団地暮らしのイメージを膨らませます。
さらに、町田のローカルカメラマン・北村友宏さんが主催した「ミッションフォトウォーク」にも注目です。「かならず座って撮ること」「かならずギリギリまでちかづくこと」など、参加者はそれぞれ与えられたミッションをクリアしつつ、会場を歩いて自由に写真を撮っていきます。
参加者のみなさんは「普段住んでいるこの場所で、こんなに良い写真が撮れるなんて気づきませんでした!」とフォルダに残った写真を満足そうに見ていました。
一通り撮影が終わると、最後に撮った写真をお互いに見せ合う交流会も行われました。団地の新たな魅力を発見し、改めてその良さを実感することができる機会になったと感じます。
「ミッションフォトウォーク」の交流会は、前回のイベントでの好評を受け今回も登場した、車輪の付いた小さな家・タイニーハウスで行われました。この場所では商店街で買ったおやつを食べたり、一休みして本を読んだり、自由気ままに過ごすことができます。
2日目になると、タイニーハウスは未就学児~低学年の子どもたちが折り紙やお絵描き、ブロックなどで遊ぶことができるスペースに変身!近くにスタッフが常駐しているため、保護者の方も安心してお子さんを預けてマルシェをまわることができます。
陽が差し込むタイニーハウスから、子どもたちの楽しそうな声が聞こえていました。
また、団地に住む小学生が作ったオリジナルゲームで遊ぶことのできる企画もありました。細部まで作りこまれたゲームに大人たちもびっくり。子どもも大人も続々と集まる人気コーナーでした。
さらに、クリスマスリースづくりのワークショップを開いてくれた桜美林大学のファッションサークル「unlimited」によるファッションショーも行われました。ショーの構成やモデル、使う服やアクセサリーも含め、全て学生たちだけで作り上げたそうです。
オレンジ色の落陽をスポットライトに、いつもの団地が煌びやかなランウェイに早変わり。非日常を楽しむ観客の拍手に見送られ、ファッションショーは幕を閉じました。
団地の可能性を活かし、隅々まで楽しみ尽くすために
体験マルシェや特別企画に加え、さらに盛り上がりを見せたのが同日開催企画です。さんのはし仮設広場や集会場など、町田山崎団地の広々とした自然豊かな敷地を存分に活用した企画をご紹介します。
11月30日には、町田山崎団地の計画道路駐車場を埋め尽くすたくさんの車。こちらは古着やアンティーク、人形や置物などのコレクションが大量に販売されている「ぼくらのカーブーツ」です。カーブーツとは、車のトランクを使った英国発祥のフリーマーケットのことです。
掘り出し物にときめきが止まりません!誰かが大切にしていたものを次の誰かに手渡していく、そのような“つながり”を実感できる場所でした。
12月1日にはポニー乗馬体験・モルモットふれあいコーナーもありました。ポニー乗馬体験ではベテランスタッフの指導のもと、1人または親子(大人1名+未就学児)で楽しむことができます。もちろん大人1人でもOK。企画が終わる直前まで、子どもから大人まで大勢の参加者でにぎわっていました。
その他、「メガロスミライク」主催の子ども向けスポーツ教室や、資格不要で誰でも飛ばすことのできるドローンの操作体験など、実際に体を動かして楽しむことができる多くの企画が実施されました。
音とリズムに思いを乗せて_音楽で広がる交流の輪
最後に、ぽんぽこ広場前の会場で行われた音楽ライブの様子をレポートします。今回は2日間で計4組のアーティストに参加していただきました。
トップバッターを飾ったのは、オリジナルギターたまご君(山崎ギター工房作)と歌うシンガーソングライター、カナダマサカズさんです。どこか懐かしいメロディーと個性的な歌声が、昼下がりの団地を彩ります。
チンドン太鼓の音、団地に突如現れた獅子舞が目を引くこちらのグループは、メンバー全員が町田に縁のある町田出港バンドのみなさんです。商店街やぽんぽこ広場を練り歩き、にぎやかで楽し気なパフォーマンスを披露してくれました。
2日目のお昼は、聴いているだけで優しい気持ちになれる透明感のある歌声が魅力のnozomiさんの音あそびライブにたくさんの子どもたちが集まりました。
リトミック教室「marronnier(マロニエ)」の主催やボーカル講師など、自身の音楽経験や保育士・幼稚園教諭の資格などを活かし様々な活動を行っているnozomiさん。子どもたちも夢中になって音楽を楽しんでいました。
イベントの最後に登場したのは、町田出港バンドの一員でもある、夕日ビールさんです。夕日に照らされる紅葉を背に、心を込めて歌う姿に思わず足を止めるお客さんも。
観客の中から参加者を募って始まった即興セッションに会場が盛り上がります。「明日もちょっとだけ頑張ってみようか」と軽く背中を押してくれるような優しい歌声が、秋空に溶け込んでいく美しい夕暮れでした。
まとめ
イベント終了後、人がまばらになった団地を見つめていたのは、UR都市機構の責任者としてイベントを運営してきた三浦さん。
「やっぱり地域の人が楽しんでくれている姿を見ることができるのが一番嬉しいですね。
この「まちやま まるごと スコーレ」は今回が2回目でしたが、このイベントが徐々に地域に定着してきているように感じます。例えば今回カーブーツの企画は初めての実施だったのですが、次は私も出店したいと言ってくれる人もいて、少しずつ次につながっていくのではないかと期待しています。
今回は団地内をメイン会場として企画を実施しましたが、町田山崎団地の近くには大学や商店街、さらにまた別の集合住宅などがあります。団地を飛び越え、地域全体を巻き込みながらもっとたくさんの人が一緒になって楽しむことができる機会をつくりたい、と改めて思いました。」
冬の寒さに負けず、皆さまの笑顔とコミュニケーションで温かな空気に包まれた「まちやま まるごと スコーレ」。この2日間がみなさんにとってかけがえのない思い出になったら嬉しいです。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!
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